小学生の頃、何かの授業でこんな実験を行ったことがある。目隠しをしたまま歩行し、ある程度行ったところでストップ。振り返り、自分は真っ直ぐ歩けているのか確認するという実験を。これ、大抵は無意識に右や左に寄っているもんで。あれ、不思議だよねえ。

話は変わるが、文字を書く際。もしも罫線のない真っ白なページに書き込むとしたら、どうなります? ハッキリ言って、とても真っ直ぐに書けたもんじゃない。
そこで、こんな新情報を。山梨県在住のある一人の男性が、超画期的なノートを生み出したのです。ノートの名は『伊葉ノート』。

では、どこがどう画期的なのか。まず、形が四角くない。どちらかと言うと、扇形だ。ということは、罫線も右上がりになっている。
まぁ、とりあえずは画像をご覧頂きましょうか。何とも風変わりじゃないですか? 既成概念をブッ壊しているもの。でも、どうしてこのような形状にしたのだろう。
「普段から、いいアイデアを思い付いたらキャンパスノートに書き留めるようにしていました。ある日もふとアイデアが思い付き、その時は辺りが暗かったのですが構わずにササッと書き留めたんです。そして翌日にノートを見返すと、字が曲がっていました」
お答えいただいたのは、『伊葉ノート』開発者の宮坂弥さん。世の中にない、全く新しいものを発明しようと日々悩んでいたが、思わぬところで新発明のきっかけに出会った。「罫線があるから真っ直ぐ書いてるけど、無かったらどうなるの?」と、気付いてしまったのだ。

そこからは、『伊葉ノート』開発に邁進! まずは、確認作業に着手する。試しに白紙のノートに文章を書いてみると、再びある事に気付いてしまった。文の角度、横に真っ直ぐじゃないどころか、円を描く形になっている! 我々は横書きで字を書くと、肩あるいは肘を軸として回転運動で書いているということを発見したのだ。
この理論について、説明していただきました。まずは、縦書きについて。
「日本語は、縦書きの方が書きやすい言語です。例えば金槌を打つ際も、力の方向は手前に引いていますよね。これが、日本の文化なんです」(宮坂さん)
では、横書きはどういう理論なのか?
横書きの場合は“引き”ではなく、回転運動が適しています。例えばコンサートなどでお客さんが手を振る際、ずっと横運動だと疲れるので段々と回転運動になっていきますよね」(宮坂さん)
確かに! 遠目からサイリュウムの動きを見てると、くるくる円を描いてるもの。文を書く際も、理論は同じなのだ。

そして、もう一要素。ノートを置く角度についても考慮されている。
「今の若い子が文を書く様子を見ていると、ノートを斜め正面に置いている場合が多いです。実際、その方が書きやすいんですよね」(宮坂さん)
要するに、若者は無意識に肩、肘を軸とした円弧の中にノートを置いている。これも、「回転運動が横書きに適している」説を裏付けた。だからこそ、ノートの形状を扇形にしてみせたのだ。

なるほど、理論はわかった。でも、そんなに書きやすいかどうか、体で試してみたいよねぇ。……というわけで、『伊葉ノート』を取り寄せました!
さて実際に手に取ってみると、不思議な感覚です。なんか、ノートって気がしない。クレープみたい。いや、まさにあんなフォルムをしてるんですよ。

ノートを開くと、現れたのは罫線入りのページたち。じゃあ、何か書き込んでみようかな? ……いや、さすがにペンを持って構えると違和感を感じます。こんなノート、初めてだし。
そんな時は、ページ上部に記された「↓Shoulder」というマークに注目すればいいみたい。これは「この方向に右肩が向いていれば書きやすくなる」という印だそうです。

よし、使い方も把握した。では、書き込んでみます。……あぁ、書きやすいかも! スラスラ筆が進むんですよ。マジで。お世辞じゃなくて。
確認のため、通常のノートにも文を書き込んでみた。……あぁ、さっき(『伊葉ノート』)の方が書きやすい! アレ、今までは無理して横書きしてたのかなぁ? こんな風に比較すると、明らかに差があるんです。こりゃ、びっくりだ。

そんな『伊葉ノート』は、商品の公式サイトにて9月15日より発売中。価格は780円(税込み)。

「先生が黒板の字を消すのが早すぎ!」と憤っている学生さんや、湧き上がるアイデアを全て記録しておきたいクリエイター向けのノートです……。いや、どんな人にでも一度は体験していただきたいなぁ。ちょっと、ショックでした。
(寺西ジャジューカ)

罫線が斜めってる。