かつてのアイドルが再び脚光を浴びている。荻野目洋子は登美丘高校ダンス部の『ダンシングヒーロー』で復活したし、1997年にデビューしたDA PUMPの『U.S.A.』がヒットしている。

韓国でも登美丘高校の“バブリー・ダンス”を完全コピーに成功した“セレブ・ファイブ”が話題になったが、それだけではない。

東方神起BTS(防弾少年団)、Wanna OneといったK-POPアイドルグループが世界中で人気を博している今日この頃だが、K-POP界では最近、彼らの大先輩となる“韓国アイドル第一世代”が次々と復活し、活動を再開しているのだ。

1990年代に一世を風靡したのち、解散もしくは事実上解散していた「H.O.T.」「Sechs Kies」「god」「S.E.S」といったグループがそれだ。

最近のアイドルたちから冗談混じりで「我らが先祖」と言われたりする“アイドル第一世代”の姿は、今や韓国のバラエティ番組ではすっかりお馴染みとなっている。

若い頃は優れたパフォーマンスとビジュアルで絶大的な人気を博し、韓流ブームの土台を作った彼らが、30~40代になって懐かしい全盛期を振り返りながら、テレビ局で感じた昔と今の違いなどを語ったりするのだ。

かつて韓国で「Sugar」というアイドルグループの一員として活動した女優の伊藤ゆみ(そのときの芸名はアユミ)がテレビ東京のバラエティ番組で韓国時代の裏話を明らかにして話題になったが、それに近いような感覚と言えばわかりやすいだろうか。

【画像あり】元ICONIQの伊藤ゆみが明かした韓国練習生時代話と「年収数億円」の現実味

ただ、“長いブランク”を経て再び脚光を浴びている彼ら彼女らの言動が、思いがけず毒にも薬にもなっている点も興味深い。

先日もSechs Kiesのメンバーであるカン・ソンフンはファンクラブの運営問題について不満をこぼしたり、「僕のことを信じる人だけついて来い」とタメ口かつ命令調で書き込んで物議を醸した。いくらファンとの絆が深いとはいえ、今の時代には考えられない言動だった。

というのも、ファンクラブはあくまでもファンによって成り立つものであり、タレントがファンに注文をつける場所ではない。

ましてファンに命令を下すのは言語道断。現在の韓国アイドル・ファン文化は、上から目線をよしとしない。かつては“俺様”気取りが通用した時代もあったが、それも昔のことなのだ。

最近のBTSと比べれば、その差がはっきりとわかる。

2年連続ビルボードで受賞し、国連でスピーチを行うなど世界的に活躍しているBTSは、何かあるたびに「すべてARMY(ファンクラブ名称)のおかげ」と謙遜する。

それは、「ファンがいてこそのアイドル」という絶対的な真実を心に刻んでいるからこそ出来るもので、だからこそファンは彼らを信頼し、応援しようと思うのではないだろうか。

ただ、だからといって、やりすぎた言動は逆効果を生むこともある。

H.O.T.のメンバーであるムン・ヒジュンの場合、2016年に開催した20周年記念コンサートで「結婚なんかしない。僕にはファンの皆さんしかいない」と発言しておきながら、コンサート終了直後に電撃結婚を発表した。

しかも、結婚相手をコンサート会場に招待していたことが発覚され、ファンクラブが「支持を撤回する」との声明を発表する事態を招いたこともあった。


(写真提供=SPORTS KOREA)ソユルとムン・ヒジュンの結婚記者会見


昔はアイドルの熱愛や結婚が絶対禁止とされていたものの、今はアイドルがプライベートはもちろん、アイドル同士で恋愛中であることを公表したり、結婚を発表したりすることが不思議なことでもない。

ムン・ヒジュンの発言は彼なりの“ファンサービス”だったと思うが、やはり時代遅れという印象は拭えないのだ。

AKB48総選挙システムを見ればわかるように、今や多くのアイドルたちがファンを無視できず、ファンによってアイドル生命が左右される時代だ。韓国ではWanna Oneや宮脇咲良も所属するIZ*ONEなど、グループの誕生にファンが絶対的な役割を果たすこともある。

90年代後半から2000年代前半にかけて、絶大な存在感を示した韓国アイドル第1世代の帰還は歓迎すべきことだが、後輩たちがファンとともに築き上げてきた新しい文化が、今のK-POPにはある。

そういった変化を受け止め、既存のファンだけではなく新しいファンも獲得したとき、彼ら彼女たちは“真の復活”を遂げられる。

いずれにしても、日本や韓国で起きているアイドルたちの帰還。成熟した彼ら彼女たちが“第二の全盛期”を迎えるかに注目してみるのも、面白い。

(文=慎 武宏)

(写真提供=SPORTS KOREA)今でも人気の高いBoA