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 渋谷界隈では既にザワザワしていたけれど、正式なハロウィン10月31日だ。

 アメリカ東部ではこの日の18:00に子供たちが様々な仮装をし、袋を持って近所の家を「トリックアトリート」と言いながら回り、お菓子を回収する。

  基本的にハロウィンは、不気味なオバケや幽霊など、あの世に関するもので家を飾り付けたりするのだが、それは限りある人生をどのように生きるかという大切な教訓も伝えているのだそうだ。

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悪夢以外の何物でもない。古い時代の狂気に満ちたハロウィンコスプレ
あの恐怖映画『ハロウィン』の舞台裏は映画さながらの怖さだった。
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怖いよ。怖すぎるよ。第一次世界大戦前後に撮影された心霊写真(イギリス)
その背景にある物語がわからないだけにより一層の不気味さを醸し出す、ネット上で独り歩きしている恐怖の古写真

ハロウィンの起源

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 ハロウィンの起源はケルト人のサウィン祭りにまで遡る。

 ケルト人は1年が光(=夏)と闇(=冬)で分けられていると考えており、サウィン祭りはその闇の始まりを祝うためのお祭りだ。また生きている者の世界と死者の世界が重なり合うために、幽霊が出やすい時期とも信じられていた。

 601年、北ヨーロッパキリスト教布教を進めるために、教皇グレゴリウス1世は布教活動ではなく、異教徒の祭りを禁止するよう宣教師たちに命じた。

 このために、やがてサウィン祭りは、キリスト教で死んだ人間に話しかけてもかまわないとされる死者の日と諸聖人の日にすり替えられた。

 諸聖人の日(All Saint's Day)は、万聖節(All Hallows' Day)とも呼ばれる。そして、万聖節の前夜(All Hallows' Evening)が訛って、ハロウィン(Hallowe’en)となった。

キリスト教の幽霊

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 その後も異教徒たちは霊魂を信じ続けたが、それらは初期キリスト教の教義の一部にもなった。

 グレゴリウス1世は、幽霊が見える者は死者のためにミサを捧げよと提案している。彼の見解では、死者は天国へ旅立つために生きている者の手助けを必要としていた。

 中世において、魂が煉獄にとらわれて炎で浄化されるという考えは、教会による免罪符の販売を促進する結果につながった。

 教会にお金を払えば、罪の罰を減らすことができるというわけだ。幽霊を信じている人間はたくさんいたので、教会にとって免罪符の販売はおいしい商売であった。

 こうした考えは宗教改革にもつながった。なにしろマルティン・ルターの「95ヶ条の論題」は、ほかならぬ免罪符の販売に対する抗議が主な理由で書かれたものなのだ。のちにプロテスタントが普及した国では、幽霊は”カトリックの迷信”とされた。

 しかし幽霊の存在についての議論はなくならず、それは科学の手に委ねられるようになった。19世紀までに、心霊主義という新しいムーブメントが起こり、降霊術やウィジャボードあるいは心霊写真といった手段で死者との会話が試みられるようになる。

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・偽霊媒師が作り上げた降霊の様子を写した奇妙な古写真とその種明かし : カラパイア

 心霊主義自体は第一次世界大戦後になりを潜めたが、その手法自体は現在でもよく知られており、たとえば科学的に幽霊を証明しようとするゴーストハンターたちが使っている。

幽霊の広大な世界

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 幽霊はなにもキリスト教圏だけの話ではない。ほとんどの社会で幽霊の概念が存在する。台湾などでは9割が幽霊を見たことがあると答えるほどだ。

 日本、韓国、中国、ベトナム、台湾などのアジア諸国には、あの世から霊が帰ってくるとされる”お盆”に相当する日がある。

 その多くが関係している仏教の「盂蘭盆経」には、釈迦の弟子の1人が餓鬼道に落ちた亡き母を救う方法を教えられたという話が書かれている。

 多くの文化圏と同じように、台湾の幽霊には良い幽霊と悪い幽霊がある。良い幽霊は祖先や家族の幽霊で、お盆の時期は家に招かれる。しかし悪い幽霊は、生きている人間を祟るとされる。

私たちの生活のなかでの幽霊の役割

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 ある学者が話しているように、幽霊が祟るのにはちゃんとした理由がある。

 それは未解決の殺人事件だったり、葬式が行われなかったり、避けられたはずの悲劇だったりといったものだ。

 こう考えると、幽霊は常に正義を求めて化けて出てきているとも言える。正義の訴えは個人からも、社会からもある。

 たとえば、アメリカでは、かつての黒人奴隷や殺された先住民たちの幽霊が目撃されている。

 このように、幽霊は倫理の影を象徴する。幽霊の目撃事例は、倫理や道徳が命を超越しており、その乱れはずしりと心にのしかかるのだということを思い出させてくれる。

 幽霊の話は希望でもある。

 つまりは死んだあとにも生があるということであり、亡くなった人に再会できるということであり、罪を償うこともできるということでもあるからだ。

 今年のハロウィンでは、嬌声がひびくお祭り騒ぎのほんの合間に、幽霊が呪われた過去のなかで果たす役割を思い出し、それが道徳的な生活へと導いてくれるのだということに感謝してみてもいいかもしれない。

References:Why Believing in Ghosts Can Make You a Better Person/ written by hiroching / edited by parumo

全文をカラパイアで読む:
http://karapaia.com/archives/52266930.html
 

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