海上自衛隊の将来をになう初級幹部が、遠洋練習航海から帰国しました。そこには陸自や空自とは少し異なる、海自ならではの役割や意味合いがあります。

海自の将来を担う人材が世界一周航海から帰国

2018年5月21日海上自衛隊横須賀基地を出港してから163日、海上自衛隊平成30年度遠洋練習航海部隊が10月30日(火)、横須賀に帰ってきました。

「スマートで、目先が利いて、几帳面、負けじ魂、これぞ船乗り」とは、旧海軍からの伝統精神を表現する標語のひとつであり、千変万化のする海上勤務において、船乗りに必要な心構えを端的に表現したものです。

遠洋練習航海は海上自衛隊の初級幹部に対し、外洋航海を通じて知識、技能を実地に修得すると共に、諸外国を訪問することで国際感覚を身に付け、友好親善にも寄与することを目的に毎年行われています。また、海上自衛隊も他国の練習艦を広く受け入れています。

平成30年度航海部隊の派遣人員は、第68期一般幹部候補生課程修了者約190名(うちタイ海軍少尉1名、女性自衛官約20名)を含む約580名で、練習艦「かしま」と護衛艦「まきなみ」で編成されました。西回りで地球を一周し、10か国(12寄航地)を訪問しました。

寄港したインドネシアとは国交樹立60周年、フィンランドとは100周年、スペインスウェーデンとは150周年という外交上節目の年であり、親善外交使節としても重要な役割を果たしました。軍艦はその国の主権のシンボルでもありそこに乗り組む海軍人には外交官としての資質を求められ、陸空軍の将校の海外派遣訓練とはやや趣を異にします。「かしま」には寄航国のVIPを招待接遇できる設備も整えられており、移動迎賓館(艦)といったところでしょうか。

海上自衛官にとって遠洋練習航海は忘れられない大きな行事であり、一緒に参加した同期の絆は一生ものだと、経験者は口を揃えます。岸壁では多くの家族、防衛省幹部が出迎え、初級幹部が「かしま」を下船する際には、乗員と「帽振れ」を交わし、艦からは自衛艦旗が振られて別れを惜しんでいました。

鈴木防衛大臣政務官への帰国報告を行う平成30年度遠洋練習航海部隊(2018年10月30日、月刊PANZER編集部撮影)。