Credit: DarkEclipse69
Point
・数学には「組み合わせ数学」と呼ばれる分野があり、「最小超置換問題」と呼ばれる未解決の難問が25年前からある
・「涼宮ハルヒの憂鬱」には複数通りの視聴順があることから、「すべての視聴順を見るためは最も効率的な順番で何話見ることになるのか?」という問題があった
・海外の掲示板“4chan”に、この問題への数学的な解法を示した匿名の投稿あり、数学者たちの注目を集めた

海外の掲示板サイト“4chan”で、TVアニメ「涼宮ハルヒの憂鬱」の全エピソードを可能なすべての順番で見るための効率的な順番を数学的に解いた投稿が、25年間数学者を悩ませてきた同様の数学的難問の解決につながるのではないかと注目されています。

谷川流氏のライトノベルが原作のアニメ『涼宮ハルヒの憂鬱』は、エンディングのダンスをみんなで踊ってネットに挙げて盛り上がるなど、一部で社会現象になった人気のTVアニメシリーズです。

海外でも大変人気があり、匿名の掲示板サイト“4-chan”でも様々な議論が交わされています。中でも盛り上がっているのが、「すべてのエピソードを可能な組み合わせですべて見たとして、最低何話見ることになるのか?」という問題です。このテレビアニメは、2006年に放映された第一期の14エピソードの順番が、原作の順番や時系列とは異なっており、放映順と原作順、時系列順といった見方ができます。そこで、ファンたちはこの問題を、“Haruhi probrem” と呼び、真剣に議論しているのです。

これと同じ問題は、数学の世界では「最小超置換問題(Minimal superpermutation problem)」として知られています。この問題は与えられた数の数字をすべての可能な順番で並べて、重複を許して結合させた場合の最短の数列の長さを求めるというものです。

例えば、1と2という数字が与えられたときの可能な組み合わせは、(1,2)と(2,1)の2つです。その超置換は1221となり、長さは4ということになりますが、最小超置換は真ん中の重複した2を重ねて、121となり、長さは3となり一つだけ縮みます。この数列には、(1,2)も(2,1)も含まれているので、121の順番をたどることですべての順番を体験できます。最小超置換は、1つの時は長さが1、2つの時は3、3つで9、4つで33、5つで153となり、この長さには実は法則性があります。この法則に従うと、6つの時は、873となります。

Credit: 4chan / サムネシュタゲ

しかし驚いたことに、それよりも短い最小超置換872が見つかってしまったのです。そこで、さらに短い最小超置換があるのではないか?さらに数が増えた場合でも説明できる完全な法則があるのではないか?と探求されており、問題が提起されてから25年経過して現在に至ります。

そして4chanに、ある「名無しさん」がこのハルヒ問題を解くための一つの方法を投稿し、数学的素養のあるハルヒファンを満足させました。しかし、その解法は、現時点で最も素晴らしい最小超置換問題の解法でもあったのです。この投稿を見た、コンピューター科学者で数学者でもあるロビン・ヒューストン氏がツイッターで4chanと数学のこの奇妙な関係についてツイートしたことで、爆発的に広まっています。

マケット大学の数学者ジェイパントーン氏は最初、この解法に懐疑的でしたが4chanに投稿された非公式な表記法を数学者に馴染みのある公式なものに書き換えて、pdfファイルとして公開しています。nを14とする今回の解法に従って、ハルヒの第一期をすべての可能な順番で見るとすると、総エピソード数は少なくとも93,884,313,611話、最大で93,924,230,411話見ることになります。この範囲をもっと狭めて特定する必要はありますが、最小超置換問題を解く大きな一歩となったことには変わりありません。

 

シーズンを全組み合わせで見るのは「情報統合思念体によって作られた対有機生命体コンタクト用ヒューマノイドインターフェース」でもない限り無理ですが、この数学者をも唸らせる解法にいたった名無しハルヒファンの類まれなる知性には、脱帽するしかありません。

 

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via: The Verge/ translated & text by SENPAI

 

『涼宮ハルヒの憂鬱』がきっかけで数学の難問が解決する可能性