私たちが普段何気なく食べている果物。夏には甘酸っぱいブドウに定番のスイカ、おいしいですよね。ところで、今紹介した果物にはある不思議な共通点があるのに気付きましたか? 普段気にしないけれどよく考えると不思議な果実について紹介します。

なぜ繁殖するために必要な「種」が存在しない果物があるの?

私たちは普段の食事の中でさまざまな果物を食べており、最近は同じ果物でも味の違いや個性的な特徴をもつ品種などが登場し楽しませてくれます。

そんな果物の特徴の一つに「種なし」があります。種がない果物は食べやすいので人気もあり、種なし品種もいろいろな果物で生み出されています。代表的なものが種なしブドウですね。他にもスイカなどにも、果物の種なし品種が登場しています。

このように種が無いまま果実が発達することを「単為結実」といいます。しかし、よく考えれば種の繁殖に必要不可欠なものである「種」がないというのは不思議な話です。どのようにして種なしの果実が作られているのでしょうか?

植物ホルモン処理によって種なしの性質を人工的に作り出している

実は果樹が種なし果実をつける単為結実の性質をもつようになる要因がいくつか存在します。一つは自然的な要因です。つまり突然変異によって種なしになる場合で極めて珍しいのですが、温州ミカンやバナナがその例です。

これはあくまでも稀な例であり、ほとんどの単為結実は植物ホルモンの利用によって人工的に作り出されています。植物ホルモンには種類によってさまざまな働きをもつことがわかっており、その性質を利用して単為結実を作り出しています。

例えば、代表的な種なし果実であるブドウにはジベレリンという植物ホルモンが使用されています。ジベレリンには植物の成長促進や単為結実を促進する効果の他に、受精なしでも果実を大きくする働きがあります。

この働きを利用し開花前と開花後にひと房ずつジベレリンの溶液に浸すことで、単為結実を引き起こした後で後果実を大きくさせます。こうやって種なしブドウが作られています。

他にも、スイカではコルヒチンという染色体が倍になる異常を引き起こす植物ホルモンを利用して種なしスイカが作られます。

スイカは染色体を2本セットで持っていますが、コルヒチンによって4本に倍加されます。このスイカと通常のスイカを交配させることで染色体を3本持つスイカが誕生します。この状態の植物は種子ができない性質をもつため、種なしスイカができるのです。

これらの処理がなくても普通の果実は作れますし、ひと房ずつ処理を行うことは農家にとって手間のかかる作業です。それでも行うのは、消費者に食べやすい商品を届けたいという気持ちの表れかもしれませんね。

より人間にとってメリットが多い品種を作り出すことも「農学」研究のひとつ

「農学」は、もともと存在する動物や植物の成分や生理機能の仕組みを研究します。農業をはじめさまざまな分野への技術応用を行うことも農学の役割の一つ。植物ホルモンの機能解明などはまさにこの成果といえます。

それだけではなく、発見した成果や技術を使用してより人間にメリットの多い動植物の個体を作り出し、食糧生産の向上に寄与することも農学研究が担う役割でもあります。農業を発展させることや新品種を作り出すことに興味がある人は農学を学んでみてはいかがでしょうか。

【出典】
・株式会社ディライトクリエイション オリーブオイルをひとまわし
https://www.olive-hitomawashi.com/column/2018/03/post-1244.html
・三井化学アグロ
http://www.mitsui-agro.com/product/tabid/86/pdid/6006/type/1/Default.aspx
・日本植物生理学会
https://jspp.org/hiroba/q_and_a/detail.html?id=2815
https://jspp.org/hiroba/q_and_a/detail.html?id=518