覚悟の移籍を経て1年目でタイトル獲得「格別なものがありました」

 湘南ベルマーレの元日本代表MF梅崎司は、27日のルヴァンカップ決勝でキャプテンマークをつけて後半32分までプレーし、1-0での大会初優勝に貢献した。昨季まで過ごした浦和レッズの本拠地である埼玉スタジアムでタイトルを獲得した梅崎は「(湘南は)Jリーグオンリーワンのチームだと思っている」と、充実感のある笑顔で振り返った。

 グループステージから多くの選手を入れ替えながら戦ってきた湘南にあって、決勝まで含めた13試合のうち梅崎はこれが11試合目の出場でチーム最多タイだった。スタメンのフィールドプレーヤーで唯一30歳を超えた選手であり、浦和時代には何度もタイトルの懸かった試合を経験した。そういったことがキャプテンマークにつながったのか、試合開始直後から背中でチームを引っ張るような猛プレスとドリブル突破を見せた。

 惜しむらくは抜け出して放ったシュート2本がいずれもゴールにつながらず、「自分のパフォーマンスには納得のいっていないところが多くて」という言葉を残したことだが、存在感は十分すぎるほどだった。若手も多い構成のチームメイトに、梅崎は頼もしさを感じながらプレーしていたのだという。

「僕だけでなく、今日ピッチに立てなかった選手、ベンチに入れなかった選手も、ルヴァンカップは最初から皆の力があった。僕も少なからず貢献できたと思うし、皆の力で勝ち得たものだと思う。格別なものがありました。いつも通りというか、ベルマーレらしく戦わないと何も生まれない。肝が据わった若手がたくさんいて、試合ごとに成長してきて、今も成長過程。何も僕が示す必要はないと思っていたくらいです」

 梅崎は大分トリニータの下部組織から育ち、最も長く在籍したのは2008年から昨季までプレーした浦和だった。その間には、カップ戦決勝を敗者の立場で終えたことが少なくない。16年にはルヴァンカップを浦和が制したが、自身は準々決勝で膝の靭帯を損傷する大怪我を負ってピッチは遠い場所だった。昨季はAFCチャンピオンズリーグ(ACL)を制すも、優勝を決めた第2戦でピッチに立ったのは最後の数分間だった。そうした思いを積み重ねてきて、湘南での1年目で達成した優勝は梅崎の心を大きく動かしていた。


アグレッシブにプレスをかけて縦に速い攻撃を仕掛ける。そこには緻密さもある」

「残酷なことですけど、勝者と敗者がいて。僕らはこうやって優勝カップや(賞金が書かれた)ボードをいただけて、喜ぶことができた。マリノスさんはそれを下で眺めて。それを何度も経験していますし、勝った者にしか味わえない景色があって、それが素晴らしいものだと。チームの核としてプレーを続けられて、そのなかでタイトルを獲れた。本当に嬉しいですよ」

 今季の梅崎は負傷を抱えた状態からスタートしていたが、奇しくもターニングポイントになったのが4月28日の古巣対決、埼スタで迎えた浦和戦だったのだという。そこから、今までに過ごしてきた日々が本当に充実したものであることを振り返りながら言葉をつないだ。

レッズ戦が自分の中で今季のきっかけだった。もっとチームに貢献したい思いが強くなったし、過程を踏んでこられた。(湘南は)Jリーグオンリーワンのチームだと思っているし、特に前半、あれだけアグレッシブにプレスをかけて縦に速い攻撃を仕掛ける。なかなかできるものではないけど、そこには緻密さもある。一人一人の距離感や意思統一がないと実行できないスタイル。それをシーズンのなかで、僕は一つ一つ学んできました。今はそれが自分のなかでしっかり理解ができて、先陣を切ってやるところまで理解できてきましたから」

 交代で退いた後の時間を「頼むぞという思い」で見守り、試合終了のホイッスルで歓喜の瞬間が訪れた。「サッカーを楽しくやれている時点で移籍して良かったとは思いますし、タイトルを獲ったらその気持ちが増すと思っていた。それを実現できて嬉しいですね」と話した梅崎は、湘南スタイルの先陣を切って駆け抜ける「7番」を完全に自分のものにした。

 模範的なプロフェッショナリズムと負傷による苦難の日々を乗り越えた強靭なメンタルの持ち主である梅崎が、チームに与えた影響とタイトルへの貢献度は大きなものがあるはずだ。


(轡田哲朗 / Tetsuro Kutsuwada)

湘南ベルマーレMF梅崎【写真:荒川祐史】