京都工芸繊維大学 KYOTO Design Labが取り組む、海外の若手デザイナーと本学教員が共同研究をおこなう「デザイン・アソシエイト・プログラム」に参加したデザイナーのヘンリック・ニーラチュカー氏は、アリの群体行動を研究する生物学者との協働から、高齢化社会における分散型シェアライドサービスを提案しています。

アリ・コロニー内の行動を模した配車サービスのダイアグラム図
本プログラムのディレクターを務めるジュリア・カセム特任教授とヘンリック・ニーラチュカー氏は、本学の応用生物学過程 資源昆虫学研究分野の秋野順治教授らと共同研究をおこない、アリのコロニー内でおこなわれている複雑な社会構造やコミュニケーションの仕組みから着想を得たモビリティサービスのデザインに取り組みました。さらに超高齢化が進む日本国内の近未来に考えられ得る、自動運転車の配車システムや郊外地域での適切なサービス供給などを、アニメーションや試作模型を通じて提案しました。

「社会的な昆虫と現実──集団的知性における実験」と名付けられた一連の研究成果は、京都工芸繊維大学 KYOTO Design Lab 東京ギャラリー(アーツ千代田3331内)で展示され、京都府副知事による招聘展示をKYOTO SMART CITY EXPO 2018内のネクストモビリティEXPO 2018にておこないました。今後は2019年ロンドンでのグループ展示など、国内外での出展を予定しています。
プロジェクト概要
  • 私たちは、昆虫の社会的な振る舞いから何を学び、どのようにコミュニティベースの新しいライドシェア開発に活かすことができるのだろう?
  • データの安全性を保証し、信頼を基盤としたシステムの確約は、どのように可能だろう?

本プロジェクトでは、日本が直面しつつある社会問題のオルタナティブなシナリオを展開するにあたり、昆虫のコミュニティ形成やナビゲーションパターンの活用方法を検討しました。アリなど社会的な昆虫の振る舞いを用いた既存のコンピューターサイエンスを、カーナビゲーションや交通規制のための新しいアルゴリズムの設計に応用しました。日本の近未来における、ドライバーレスで、ネットワーク化した乗り物の導入に着目したプロジェクトです。

京都工芸繊維大学応用生物学課程の秋野順治教授と広島大学数理分子生命理学専攻の西森拓教授とのコラボレーションにより、スペキュラティブなデザイン案を発展させました。彼らの研究からインスピレーションを受け、ニーラチュカー氏はモビリティと高齢化に関する問題に対し、ダイナミックに応答する交通モデルを開発しました。本プロジェクトは、ふたつの側面──包括的なライドシェアシステムの構築という大きな視点、および潜在的な個々の利用者という視点──から検討し、信頼をベースにしたシステムを許容する非集中的なコミュニケーションパターンの構築に焦点を当てました。根本的に従来とは異なる交通モデルに対する理解と適応を促すために必要となるであろう、既存コミュニティの仕組みにも着目しています。
自動運転車の配車システムや郊外地域での適切なサービス供給などを表現した模型
ネクストモビリティEXPO 2018出展の様子
京都工芸繊維大学
ジュリア・カセム 特任教授[KYOTO Design Lab]
秋野順治 教授[応用生物学課程]
井上智博[KYOTO Design Lab デジタル・ファクトリー]
山下真[KYOTO Design Lab ウッド・ファクトリー]

協力
西森拓 教授 + 白石允梓 博士[広島大学数理分子生命理学専攻]

デザイン・アソシエイト
ヘンリック・ニーラチュカー
Henrik Nieratschker [MA, RCA, Design Interactions]
ヘンリック・ニーラチュカー(Photo Tomomi Takano)
ヘンリック・ニーラチュカーの作品は、デザインとアート、テクノロジーサイエンス、そしてフィクションセオリーの関係性を切り拓く。デザインされたオブジェクトと技術的な応用によるナラティブの可能性に強い関心を寄せている。彼の作品はグラフィック、プロダクト、映像、彫刻、インタラクティブ・メディア、執筆など多岐にわたる。ブレーメン芸術大学でデジタル・メディア、同大学院でファインアートを専攻。その後、英国王立芸術学院でデザイン・インタラクションの修士を取得。現在は個人のプロジェクトに加え、実験的なデザインスタジオ「proto/meta」とキュレトリアル・アート・コレクティブ「Research and Waves」の共同設立者としても活動している。

配信元企業:京都工芸繊維大学 KYOTO Design Lab

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