第4週「私がみつけます!」 第24回 10月27日(土)放送より
脚本:福田 靖 
演出:安達もじり
音楽:川井憲次
キャスト:安藤サクラ長谷川博己、内田有紀、松下奈緒、要潤、大谷亮平
     桐谷健太、片岡愛之助、橋本マナミ松井玲奈、呉城久美、松坂慶子、橋爪功ほか
語り:芦田愛菜
主題歌:DREAMS COME TRUE「あなたとトゥラッタッタ♪」
制作統括:真鍋 斎

連続テレビ小説 まんぷく Part1

24話のあらすじ
腹膜炎にかかった萬平(長谷川博己)はなんとか回復し、入隊したものの戦争には行けなかった。
お国のために何もできないと萬平は嘆く。

萬平、目が覚める
萬平のためにお百度参りする鈴(松坂慶子)。福子(安藤サクラ)のためと言うが、やっぱり根はいい人なのだ。素直じゃないだけ。そういう憎めない感じを松坂慶子がかわいく演じている。

23話の使い回しの庭のカット。瑞々しい庭木をなめ家の外観が映り、朝が来た。
福子に手を握られ眠っていた萬平が目を覚ます。山を超えたらしい。
ぼっさぼさでぼろっぼろの萬平。
お百度参りしてくれたことをサクラが萬平に話すと、「わたしは昔の人ですから」と謙虚な鈴。ここでは「武士の娘」と言わなかった。

村人たちがわんさかやって来て、回復を喜ぶ。
「ありがとうございます」の声が枯れている。
おかゆを食べてるときも声がかすれている。でも木べらをもつ指は相変わらず美しい。

「どうしたんですか」となぜか福子まで声がかすれてる。
なんで夫婦そろって声がかすれているのか。いくら安藤サクラ長谷川博己、演技派の共演と言ったって、
ふたりして声までかすれて演じるとは。息を合わせすぎてかすれも移ってしまったのか。

三途の川の向こうに
萬平が夢を見た話をはじめる。
三途の川に鈴が立っていて「こっちに来ちゃダメよ」って叱られたと言う。
死んでない鈴が向こうにいるというシュールな夢。
萬平「お礼を言ったほうがいいか迷ってたんだ」
福子「言わないほうがええと思います 絶対」
かすれた声でおもろい夫婦の会話をする安藤サクラ長谷川博己
「へんな人〜」と笑う福子。なんだかしっとりほのぼの、地味だがなかなかいい場面である。

でも、三途の河の向こうに鈴がいたって、死亡フラグ

萬平、またも絶叫
数日後、入隊したものの、その日のうちに返されてしまい、肩を落とす萬平。
医者に回復までに一ヶ月くらいかかると言われていたからなあ。

気分転換にと、福子は散歩に誘う。
杖をつきつき、畑を歩いていると、「べっちょないんか」と八重(竹内都子)ほか、村人たちが心配して寄ってくる。
大人も子どもも気の好い人たちに描かれている。

だだっ広い畑の中に、ひとつ背の低い屋根のある倉庫みたいのがあって、ん〜と思って見ていると、
米軍の戦闘機が機銃掃射攻撃してきた。
みんな、その倉庫みたいなとこに避難する。

静かになって、立ち上がり、見回すと、ひとりだけいない。
五郎はひとり草のなかに隠れていて、ホッとなる。

「いまのはなに福子」って突然、やたら広くて見晴らしのいい畑のどこかから、鈴が走ってくる。
これに疑問を抱かせる間もなく、萬平が、わーわーとわめきだす。
「畜生! 畜生〜!」「クソ!クソ!クソ!クソ〜!」「情けない!」と号泣。
萬平さんの嗜虐的な演技は、なんと23日よりも24日がピークだった。
なんでそんなに自分を追い詰めるのかと言えば、みんな戦争に行ってお国のために闘っているのに、自分はそれができないことを申し訳なく思っている。

「戦争に行かなくともお国の役に立てることはきっとあります」と福子も鈴も村人もみんな、萬平を励ます。
萬平だけでなく、そこにいるのは、戦争に行ってない男と女と子どもであり、そろって役に立ってないことになってしまう。そうじゃないはずなのだ。これは、昨今、取り沙汰されている「生産性」の問題に刺さる言葉であった。
「僕は何もできない」と泣く萬平の気持ちは真に迫り、泣けてくる。なんてナイーブなんだ。
萬平が生涯、人のために発明をしていく芯の部分は、こんなにも重く、切実な心情なのである。
できることを「わたしがみつけてあげます」と萬平をしっかり支える福子。

文学座出身者と朝ドラ
真面目な話をチャカして申し訳ないが、萬平は十分、役に立っている。
米軍の攻撃のあと、いったい鈴がどっから出てきたか疑問を持つ間を与えないように、叫んで気をそらすという重要な役割を果たしていた。グッジョブ

エキセントリックな演技で目立っている長谷川博己であるが、じつは正統派である。
朝ドラ、オリジナル脚本の元祖と言われる「おはなはん」(66年)で人気を博した夫役の高橋幸治が所属していた文学座出身だ。
新劇の劇団の老舗で多くの名優を輩出してきた文学座出身俳優と朝ドラは縁があり、「おしん」(83年)でヒロインに重要な影響を与える役、「半分、青い。」(18年)でヒロインの祖父を演じた中村雅俊もいるし、ヒロインの永遠のライバルとして女性人気を欲しいままに大ブレイクした「ふたりっ子」(96年)の内野聖陽がいる。
知的で洗練された雰囲気があり、口跡がよく台詞が聞き取りやすいのが文学座の俳優の特徴で、朝ドラを昔から見ている高齢層に受けること間違いない、安心のキャスティングなのである。
文学座を辞めて久しい長谷川ではあるが、育ちが朝ドラで大いに生かされているのを感じる。
(イラストと文/木俣冬

連続テレビ小説まんぷく
NHK総合 月~土 朝8時~、再放送 午後0時45分~
BSプレミアム 月~土 あさ7時30分~ 再放送 午後11時30分~
◯1週間まとめ放送 土曜9時30分~

朝ドラべっぴんさん」もBS プレミアムで月〜土、朝7時15分から再放送中。 
こちらも安達もじり演出週 「べっぴんさん」第24話レビューはコチラ

連続テレビ小説 まんぷく Part1 (NHKドラマ・ガイド) NHK出版