▽「勝ったからって安泰でもないようだし」そんな風に私が首を捻っていたのは金曜日、お昼のスポーツニュースで相変わらず、レアル・マドリーのロペテギ監督の進退をあれこれ議論しているのを見た時のことでした。いやあ、たとえ日曜のクラシコ(伝統の一戦、バルサ戦のこと)で大敗し、即座に解任されたとて、後継の有力候補に挙がっているコンテ監督が来週水曜のコパ・デル・レイ32強対決1stレグ、モロッコにあるスペイン飛び地領であるメリージャ(2部B)戦の指揮を執るために駆けつけるとは思えないんですけどね。当面はRMカスティージャ(マドリーのBチーム)を率いるソラリを暫定監督に据え、時間を稼ぐような気もしますが、微妙なのは僅差で勝負がついたり、引き分けだったりした場合。

▽選手たちの支持もあって、その時はロペテギ監督続投が1試合、1試合、この先も問われることになるはずですが、とりあえず、彼にとって、最初のマッチボールとなった今週火曜のCLビクトリア・プルゼニ戦がどうだったか、簡単にお伝えしておくことにすると。先週末にはレバンテに1-2と負けていたマドリーでしたが、この日の相手はグループ中最弱と言われるチェコのチーム。おかげでキックオフ前の記者席も「5点ぐらいは取るだろう」といった楽観的な見方が支配していたんですが、いやいや、とんでもない。前半11分と早い時間に右SBに入ったルーカス・バスケスのクロスから、ベンゼマのヘッドで先制点こそ奪ったものの、追加点がなかなか生まれないんですよ。

▽それでも後半10分、直前にイスコに代わって、マドリーデビューを果たした20才のカンテラーノ(RMカスティージャ出身の選手)、バルベルデが起爆剤となり、敵数人を抜いてエリア内にボールを送ると、それをベイルがtaconazo(タコナソ/ヒールキック)でマルセロに繋ぎ、レバンテ戦に続く彼の2試合連続ゴールでようやく2点目が入ったんですが…まさか33分、本来はアタッカーであるルーカス・バスケスの裏をプルゼニに突かれてしまうとは!ナチョ、セルヒオ・ラモスの両CBも反応が遅れ、フロソフスキにエリア前からシュートを決められているんですから、ビックリしたの何のって。


▽うーん、これには後でクロースも「3点目、4点目を取って、もっと前に勝負をつけておかないといけなかった」と反省していましたけどね。ここ5試合、白星がないマドリーでしたから、1点差に迫られて、スタンドもかなりナーバスになったのはもちろん、そこへ残り2分でベンゼマに代わってマリアーノが入った後、そのすぐ前の接触プレーで打撲を受け、一旦は大丈夫と言っていたマルセロがプレー続行不可になるなんてこと、あっていい?

▽でも、大丈夫。後でブルバ監督も「あれだけの絶好機をムダにしてゴールを入れることができなかった」と嘆いていたように、せっかく作ったチャンスをプルゼニが利用できなかったこともあり、そのままマドリーは2-1で久々に勝利、同日、CSKAモスクワに勝ったローマと共に勝ち点6でグループ2位となったのは良かったかと。ただ、この日は「Se priorizo conseguir los tres puntos que rompian una racha/セ・プリオリソ・コンセギール・ロス・トレス・プントス・ケ・ロンピアン・ウナ・ラチャ(悪い流れを変えるため、勝ち点3を獲得することを優先した)」というロペテギ監督でしたが、良くも悪くもマドリーは特別なクラブ。

▽以前、1-0で試合には勝ったにも関わらず、いいプレーをしていないという理由で解任された監督もいましたし、プルゼニ相手にこれ程、苦戦するとなると、決して彼の責任ばかりではないとしても先行きは厳しそう。いえ、だからって、試合後ミックスゾーンに出て来たマルセロが「勝てない時は辛いけど、クライシスと言って騒ぐのは君たちマスコミ。Todos los periodistas intentais hacer dano, igual es envidia porque no sabeis jugar al futbol/トードス・ロス・ペリオディスタス・インテンタイス・アセール・ダーニョ、イグアル・エス・エンビディア・ポルケ・ノー・サベイス・フガール・アル・フトボル(記者は皆、ウチを傷つけようとしている。サッカーができなくて、羨んでいるのかもしれないけどさ)」と挑発して、ラジオのレポーターたちと揉めていいってことはないんですけどね。

▽何せ、日曜午後4時15分(日本時間午後11時15分)から、カンプ・ノウで挑む首位のバルサは前腕骨折でメッシを欠きながら、水曜のCLインテルミラン戦でラフィーナ、ジョルディ・アルバのゴールで危なげなく2-0の勝利を挙げていますからね。おまけに金曜には彼らのお隣さん、エスパニョールがバジャドリーと1-1で分けたことにより、同じ勝ち点の2位となったとなれば、彼らだって黙っていられないでしょうし、このエース不在という最高の状況を利用できるかはかなり疑問の残るところかと。

▽一方、マドリーにとっての朗報はふくらはぎを痛めているカルバハルはまだですが、プルゼニ戦で打撲したマルセロが木曜には回復、出場に問題がなさそうなことと、日曜のRMカスティージャの2部Bのリーガ戦、セルタBとの試合で退場させられたビニシウスの2枚目のイエローカードが上訴委員会で取り消され、プレーが可能になったこと。まあ、4500ユーロ(約58億円)を出して獲得した18才のブラジル人FWの起用に関しては、ロペテギ監督があまり積極的ではないため、ベンチに入るのかどうか、まだわからないんですけどね。どんなにチームの状態が悪くてもサプライズな結果が生まれるのがクラシコ、現在の勝ち点4差が7に開き、また根性のremonatada(レモンターダ/逆転優勝)の掛け声が上がるのもうっとおしいですし、私もここは選手たちの意地に期待しています。

▽え、もちろんマドリーの低調ぶりも気になるけど、お隣さんなど、水曜のCL戦でそれどころではない惨状を露呈してなかったかって?いやあ、その通りで、試合前には今季、バルサからレンタル移籍してゴールを量産、TVに出まくっていたパコ・アルカセルもケガから回復せず、マルカ(スポーツ紙)にインタビューが載っていた香川真司選手もベンチ入りしなかったそのドルトムント戦、国際見本市と重なって現地に宿が取れずに、ドゥッセルドルフから2時間近くかけてジグナル・インドゥナ・パルク入りしたことや、前夜、ホテルの前でアトレティコのウルトラ(過激なファン)のグループがbengala(ベンガラ/発煙筒)を炊き、火災警報機が鳴って安眠を妨害されたなんて逆境はあったんですけどね。

▽実際はとてもその位では言い訳できないひどい有様で、いえ、前半序盤は押していましたし、失点もまだ、自陣に引き始めていた38分、ビッツェルのエリア外からのシュートがリュカに当たって軌道が変わって入ったものだけだったんですけどね。後半頭からはトマスに代え、ロドリを投入したおかげか、サウールがバーに当たるシュートを含め、1人気を吐いていたんですが、シメオネ監督がその彼を15分にはコレアに代えてしまったのには首を傾げるばかり。真の悲劇が始まったのはそれからで28分にはマドリーからレンタル移籍中のアクラフが左サイドを激走、そのクロスをゲレイロが決め、追加点を挙げると38分にも再び、サンチョアシストして3点差に。

▽そのドルトムントの速攻サッカーはまさに、「Fue practico, dinamico, entendio que la posesion es la verticalidad y no la tenencia inutil de la pelota/フエ・プラクティコ、ディナミコ、エネンディオ・ケ・ラ・ポセシオン・エス・ラ・ベルティカリダド・イ・ノー・ラ・テネンシア・インウティル(実際的でダイナミック、ポゼッションは縦に攻撃するためのもので、無意味に持っていることではない)」とシメオネ監督も褒めていた通り、いい時のアトレティコの持ち味でもあるんですけどね。後半は妙に外縁でトロトロ、パスを回していることが多かった彼らを見て、W杯のスペイン代表を連想したのは私だけだった?

ロドリのベンチスタートにして、よく大事なところでパスミスをするトマスを先発させたのもグリーズマンジエゴ・コスタのゴール日照りを勘案、その欠点を我慢してでも攻撃力を上げたかったのかと好意的に解釈しようとしましたが…いくら3-0でもう勝負がついていたとしても残り1分、フィリペ・ルイスが自陣エリア前でゲレイロにパスを贈るに至ってはもう、完全に理解不能。そのシュートも決まり、とうとう4-0というシメオネ監督の就任以来、最悪のスコアで負けてしまったアトレティコでしたが、それでも当人は「Tengo que sostener a estos grandes futbolistas, sabemos cual es el camino/テンゴ・ケ・ソステネール・ア・エストス・グランデス・フトボリスアス、サベモス・・クアル・エス・エル・カミーノ(自分はこの偉大なサッカー選手たちを支えないといけないし、進むべき道はわかっている)」と強気だったんですけどね。

▽とりわけこの8年間、恐怖のザル状態から、守備の堅いチームという評判を築くベースとなったゴディン、フアンフラン、フィリペ・ルイスが30才を越え、衰えも出て来たことと、アル・サッドへ行ってしまったカンテラーノ(アトレティコB出身の選手)の先輩、ガビの代わりに練習ではいつも先頭に立っているコケも空回り。そこへ2人のエースも得点してくれないとなると、それこそ去年、カラバフ(アゼルバイジャン)戦の2引き分けが致命的となり、CLグループリーグを3位敗退した悪夢が蘇ってくるようですが、幸いながらその日はモナコとクラブ・ブルージュがドローだったため、当面、アトレティコの2位は揺るぎそうにないのは不幸中の幸いだったかと。

▽そんな彼らはこの週末、土曜午後8時45分(日本時間翌午前3時45分)からレアル・ソシエダ戦なんですが、この試合ではフアンフランが累積警告で出場停止。ビジャレアル戦で再度、ケガをしたヒメネスもお休みです。相手方での注目は4試合の出場停止が明けて、古巣を訪問し、リュカと兄弟対決となるテオなんですが、というのも彼は兄と一緒でカンテラ(アトレティコのユースチーム)育ちになのに昨年の夏、宿敵マドリーに移籍。今季はレンタルソシエダに移り、初めてワンダピッチを踏むからですが、あまりファンのpito(ピト/ブーイング)が大きくならないよう、プレーは控えめにしておいた方がいいかと。

▽そしてアトレティコと同じ水曜、延期されていたリーガ3節のアスレティック戦を行い、1-1と引き分けた弟分のラージョは忙しなくも土曜午後1時にジローナとのアウェイ戦、レガネスも午後6時30分からレバンテに挑むんですが、どちらのチームもまずは降格圏からの脱出が目標になります。今のところ、残留ラインの17位アスレティックとの差は19位のラージョでも勝ち点3だけなので、距離ができる前に何とかできるといいのですが、こればっかりはねえ。

▽もう1つの弟分、10位と穏やかな位置にいるヘタフェは日曜正午から、ベティスをコリセウム・アルフォンソ・ペレスに迎えるんですが、相手は木曜のヨーロッパリーグで名門ミランサン・シーロで1-2と破り、士気が上がってそうなのが辛いところ。ローテーションでその試合には出場しなかった乾貴士選手は見られそうですが、柴崎岳選手がボルダラス監督の招集リストに入るかどうかは当日までわかりません。そんな調子でまたリーガ三昧の週末が来ますが、いよいよ来週は1部チームが参加するコパ・デル・レイ32強対決もスタート。火曜にブタルケで再びミニダービーとなるレガネスとラージョ、水曜に2部のコルドバのホームを訪れるヘタフェと、ミッドウィークの試合に慣れない彼らにとっては大変ですが、ここまであまりプレーしていない選手たちにはいい、アピールのチャンスになるはずですよ。
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