・現在「審査」によって行われている映画の年齢制限の決定を、上映中の「空気を測定」することで行う手法が開発される
・用いられる指標は空気中の「イソプレン」のレベルであり、イソプレンが多く含まれているほど映画は年齢制限が設けられるべきである
・イソプレンが放出されるのは筋肉が動いたときであり、過激な映画ほど緊張や興奮によってイソプレンが放出される
PG12指定やR指定など、特定の映画に対して年齢制限が課されることがあります。日本ではこの審査を映画倫理機構(映倫)が行なっていますが、いずれその審査は化学的な手法に取って代わられるかもしれません。
マックス・プランク研究所の研究者たちが、映画上映中の空気中における「ある物質」の濃度を調査することにより、内容を観ずとも年齢制限のレイティングができる画期的な方法を考案しました。
Proof of concept study: Testing human volatile organic compounds as tools for age classification of films
https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0203044
11の映画館で135本もの上映が対象となったこの研究は、13,000人を超える数の観客の協力を得て行われました。ジャンルや観客の年齢など、様々な条件の下で上映中の「空気」について調査したところ、年齢制限の指標として使える1つの物質が浮かび上がってきました。
それは「イソプレン」と呼ばれる化学物質。つまり、空気中のイソプレンのレベルが上映した映画の年齢制限を判定するための良い指標になると言うのです。
イソプレンは体内の代謝プロセスによって生成され、筋繊維に蓄積されるものです。そしてそれは、私たちが「筋肉」を動かすたびにイソプレンが空気中に放出されることを意味しています。
年齢制限が設けられるような映画を観ているとき、私たちは緊張や興奮によって体を無意識に前後に動かしたり、筋肉に力が入ったりしています。そしてこれこそがイソプレンが放出される原因であり、高いイソプレンのレベルが観測された映画はそれに応じた年齢制限を設けるべきであるということです。
この調査のために、劇場の換気システムには多くの分光器が取り付けられ、30秒ごとに空気に含まれる物質が調べられました。そして、観測された60もの化合物の中から最も信頼できる指標としてイソプレンが選び出されたのです。
とはいえ、この指標は私たちの「感情そのもの」を測定できるものではなく、あくまで筋肉の動きといった間接的なヒントから感情を探るものです。研究を率いたジョナサン・ウィリアムズ氏は、この研究を発展させ、感情そのものが空気に残す足跡について調査を続けていく予定です。
via: MAX-PLANCK-GESELLSCHAFT / translated & text by なかしー
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