初戦は2-0で勝利 今回の遠征の目的は来年のU-17W杯に出場できる選手を発掘すること

 フランス遠征中のU-15日本代表は30日、パリ郊外ヴィトリー・シュール・セーヌで「バル・ド・マルヌU-16国際親善トーナメント2018」初戦オーストリアU-15代表(40分ハーフ)と対戦した。前半終了間際の39分、ゴール前のコンビネーションプレーからFW勝島新之助(京都サンガF.C.U-15)が先制点。後半18分には、今回が代表初招集のガンバ大阪Jrユース所属のMF中村仁郎の右サイドからのFKをDF諏訪間幸成(横浜F・マリノスJrユース)がピンポイントで捉えて2点目を挙げ、2-0の完封勝利を飾った。

 序盤は、連日雨が続いたせいもあり、ところどころ陥没するなど状態の良くない天然芝のピッチや、同い年とは思えないほど体格の良いオーストリア勢の迫力といった慣れない要素に押される形で、自分たちのペースでボールをつなげない時間が続いた。しかし、徐々に相手のスタイルに慣れると、ボールスキルや連携を駆使したパスワークを展開。守備面でもゴール前での体を張ったプレーで相手のシュートチャンスを防ぎ切った。

 森山佳郎監督は、「やはりこちらの芝に慣れていないというか、序盤は相手の圧力もありましたが、徐々にボールを動かせる時間が増えてくると、日本の良さというかパスワークから突破してシュートまで行くシーンが、前半終わり頃にかけて出始めた」と振り返る。

 後半戦お互いの距離感やポジショニング、プレッシャーのかけ方を微調整することで、相手の推進力を封じ、ボールゲームを主導することで相手がボールを追えなくなる相乗効果を狙って勝利に持ち込んだ

 今回のフランス遠征の目的はずばり、9月から10月にかけてマレーシアで行われたU-16アジア選手権に優勝して、来年のU-17ワールドカップ(W杯)ペルー大会に出場を決めた一世代上の代表チームに昇格可能なメンバーを発掘することだ。


森山監督の中井評は「守備はまだ課題はあるがチームに落ち着きをもたらす部分は良さ」

「一人、一個下の子が決勝にも出場してかなり良かったので、誰がそこに続いていくのか、というところでそれを毎日煽っている。一個上のチームでW杯に行って国際経験を積む選手が出れば良いな、と。前回のU-17W杯を経験した選手がU-19でW杯出場権をつかむのにだいぶ貢献しているので、国際経験を積んでいくなかで日本の力になっていく、というところができつつある。この世代からも誰がそこに入っていけるのかな、というところですね」

 U-16アジア選手権のチームを率いた森山監督はそう話す。

 この初戦では、負傷退場したMF遠山悠希(京都サンガF.C.U-15)に代えて前半35分から中井卓大(レアル・マドリード カデーテA)を投入したのを皮切りに、残り6人の交代要員も後半に使い、18人全員を試した。

 今回は、ブレーメン所属のGK長田澪とレアルの中井、海外を拠点とする2選手も初招集された。

「中井の場合は、ボールタッチのところでチームに落ち着きをもたらす部分は良さだし、最後のゴールにつながるような部分や守備はまだまだ課題はありますが、面白い存在。長田は、あの身長自体がかなりの武器(190センチ)。それなのに動きとか、左右両足でつなぐボールタッチも良い。長いキックとかはまだ筋力面で課題がありますが、背もこれからまだ伸びるでしょう。これは二人ともに言えることですが、筋力とかフィードのところは、これから時間が解決してくれる部分と、意識してつけていかないといけない部分はある。長田のビルドアップもしっかりできるなかで、今日も2、3本、『お!?』というボールを余裕でキャッチできる、あの高さは安心感をもたらすと思う」


「誰にも負けない武器は何か」を追求 次のフランス戦で“対世界”との現在地を測る

 その他、今回初招集されたメンバーの中でも、中村はドリブル突破に加えて得意のプレースキックでもFKから2点目を呼ぶなど、存在感を発揮した。

「中村の良さは、ペナルティーボックス付近になると出る。僕らの“02ジャパン”が求めていることのひとつが、『武器、strong』――誰にも負けない武器は何か――ということ。その武器を持たないとプロや世界では通用しない。その点で中村は分かりやすい。相手が大きければ大きいほどああいう小刻みなドリブルが通用するので、楽しみな存在ですね」

 残りの2戦、フランス戦(11月1日)とイングランド戦(11月3日)は、格好の競争の場になりそうだ。

フランスが強いのは分かっている。世界ナンバーワンを狙える国。でも、僕らの良さもある。とにかく相手はどこであれ、食らいついて噛みついていくくらい、どんどん積極的にやるということを徹底しているので、フランスだろうがイングランドだろうが、ガンガン行くぞ! というところを出せていけたらな、と思います」

 全員でボールを動かしてゴールを狙い、何度も繰り返しアタックしていく。日本らしいサッカーで全勝を目指す、と森山監督は力を込めていた。


(小川由紀子/Yukiko Ogawa)

フランス遠征中のU-15日本代表【写真:Tomoko Yasuda】