10月14日、演出・脚本:福田雄一日本テレビ系「今日から俺は!!」(日曜22:30〜)がスタート。原作は、西森博之による同名漫画。「漫画っぽくいくぞ!」という強い意気込みが感じられた。それにしても、福田雄一は好きな漫画を手当たり次第映像化、なんて贅沢な仕事の仕方をしているのだろう。

伊藤ちゃんのウニ頭問題
今日から俺は!!」が映像化となれば、原作ファンが気になるのは伊藤真司(伊藤健太郎)のウニ頭がどう再現されるかだ。わけのわからん量の髪の毛を地面と垂直に突き立てるこの浮き世離れした髪型は、どうやったって実写に馴染むわけがない。中途半端なトゲトゲにするのか、ガッツリ大胆に行くのかが注目。ちなみに、1994年に公開されたVシネで中倉健太郎が演じた際は、ちゃんと浮き世離れしていた。

福田監督が選んだ答えも、まぁ多分最初から決めていただろうが、しっかりと浮き世離れしたウニ頭だった。当然バックの景色と馴染むわけがないのだが、作品自体には意外とハマッていた。おそらくこの理由は、他の登場人物の作られ方にあるのだろう。

賀来賢人演じる三橋貴志の髪型は金髪パーマ。原作ではどこがどうなっているのかよくわからない、実に漫画らしい髪型だ。だが、設定上は普通の金髪パーマなので、実写化する際は、それなりに普通っぽい髪型にすることも出来るハズだ。しかし、福田監督が選んだのは、妙にクルクルした漫画らしい髪型だった。他のキャラも同様、赤坂理子(清野菜名)は必要以上に聖子ちゃんカットだったし、早川京子(橋本環奈)も思いっきり明菜カットだった。今井勝俊(太賀)や谷川安夫(矢本悠馬)に関して言えば、不自然に前髪を垂らし、原作よりも漫画っぽい髪型をしていた。このお陰で、伊藤ちゃんのウニ頭が悪目立ちすることはなくなった。

これは、「漫画を実写化」ではなく、「漫画を漫画っぽく実写化していくぞ!」という意思表示にも見える。

漫画っぽい雰囲気に、ガチっぽい波岡一喜投入
全体を漫画っぽく実写化することによって、伊藤ちゃんの頭以外にも馴染みやすいものがいくつかある。時代設定と登場人物のオーバーなお芝居だ。

そもそも、ツッパリが死語。ツッパリがそこら辺を歩いている時代背景が現代の若者にはピンと来ない。公式設定の80年代初頭もさすがにこれほどツッパリ率は高くなかったハズだ。だが、こういった大袈裟な設定でも、全体が“漫画っぽい”から視聴者はすんなり受け入れることが出来る。

はんにゃ金田哲を想起させる賀来賢人のオーバーなヘタレ演技も、モブヤンキーたちの「ビー・バップ・ハイスクール」風の演技も、漫画っぽい雰囲気のおかげで受け入れやすくなっている。特殊な能力や不思議な生き物が出てくるわけではないが、全ては虚構、現実風のファンタジードラマみたいなものだ。これで思いっきりふざけた演出をしても、視聴者の許容範囲になる。

散々漫画のような描写を重ね、後半から徐々にシリアスシーンに移行していく。そこで登場するのがガチっぽいヤクザの井上さん。波岡一喜が演じているだけあってしっかり威圧感はあるのだが、スプーンの上で白い粉を溶かすという、古くさすぎて今やどこの映画でも見られなくなったシャブ描写は、どこかダサくてどこかふざけている。

それでもアクションシーンはさすがで、あんなふざけた頭した伊藤ちゃんが血を流すとちゃんとハラハラしてしまうから不思議だ。伊藤健太郎と波岡一喜が、ガッとスイッチを入れて緊張感を煽ってくれる。

この緊張感のおかげで、合間に挟まる三橋、今井、谷川の3人のおふざけシーンにギャップが生まれ、「こんな大事なときに何やってんだ!?」と良い感じにイライラさせてくれる。おふざけを面白くするためのシリアスがギャップになり、シリアスなシーンを引き立てるためのおふざけがギャップになる。どっちも楽しんでくださいねという福田雄一監督らしい演出だ。清野菜名演じる理子の合気道アクションがカッコ良すぎて、賀来賢人伊藤健太郎、波岡一喜らのアクションを台無しにする感じも良い。

今夜放送の第2話は、いよいよヒロインの赤坂理子が本格的に登場するらしい。キャスティングを聞いたときは、理子(清野菜名)と京子(橋本環奈)の配役が逆だと思ったが、これはこれで良さそうな予感。

主要キャストによるオープニングの「男の勲章」は、1話を見終わった第2話からさらに面白かっこよく感じられそうだ。

(沢野奈津夫)

今日から俺は!!
日曜:22:30〜23:25(55分) 日テレ系
キャスト:賀来賢人伊藤健太郎清野菜名橋本環奈、太賀、矢本悠馬、鈴木伸之、ムロツヨシなど
脚本:福田雄一
演出:福田雄一、鈴木勇馬
主題歌:今日俺バンド「男の勲章」
Huluにて配信中

原作1巻