U-19アジア選手権初戦の北朝鮮戦、「スーパーゴール」で流れを引き寄せる

 影山雅永監督が率いるU-19日本代表は、インドネシアで行われているU-19アジア選手権の初戦で難敵の北朝鮮に5-2と勝利した。22日にタイ、25日には世代屈指の強豪イラクと戦い、グループリーグ突破となれば28日に来年にポーランドで開催されるU-20ワールドカップ出場権を懸けた準々決勝を戦う。1999年生まれの選手と2000年生まれの選手が融合するチームの攻撃を牽引するのは、2001年生まれのFW久保建英横浜F・マリノス)だ。

「スーパーゴールでしたけど、あそこから3点入って勝てたのは良かった」

 この日は出番のなかったチームキャプテンのMF齋藤未月(湘南ベルマーレ)が、「スーパーゴール」と振り返る久保の直接FKが決まったのは、2-2の同点で迎えた後半20分だった。

 交代出場のFW宮代大聖(川崎フロンターレ)が積極的なドリブルでファウルを誘い、獲得したFKのチャンスに久保の左足が唸りをあげた。ゴールから25メートルほどの距離で、直接狙えるがやや遠め。北朝鮮も直接狙ってくる場合と味方に合わせてくる可能性を、半々ぐらいに想定した守備態勢を取っていたが、久保が流れるようなフォームで捉えたボールは3枚の壁の内側でジャンプしたMFキム・ジソンが飛んだすぐ頭上をかすめて鋭く曲がり、ゴールの右上に吸い込まれたのだ。この弾道には、北朝鮮のGKキム・ジュソンの必死の横っ跳びも及ばなかった。

 同じコースでもボールのスピードが少しでも遅ければ、壁の頭に当たっていたかもしれない。ベンチの方に駆け寄り両腕でガッツポーズを作って喜びを爆発させた久保は、「入ると思っていました」と振り返る。

「基本的にあそこからファーに打っても入らないところなので」と語る通り、直接狙う前提でイメージを研ぎ澄ませていたのだ。文句ないスーパーゴールだが、何より2-0から同点に追いつかれた状況で、チームに再び流れを引き寄せるゴールとなったことが重要だ。


先制点を演出した場面で放ったセンスと技術

 そのゴールに加えて、北朝鮮戦では見事な左足のスルーパスでFW斉藤光毅(横浜FCユース)による先制点(前半8分)を演出。「あそこは斉藤選手の抜け出しが良くて、それが見えていたので」とゴールを決めた同じ2001年生まれのチームメイトを労った久保だが、3人のディフェンスを横にかわしながらタイミングを見極めて通したセンスと技術は見事だった。

 最終ラインのDF橋岡大樹(浦和レッズ)から右サイドのDF菅原由勢名古屋グランパス)を経由して、ボランチのMF藤本寛也(東京ヴェルディ)にボールが出ると、藤本は左足のワンタッチで前方のMF郷家友太(ヴィッセル神戸)に通す。神戸でも主力として活躍する郷家が粘り強くキープして右ワイドにポジションを取っていた久保に預けると、右足のコントロールからインサイドに持ち出した。

 郷家へのプレッシャーから反転して襲いかかってきた相手を左にかわすと、さらにカバーにきた相手のタックルを右足インサイドのタッチでかわして、中央に進出。その間に一瞬ディフェンスを外した斉藤を見逃さなかった。

 目の前には右サイドから中央のカバーに来たDFキム・ヨンソクが構えて縦パスのコースを切っていたが、久保は相手の足が揃ったタイミングでやや左斜めの角度で縦パスを出し、斉藤も少し左に膨らむ動き出しで受け、そこから左足で決めている。

「あのプレーで少し自分に余裕ができたかな」と振り返る久保は、北朝鮮の激しいディフェンスに苦しむシーンがありながらも、効果的なドリブルやパスを織り交ぜ、攻撃に明確なアクセントを加えた。鮮やかな浮き球のスルーパスが惜しくもオフサイドになる場面もあったが、チームを勝利に導く幸先の良い活躍だった。


堂安もU-19日本代表にエール「2年後、3年後を目指してほしい」

「今は自分がこの大会に、初戦に集中したいので。終わってから何か話すことはあるかもしれないですけど、まずは明日の試合に集中するだけ」

 北朝鮮戦の前にそう語っていた久保は、昨年のU-20W杯で、現在A代表で活躍するMF堂安律フローニンゲン)らと戦い、同じく”飛び級”で参戦した前線の相棒であるFW田川亨介(サガン鳥栖)とともに世界を肌で感じている選手。その堂安も「今のメンバー、(久保)建英もいると思いますけど、(同世代の世界大会で)通用するメンバーばっかりだと思うので、ただそこじゃなく、2年後、3年後を目指してほしい」と期待するが、とにかく目の前の試合に勝ち続けて世界切符を勝ち取り、さらにアジア王者になることだ。

 才能溢れる仲間とともに一つひとつ階段を登った先に、真の栄光が見えてくる――。17歳の久保はU-19日本代表のエースとして、まずは2大会連続のU-20W杯出場を視界に捉えている。


(河治良幸 / Yoshiyuki Kawaji)

U-19日本代表FW久保建英【写真:Getty Images】