ノスタルジック人吉」にあわせて、JR九州肥薩線を走る「D&S列車」が大正ロマンたっぷりになりました。肥薩線は見どころの多い路線として知られますが、その「川線」と呼ばれる区間は、どう面白いのでしょうか。

今年で10回目

JR九州肥薩線を走る「D&S(デザイン&ストーリー)列車」(いわゆる観光列車)の客室乗務員が、「ハイカラさん」といった大正ロマンたっぷりの衣装で乗務するイベントが2018年10月28日(日)、開催されました。

1909(明治42)年10月12日に開通した、肥薩線の八代(熊本県八代市)~人吉(熊本県人吉市)間。2009(平成21)年4月、そこへSL列車が復活したのを記念し始まったイベント「ノスタルジック人吉」が、今年2018年も10月28日(日)から11月4日(日)にかけ、始まっています。人吉温泉女将の会「さくら会」が主催して行う、開通当時の庶民の装いで観光客をもてなすイベントで、今回で10回目を迎えました。これにあわせて、客室乗務員の衣装も100年前にタイムスリップしたのです。

今年は特急「いさぶろう」「かわせみ やませみ」と快速「SL人吉」の計5本に、ノスタルジックな衣装の客室乗務員が乗車して、「タイムスリップポストカード」の配布や駄菓子のプレゼント、写真撮影などを実施しました。

また人吉駅前では、明治時代をイメージした「さくらカフェ」の開店や、物産品の販売、球磨焼酎の試飲、ファッションショー、人力車、こま回しなどのノスタルジックなイベントを開催。「SL人吉」の人吉駅到着時には「さくら会」の女将、JR九州の青柳俊彦社長らによる出迎えも行われています。

肥薩線(川線)、ここが面白い!

八代駅と隼人駅(鹿児島県霧島市)を人吉駅経由で結ぶ、長さ124.2kmのJR九州 肥薩線。そのうち、球磨川沿いに走る八代~人吉間50kmほどは「川線」と呼ばれており、途中で明治時代に架けられた2つのトラス橋を通過。川面が車窓の右から左と変化します。

また「日本三急流」のひとつに数えられる球磨川ですが、水しぶきをあげる力強い場所のほか、瀬戸石ダムにせき止められたエメラルド色の水面など、変化を楽しむことも可能。また沿線では季節によって桜や菜の花が咲き、紅葉を楽しむこともできますし、球磨川下りやラフティングのボートなども景色に変化をつけてくれます。区間に20数個あるトンネルも、クラシカルな造りで開通した往時をしのばせるものです。

人吉は落ち着いた雰囲気に包まれた、「小京都」とも呼ばれる相良藩の城下町。駅から歩ける場所に国宝の青井阿蘇神社があるほか、肌がしっとり潤うとされる温泉も湧いています。人吉駅の近くには鉄道ミュージアム「MOZOKAステーション868」、そして旧人吉機関区にはSLが使う転車台や石造りの機関庫も。特に3月から11月、大正生まれの蒸気機関車8620形58654号機が牽引する快速「SL人吉」が走るときは、家族連れで賑わいます。

10月28日の肥薩線「いさぶろう1号」車内。上海から観光旅行に来ていたファミリーも思わぬ記念写真に笑顔(2018年10月28日、皆越和也撮影)。