デーモン閣下が構成員となっている厚生労働省の「上手な医療のかかり方を広めるための懇談会」(座長:渋谷健司・東大院教授)の第2回会合が10月22日東京都内で開かれた。現役の若手救急医が、月に2日しか休めないなど厳しい労働環境であることを報告。改めて、医師の「自己犠牲」のうえに成り立っている現場を改善する必要性が共有された。

●月の宿直6回、たった8人で年中無休の現場対応

懇談会は医師の働き方改革を進めるうえで、患者側の理解を得る必要があると考え厚労省が設置したものだ。この日の会合では、東京女子医大東医療センター救命救急センターの赤星昂己医師(20代)が自らの勤務状況を説明。現場がきわめて過酷な状況であることが示され、懇談会の構成員たちは少なからずショックを受けた様子だった。

赤星医師の説明によると、勤務先(集中治療室20床、一般床10床)ではセンター長らを含め8人の医師で365日24時間、救急対応と入院患者の管理をしているなか、昨年は都内3位となる1855件(重症患者)もの搬送があったという。赤星医師の場合、週99時間勤務し、月の宿直は6回、完全に休めるのは月2日程度だったこともあった。

また、赤星医師は自らの経験として、ある猛暑日のエピソードを紹介した。頭痛を訴える患者が搬送され、直後に胸痛を訴える患者の救急要請が入ったが、ベッドや人手が足りずに受け入れられないことがあったという。頭痛を訴えた患者は、実は1年前から時々頭痛があり、「今日は暑くて熱中症が心配で」と救急要請をしていたことは後からわかった。

「緊急度の低い患者さんの受け入れが多くなると、緊急度の高い患者さんを受け入れできなくなる」と赤星医師。救急医もひとりの人間で、睡眠時間が全く取れず朝から一度も食事をとれないこともあり、その結果、無意識に集中力が低下していることがあるかもしれないと指摘し、「それでも患者さんが来院されれば全力で診ています」と述べた。

●時間外受診は「お互いに損」

一方、夜間休日の時間外受診は「お互いに損」だと赤星医師は強調した。それは、お金が余分にかかり検査が完璧にできないだけでなく、薬も数日分しか処方ができないこと、そして疲弊した医師が対応する可能性があることなどからだという。

赤星医師は、不必要な時間外受診だけでなく、内科医が外傷の診断をするなどミスマッチを防ぐため近隣で受診すべき医療機関を教えてくれる「アプリ」の開発を提案。さらに、このような問題に全く興味を抱かない人へも届くよう、報道機関やSNSを活用した世論形成が必要だと指摘した。

赤星医師による説明を受け、デーモン閣下は「心に響く内容。相当、日本の医療が危機に瀕している。どうやって知らせるべきか、重要性を感じた」。渋谷座長は「自己犠牲で痛々しい。自己犠牲に頼っている医療は持続可能なのか。不可能だ。ちゃんとやっていかないと本当にまずい」と話した。

赤星医師は「正直にいうとかなり厳しい。実質、休めない。僕は今20代なのでやれるけど、50代までというと考えてしまう」。厚労省医事課によると、週あたり勤務時間が60時間以上である常勤医師(病院勤務)の割合は、30代男性医師の56.9%(30代女性医師=27.9%)、20代男性医師の56.7%(20代女性医師=48.3%)にのぼるという。

●「医療の危機を煽る必要がある」

救急車を呼ぶべきかどうか迷った時に相談できる短縮ダイヤル(#7119)について、この日の会合でも認知度の低さが問題だと指摘されていた。

デーモン閣下は、いま消費税の引き上げをめぐって報道が相次いでいることに触れ、「民放は視聴率が取れるから消費税を取り上げる。医療の話もとにかく生活に密着していて、危機なんだぞと煽る必要がある。#7119の整備と喧伝を始めるべき」と述べた。

電通でコピーライターなどの経験がある「ツナグ」代表取締役の佐藤尚之氏は「タクシーみたいに救急車を呼んじゃう人は、情報リテラシーが低い。#7119とか伝えても伝わらないのではないか」と語り、医療現場が危機的状況にあることを広く世間に伝えるべきだとした。

●懇談会、撮影制限なく「フルオープン」に

なお、この日の会合はすべての時間帯を通じて、報道関係者による写真・動画撮影が可能だった。前回会合で「フルオープンにすべき」との意見が構成員側から複数出たことを踏まえ、事務局である厚労省が構成員の意向を改めて確認して対応を変更した。

(弁護士ドットコムニュース)

「私たちも人間」救急医が厳しい勤務告白…デーモン閣下「心に響く」医療のかかり方会合