「実はレンガやブロックって、燃えないゴミでも粗大ゴミでも出せません。捨てるときは民間の業者に頼まないといけないので、けっこう費用がかかるんですよ」と語る滝沢秀一氏
「実はレンガブロックって、燃えないゴミでも粗大ゴミでも出せません。捨てるときは民間の業者に頼まないといけないので、けっこう費用がかかるんですよ」と語る滝沢秀一氏

『このゴミは収集できません ゴミ清掃員が見たあり得ない光景』の著者である滝沢秀一氏は芸歴20年のお笑い芸人。お笑いコンビ「マシンガンズ」として、『M-1グランプリ』(テレビ朝日系)の準決勝に2度進出し、『THE MANZAI』(フジテレビ系)でも2度、認定漫才師50組に選ばれた実力者だ。

しかし、徐々に仕事が減少し、ゴミ清掃員としてアルバイトを開始。仕事を始めて5年目に、ツイッターで「ゴミ清掃員あるある」をつぶやいたところ、それに火がつき、本書の出版に至った。

お笑い芸人であり、ゴミ清掃員でもある滝沢氏独自の目線で、社会問題にもなっているゴミのリアルな現状について語っていただいた。

* * *

──そもそも、なぜ清掃員になられたのですか?

滝沢 子供が生まれてお金が必要になりました。最初は飲食店などの一般的なアルバイトを探していたんですけど、結局9社ぐらい断られまして......。「35歳を超えるとアルバイトでも雇ってもらえないのか」と落ち込みましたね。それで元芸人の知り合いに頼ったら、ゴミ清掃員の仕事があるということで紹介してもらいました。

──本書はどのような経緯で出版することになったんですか?

滝沢 ある日、「ゴミ清掃員あるある」をツイッターでつぶやいたら、事務所の先輩の有吉(弘行)さんがリツイートしてくれたんです。有吉さんがおもしろがってくれるなら、次の日もつぶやいてみようかなと思って。

だから、最初は有吉さんを笑わせたいという気持ちで始めたんです。そしたら、そのツイートが好評で出版まで決まりました。本当にありがたいです。

──それは有吉さんに感謝しかないですね。

滝沢 そうなんですよ。しかも、いろいろアドバイスもしてくれたんです。「滝沢の気持ちみたいなのはあんまり楽しく読めないから、みんなが読んで楽しいものはどんなことか考えろ」って言ってくださったり。

本書のタイトルも、最初は「ゴミ清掃員のあるある」だったんですけど、「あるあるは弱いから変えたほうがいいんじゃないか?」って有吉さんが言ってくれて、最終的に「ゴミ清掃員が見たあり得ない光景」になりました。

──具体的にどんなツイートをされていたんですか?

滝沢 「濡れた畳の重さをみんなにも味わってほしい」とか「TENGAをペットボトルで捨てるなよ! これは可燃ゴミだ!」とか(笑)。

──確かに形は似てるけど! でも分別しないとダメですからね(笑)。

滝沢 なんでもかんでもごちゃ混ぜに出す人もなかにはいますが、ゴミ清掃員としてはなるべく分別はしてほしいです。特にお願いしたいのは不燃と可燃です。不燃ゴミを可燃ゴミと一緒に出すと、焼却炉に入れても結局は燃えないので中にたまってしまいます。

そうなると手作業で不燃ゴミを取り出して、また火をつけなければならない。その火をつけるのに、だいたい250万円から350万円くらいかかるんです。もちろん、その費用は税金から支出されています。

──分別をしないと、結果的に自分も損をするということですね。

滝沢 そうなんです。なぜか幹線道路沿いの集積場は分別しない人が多いですね。わざわざ清掃車を止めて、清掃員がゴミを分けないといけないので、停車時間が長くなって渋滞を引き起こすこともあるんです。

だから、「分別しないと渋滞が起こる」という、「風が吹けば桶屋が儲かる」みたいな現象が起きるんですよ(笑)。

──日本は、「1年間にひとり当たりが出すゴミの量」が世界で断トツだそうですが、その原因はなんだと思いますか?

滝沢 過剰包装だと思いますね。例えば、羊羹(ようかん)ひとつにしても、まず紙袋から出して、包装されている薄い紙を破くでしょ。そしたら箱が出てきて、フタを取ってみると羊羹が1個ずつパックされている。だから、羊羹にたどり着くまでに4つくらい袋を破かないといけない。

──確かに、それだけでどれほどゴミが出ているか......。ゴミという視点で考えたことがなかったです。

滝沢 それから、安い商品だからといって、1、2回使っただけでポンポン捨てる人もいますよね。そのあたりも、もう一度考え直してほしいです。

あと、ガーデニングとかでレンガブロックを気軽に買ってくる人も多いと思うんです。でも、実はレンガブロックって、燃えないゴミでも粗大ゴミでも出せません。捨てるときは民間の業者に頼まないといけないので、けっこう費用がかかるんですよ。

──捨てるときの大変さもきちんと考えた上で物を購入しないといけないですよね。

滝沢 皆さん忙しいので、ゴミのことまで考えられないと思いますが、捨て方も知っていただけたらうれしいですね。

例えば、資源ゴミとしてちゃんと出してくれたら、リサイクルできるのでゴミにならないんですよ。でも、可燃ゴミと一緒に出して燃やしちゃったら、ただのゴミだし、お金にもなりません。きちんと分別していただければリサイクルもできるし、それで得られるお金で清掃員の人件費も補えます。何より社会貢献にもなりますしね。

──なるほど。

滝沢 皆さん、リサイクルをしようという気はあると思うんです。例えばビン、缶、ペットボトル、段ボールなどの資源ゴミを、すべて同じ袋に入れる人がいるんですが、それぞれ別の袋に入れてほしい......。というのも、ビン、缶、ペットボトル、段ボール、これ全部、回収する車が違うんですよ。

さらに言うと、ペットボトルのフタとラベルはプラスチックの資源ゴミなので、ペットボトルの本体とはまた別。そういったルールをもっと浸透させられればいいのになと思います。

──本書を出版後、清掃員仲間からの反響はいかがですか?

滝沢 「よく言ってくれた」って声をかけてくれる人がたくさんいますね。この本は清掃業界がよくなるように、という思いで書きました。重版は決まりましたが、僕が儲かっていると勘違いしている人もいて、「ゴミ屋、卒業だな!」って言ってくる人もいます(笑)。

でも仮に本が大ヒットして儲かっても、僕はゴミ屋を続けますよ。芸人の世界は不安定だし、確実に収入がある仕事をもっていたほうがいいと思うので(笑)。

●滝沢秀一(たきざわ・しゅういち)
1976年生まれ、東京都出身。98年に相方・西堀亮と「マシンガンズ」を結成。2007、08年に『M―1グランプリ』で準決勝進出。11年には「マシンガンズ」名義で著書『女はみんな同じ教科書を読んでいる。』を出版。14年には滝沢名義でホラー小説『かごめかごめ』を出版

■『このゴミは収集できません ゴミ清掃員が見たあり得ない光景』
白夜書房 1300円+税)
子供ができたことで定収入を得るためにゴミ清掃員を始めた、お笑い芸人・マシンガンズ滝沢秀一氏。ゴミ収集中の体験をもとにツイートした「ゴミ清掃員の日常」が人気となり書籍化。ゴミから見る格差社会や、ゴミ清掃業界の個性豊かな人材といった多岐にわたる内容に加え、最終章では日本の未来について物申す。ゴミの現場にいるからこそ見えてくるゴミ問題の現状を、お笑い芸人ならではの目線でまとめた一冊だ!

取材・文/インタビューマン山下 撮影/山上徳幸

「実はレンガやブロックって、燃えないゴミでも粗大ゴミでも出せません。捨てるときは民間の業者に頼まないといけないので、けっこう費用がかかるんですよ」と語る滝沢秀一氏