18歳でドイツに渡り、自らを磨く伊藤には同じドリブラーとしても共鳴

 森保一監督率いる日本代表は、9月の新体制初陣から3連勝と最高のスタートを切っている。なかでも10月16日ウルグアイ戦ではMF堂安律フローニンゲン)やMF南野拓実ザルツブルク)、MF中島翔哉ポルティモネンセ)と若手アタッカーが躍動。4-3と南米強豪との打ち合いを制した。2022年のカタールワールドカップ(W杯)に向けて「世代交代」が大きなテーマとなるなか、海外で計11年、8クラブを渡り歩いた横浜FCの元日本代表MF松井大輔は若手の台頭についてどのような見解を持っているのか。「期待の海外組アタッカー」について訊いた。

「堂安くんら若い選手が、どういう道を選んでいくのか楽しみ」

 そう前置きして名前を挙げたのは、ハンブルガーSVのFW伊藤達哉だ。柏レイソルU-18出身の伊藤は、2014年にUAEで開催された国際大会アル・アインインターナショナルジュニアチャンピオンシップで大会MVPを獲得。グループリーグで対戦したハンブルガーSVのスカウトの目に留まり、18歳でJリーグクラブを経由せずドイツに渡った。「試合に出られるなら、早くから海外に行った方がいい」と説く松井の条件にも一致する。

「伊藤くんはドリブラーなので頑張ってほしいです。ハンブルガーで点を取ればすぐにレギュラーになれるだろうし、ドイツ2部は活躍のチャンスが大いにある。コンスタントに試合に出て、実力を証明できれば、より上のクラブにステップアップする可能性も広がると思います」


「ステップアップが難しい国」と語るベルギーで奮闘する豊川にも注目

 もう一人が、リオデジャネイロ五輪世代でベルギー1部KASオイペンに所属するFW豊川雄太だ。ドリブルを特徴とするプレースタイルに加え、ベルギーリーグから今後どのような成長曲線を描いていくのか、松井は注目しているという。

「豊川くんのいるベルギーは、次にどこへステップアップするのかが難しい国だと思います。フランスオランダドイツ……、そこに行くにもベルギーで相当活躍していないといけない。(元コートジボワール代表FWでパルマ所属の)ジェルビーニョはベルギー(ベフェレン)からフランスに来て、活躍してイングランドアーセナル)に行きましたけど、彼のような成功例は限られている。チームで自分の居場所を作っていくことが一番大事かな、と」

 松井は日本サッカー界の発展を見据えて、海外組アタッカーたちに一つの“目標”を設定する。

「海外では結果しかない。(欧州5大リーグで)10点取っている選手が今はいないので、そういう選手が現れたら日本のサッカーも変わってくるのかな、と思います」


欧州5大リーグで年間10ゴールを奪う選手が新たに現れれば「また違う日本代表が見られる」

 過去には元日本代表MF中田英寿が海外移籍1年目となる1998-99シーズンにイタリア1部ペルージャで10点、元日本代表FW高原直泰が2006-07シーズンにドイツ1部フランクフルトで11点、日本代表FW岡崎慎司2013-14シーズンからドイツ1部マインツで2年連続二桁得点(15点、12点)をクリアしているが、日本人選手にとって欧州5大リーグスペインイングランドドイツイタリアフランス)での達成は高い“壁”となっている。

「例えば、かつてのフランス代表だったら(ティエリ・)アンリ、(ダビド・)トレゼゲのように、欧州5大リーグで得点王になっている選手がいた。(ロベルト・)レバンドフスキポーランドでは英雄ですけど、ドイツで常に得点王争いをリードしている。得点王争いとは言わないまでも、日本人選手で10点挙げる選手が出てくることによって、また違う日本代表が見られると思います。早く結果を残せるようにPKを自分で蹴ったり、がめつくなってもいいかな、と。前に前に行っても遠慮している感じに見られるので、どんどん自分を出して貪欲になってほしいです」

 熟練戦士の松井は、若手アタッカーの台頭と日本サッカーの発展を願っている。

[PROFILE]
松井大輔(まつい・だいすけ)/1981年5月11日生まれ、京都府出身。鹿児島実業高時代からテクニシャンとして知られ、卒業後に京都パープルサンガ(現京都サンガF.C.)に加入。アテネ五輪出場直後の2004年夏にフランスル・マン(当時2部)に移籍し、初年度から主力として1部昇格に貢献した。08年からはサンテティエンヌ、グルノーブルとフランスで戦い、その後はロシアブルガリアポーランドと各国1部リーグで奮闘。14年にジュビロ磐田と契約して10年ぶりのJリーグ復帰を果たし、今年1月から横浜FCプレーする。日本代表としても南アフリカワールドカップに出場するなど通算31試合出場1得点。8月に海外で計11年、8クラブを渡り歩いた経験を凝縮した著書「日本人が海外で成功する方法」(角川書店)を上梓した。


Football ZONE web編集部・小田智史 / Tomofumi Oda

「期待の海外組アタッカー」について横浜FCのMF松井大輔に訊いた【写真:荒川祐史】