今期の月9はアメリカドラマのリメイク版「SUITS/スーツ」。セリフ回しも本家っぽいし、出てくる家具や衣装もゴージャス。バブリーな雰囲気は往年の月9という雰囲気もあり、良い感じに時代を無視していて気持ちいい。画がずっとCMみたいで綺麗だ。

そんな「SUITS/スーツ」第2話は、天才設定はどこへ行ったのかわからないくらいの鈴木(中島裕翔)の成長物語だった。

人として中途半端な鈴木
東都医科大学病院院長の海部(中村育二)からセクハラを受けた元看護師の今日子(関めぐみ)。今日子は、海部の誘いを拒否したことにより不当解雇され、さらには看護師としての復帰が出来ないように根回しまでされてしまう。今日子を守るため、鈴木(中島裕翔)は立ち上がった。

しかし、この鈴木の正義感が中途半端。小狡い考えの甲斐を冷めたような眼で見るくせに、結局は甲斐(織田裕二)の提案に乗るだけで自分からはそれほど動こうとしない。正義を振りかざすだけ振りかざして、実行する力と勇気は備わっていないのだ。さすが、悪友の谷元(磯村勇斗)にそそのかされて替え玉受験や運び屋に手を染めただけはある。鈴木は、記憶力こそずば抜けているものの、自分勝手な正義にとらわれたどこにでもいる普通の若者だった。

鈴木は甲斐の指示通りに動き、海部の代理人弁護士から簡単に示談金の交渉に成功する。甲斐いわく、これは「はじめてのおつかい」らしい。順調な滑り出しにウキウキの鈴木だが、今日子の弟のリークで海部のセクハラ問題は明るみに出てしまい、示談は不成立。それどころか、海部は逆に今日子を訴える方向に。

鈴木「困るんですよね。そういうこと勝手にされると。これで示談交渉は決裂です」

今日子「先生は、私がお金の為に相談したと? 私はただ、身に覚えのない理由で解雇され、再就職も出来ない状況を変えたいだけです」

このやりとりで、鈴木は示談金を獲得すれば今日子を救えると勘違いしていたことがわかる。まぁ、視聴者としては「示談金だけでとりあえず納得しろよ。どこまで今日子は正しい人間でいたいんだよ」という思いはあるが、鈴木の正義の自分勝手さはハッキリと露呈した。

一切活躍しない鈴木
鈴木「すいません。言い過ぎました」

ただ、ここでちゃんと謝れた鈴木は偉い。ここが鈴木の成長の第一歩目。正義と向き合うため、甲斐には頼らず同僚たちに意見を求める鈴木は、自分から動き出すことを覚える。結局は甲斐のヒントによるものだが、そのおかげで財田里美(荻野友里)という今日子同様に海部からセクハラ被害を受けた元看護師を見つける。

人間としては成長しても、弁護士としては甘かった。蟹江(小手伸也)の面倒なパワハラや、おばあちゃん(田島令子)の引っ越しなど、忙しさにかまけて甲斐の「財田を監視しとけ」という言いつけを怠ってしまう。これは正義心の問題ではなく、弁護士としての経験値の問題。鈴木は、人が簡単に心変わりすることを知らなかったのだ。案の定、財田は金の力で海部側に寝返る。

最終的には甲斐の暗躍により全て丸く収まるのだが、今回の逆転に次ぐ逆転は、全て鈴木の人間性の甘さ、弁護士としての甘さから来るものだった。鈴木はたいした活躍をしていない。いや、何一つしていないかもしれない。その変わり、弁護士を辞めたときの保険に持っていた札束を谷元に叩き返したことで、弁護士の決意を手に入れたのだ。

内容よりもキャラクターを見よう
今回のテーマはハラスメントだった。このご時世にハラスメントを扱うなんて、それなりの切り口や、新しい回答が求められそうものだが、「SUITS」が扱った事件内容や結果は平凡なものだった。そんなことより、中途半端な正義心で動く鈴木の成長物語。そして、それを見守る甲斐のスタイリッシュなスタンスを見ていれば十分楽しい。弁護士ドラマだからといって、「法律的な矛盾が〜」とか、「時系列が合ってない」とか、そういう堅苦しいことは考えるとちょっと損しそう。

ただ、タイトルの「SUITS」を使って「弁護士人生のスタートです!」感を演出していたのはどうだろう。安物から高級スーツに着替えやたら褒め称えられていたけど、ビフォアの時点で中島裕翔がイケメンすぎて、あんまりアフターが引き立ってなかった気がする。
(沢野奈津夫)

SUITS/スーツ」
月曜 21:00〜21:54 フジテレビ系
キャスト:織田裕二中島裕翔新木優子中村アン今田美桜、國村隼、小手伸也、鈴木保奈美など
脚本:池上純哉
演出:土方政人、石井祐介
主題歌:B'zWOLF
U-NEXTにて配信中

イラスト/Morimori no moRi