Point
・世の中に流通している食卓塩の9割にマイクロプラスチックが含まれていることが判明した
・アジア産の食卓塩に含まれるマイクロプラスチックの含有率がもっとも高く、特にインドネシア産はワーストだった
マイクロプラスチックの排出量が多い地域ほど、海産物などを介して人がマイクロプラスチックを摂取する量が増える

廃棄されたプラスチックごみなどから生まれる微細なプラスチック粒子「マイクロプラスチック」の発見が、世の関心を集めるようになって数年。特に海洋環境においては深刻な問題で、生物濃縮による海鳥や人間の健康への影響も懸念されてきました。最近では、米スターバックス使い捨てプラスチック製ストローの使用を廃止したことが話題になりました。

一方で、主に海水からつくられる塩にどれくらいのマイクロプラスチックが含まれているかについても、これまでに複数の調査が行われてきました。韓国の仁川大学校と国際環境NGOグリーンピース東アジア」の共同チームが行った最近の研究では、世界で販売されている食卓塩のなんと9割にマイクロプラスチックが含まれていることが明らかになりました。研究チームは、食卓塩に含まれるマイクロプラスチックの地理的広がりを調べました。記事はEnvironmental Science & Technology誌に掲載されています。

Global Pattern of Microplastics (MPs) in Commercial Food-Grade Salts: Sea Salt as an Indicator of Seawater MP Pollution
https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acs.est.8b04180

研究チームは、ヨーロッパ(ベラルーシブルガリアクロアチアフランスドイツルーマニアイタリア、英国)、北米(米国)、南米(ブラジル)、アフリカセネガル)、アジア(オーストラリア、中国、インドインドネシア、韓国、パキスタンフィリピン、台湾、タイ、ベトナム)の21カ国に流通する39種類の食卓塩を調査。

その結果、マイクロプラスチックが検出されなかったのは台湾製の海塩、中国製の岩塩、フランス天日干しで作られた精製されていない海塩の3種類だけで、残りの36種類にマイクロプラスチックが含まれているという衝撃的な事実が判明しました。ほとんどすべてと言っても差し支えないほどの割合でマイクロプラスチックが検出されたことは、マイクロプラスチック汚染が世界規模で蔓延していることを示しています。

特にアジア産の塩はマイクロプラスチックの濃度が高く、なかでもインドネシア産の塩がワーストだったとこのこと。以前から、アジアはマイクロプラスチック汚染がもっとも深刻な地域と見なされており、四方を海に囲まれたインドネシアは世界で2番目にマイクロプラスチック汚染が進んだ地域として挙げられています。

また、マイクロプラスチックの濃度がもっとも高かったのは海塩でしたが、湖塩や岩塩にも確かに検出されました。マイクロプラスチックの問題は何も海に限ったことではないのです。

調査に参加した仁川大学校の海洋学者キム・スンキュ氏によると、プラスチックごみを多く排出する地域ほど、海産物などを介して人がマイクロプラスチックを摂取する量が増えるそうです。プラスチックごみを減らす対策を早急に進め、問題を根本から解決すること無しには、拡大する食品汚染問題に歯止めをかけることはできません。

ニューヨーク州立大学でマイクロプラスチックを研究するシェリー・メイソン教授は、「アジア地域に流通している塩にマイクロプラスチックの残留物が含まれていることは過去の研究からわかっていましたが、どの程度含まれているかはこれまで明らかになっていませんでした。驚くべき結果というわけではありませんが、興味深いものです」と、今回の研究の意義を説明しています。

 

つい最近は、日本でも環境省がスーパーやコンビニエンスストアレジ袋の有料化を義務付ける素案を示しました。遥か遠くの海で起きている現象であり、自分には関係ないと思いがちですが、巡り巡って私たちの食卓に登場するもの。マイクロプラスチックの存在にもっと目を向け、身近にできることから取り組んで行きたいものですね。

 

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via: nationalgeographic / translated & text by まりえってぃ

 

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