2017年2月よりサービスを開始したソーシャルVRプラットフォーム「VRChat」。好きなアバターになりきってオンライン空間に参加できるアプリです。VRChatは、好きな「ワールド」を作成して公開できることも魅力の1つであり、アニメやゲームの世界を思わせるワールドや、バーチャル美術館など、様々なワールドが存在します。

今回、VRChatに存在するとあるワールドにて、ユーザーのnarihara氏(@Benishoga_2)が体験した内容がTwitterで話題となっています。

narihara氏がツイートしているワールドはBattle of Camlann。シンプルで暗い風景の中、断頭台(ギロチン)が設置されているワールドです。narihara氏の一連のツイートでは、VR内で斬首された後、汗や手足のしびれ、意識の遠のきなど、その影響が実際の心体にも出ていることが伝わってきます。

VR×触覚について調べるうちに、ここへ辿り着いた

今回、Mogura VRでは「Battle of Camlann」にてどのような体験をしたのかnarihara氏にお話をうかがいました。

narihara氏はVRChatを約3ヶ月で650時間以上プレイするほど熱中しており、体験中には“アバターに触れられると、実際の体に触れられたような感覚がする”ほどになったそうです。この「仮想空間で実際に触られた気がする」という体験から、VR上で色々と試してみたいという好奇心が生まれたとのこと。

「VR上でくすぐられたらどう感じるか?」「自分の肉体には存在しない、アバターの獣耳を触られたらどうなるか?」を友人らとテストしてみたところ、人により「感触が全くない」人から「くすぐったい」と感じる人まで、異なった感想を得ることができたそうです。

こうした知見を得る中で、「刃が体にぶつかる・切られる」という体験にも興味が生まれ、様々な経緯を経て、友人から「このワールドで斬首されてみたらどうだろう?」という提案を受け入れたそうです。

VRで明確かつ切実に「死」を意識した

「Battle of Camlann」では、ギロチンの歯が見えるようにユーザーは仰向けにさせられ、斬首のタイミングは他のユーザーに一任されています。最初は未知の体験にワクワクしながら待っていたnarihara氏でしたが、友人たちの言葉から、段々と「死」を意識してしまったとのこと。そして、「静寂の中で時計の音がカチコチ鳴り響いて、首を動かせないまま、これから落ちる刃を見つめていると、VR空間であることを忘れて『死にたくない』と心から思ってしまった」とその時の気持ちを語っています。

刃が身体に触れた瞬間は、「ぐえっ」という声と首元への強烈な触覚と共に、意識が遠くなってしまったとのこと(ワールド側の仕様で、アバターの首から血が流れるようになっています)。全く動けなくなってしまったnarihara氏を心配した友人たちが駆けつけ、声を何度もかけたところ意識が復活。しかし、手足は痺れた感じがし、冷や汗が止まらず、立とうしても立てなくなってしまったそうです。

体験後は「斬首される瞬間の息苦しさと意識が飛ぶ感じや、頭がボーっとするような感覚などが30分ほど続いた」としており、VRでの体験が現実の身体に影響しているようです。そして、「本当に怖い思いをしたため、二度と行きたくない」「お試しでも絶対にやってほしくありません」とコメントしています。

narihara氏の友人は、同氏が斬首をされる様子を見て「本当に心配した」「自分も刃で首を落とされるところを想像してしまった」とのこと。同氏は体験後に休息を取ったことで、翌日には心身ともに回復したとのことです。

実際に体験してみた記者にも症状が

Mogura VRでは今回、敢えて断頭台ワールドを体験してきた感想をお伝えしようと思います。体験した記者はVTuber「のらきゃっと」の熱烈なファン。VRChatではファンメイドののらきゃっとアバターを使っているほどです。アバターへのこだわりなどもあり、あるはずのない体の部位を触られて体温を感じるなど、いわゆる「魂の適応」度も高いです。このバーチャルアバターへの「魂の適応」の高さは、このワールドではどのような影響があるのでしょうか。

さて、「Battle of Camlann」に入るとそこは青暗く、浅い呼吸音の響く何もない不気味なワールドが広がります。少し進むと目の前に大きな断頭台が。前持った情報から知ってはいましたが、質感や威圧感が凄まじく、これだけで気後れしてしまいそうになりました。

narihara氏のツイートからも、危険性は重々承知しています。今回は友人2名の付き添いのもと、断頭台で処刑を実行してもらうことにしました。断頭台は使用すると自動的に寝そべった状態に体勢を変えられて刃の下に行く仕様ですが、この時点で汗や呼吸が早くなっていることを自覚していました。また、筆者はVR環境で体験したのですが、無意識のうちに手を顔の横まで上げ、自分から「拘束されている状態」にまでしていたようです。

そしてフレンドに声をかけ、いよいよ刃を落としてもらいました。刃が落ちてくる様子そのものは迫力があるわけではないのですが、問題は自身が処刑されたという“事実”があったこと。筆者には明確に冷や汗や気持ちの乱れが起き、そして一番顕著だった症状は一緒に切り落とされた左手に痺れが発生したことです。幸いにそれ以上に酷い症状は発生しませんでしたが、30分ほどはこうした状態が続きました。体験者以上に「魂の適応」度合いが高い人は注意する必要があるでしょうし、悪ふざけで行くのは避けた方がよいでしょう。

(※本記事は、読者の皆様によるVRでの処刑体験を推奨するものではありません。体験およびそれに伴う一切の事象は自己責任であることをご了承ください)