鎌田(右)と上田の対決となった決勝戦。延長戦の末、5-0で上田が初優勝
鎌田(右)と上田の対決となった決勝戦。延長戦の末、5-0で上田が初優勝

10月27日(土)、28日(日)、東京・武蔵野の森総合スポーツプラザで『第50回オープントーナメント全日本空手道選手権大会』(同時開催:2018全日本女子空手道選手権大会)が開催された。

男子では、ベスト8に残った日本人選手が日本代表として、来年秋に開催される『第12回全世界空手道選手権大会』の出場権を得る。また、女子も『2019全世界女子空手道選手権大会』の選考対象となる重要な大会だ。

試合は、2016年に改定された『I.K.Oフルコンタクトルール』のもと、素手素足、体重無差別、直接打撃制で行なわれる。ただし、手で相手の顔面を攻撃することは反則。今大会から、場外線を両足が完全に超えた場合は反則となるルールが採用された。押されて場外に出された選手でも注意(反則)1が課されることに。また、注意を受けた際の礼が不十分な場合や着衣の乱れも同様に反則となる。(反則3回で減点1、さらにもう1回反則すると減点2になり、失格)

128名が出場した男子は、27日に1回戦と2回戦が行なわれ、28日にはベスト32から頂点を目指し、優勝するには1日で5試合を勝ち抜くことが必要だ。

開会式で、リングに並ぶ3回戦進出の選手に訓示する松井章奎館長(右)。「50年、100年後のために改革を続けていかなければいけない」
開会式で、リングに並ぶ3回戦進出の選手に訓示する松井章奎館長(右)。「50年、100年後のために改革を続けていかなければいけない」

好勝負が続いた3回戦・4回戦を経て、ベスト8に残ったのは日本人4名。いずれも昨年、一昨年の全日本大会でベスト4に入ったツワモノたちで「極真四強」と呼ばれている。昨年の王者・髙橋佑汰(25)、一昨年のチャンピオン鎌田翔平(31)に、荒田昇毅(31)、上田幹雄(23)というトップ中のトップ選手たちだ。

ベスト8の外国人選手はいずれもロシア人。準々決勝戦は4試合とも日本人vs.ロシア人の構図で戦うことに。A〜D、4つのブロックに分けられたトーナメント表で、それぞれのブロックの両端に配された強豪たちが順当に勝ち上がったことになった。

その準々決勝戦は、第1試合で鎌田がイエロメンコ(30)に蹴りで技あり2本を獲得。合わせ1本勝ちとし、幸先良いスタート。観客席も一気にテンションが上がる。

その盛り上がりの中、続いて登場したのは、この日、一番の大声援を受けていた荒田。ロシアの21歳の新鋭・グリアエフに5−0で優勢勝ちを収める。さらに続く上田もルジン(22)に優勢勝ち。しかし、最後に登場したチャンピオン・高橋は、「日本人キラーコチュネフ(28)に不覚を取ってしまった。

がっくりと肩を落とし、リングを降りた高橋。2年連続王座は叶わなかった。しばらくして、3階席の応援団の前に挨拶に現れたが、足取りは重く、その背中に無念があふれていた。3回戦を前に、リング外周に選手がずらりと並び行なう試割。種目は正拳、足刀、猿臂(肘打ち)、手刀の4種目。写真・中央が荒田、左は上田。
3回戦を前に、リング外周に選手がずらりと並び行なう試割。種目は正拳、足刀、猿臂(肘打ち)、手刀の4種目。写真・中央が荒田、左は上田。

鎌田VS荒田の準決勝戦第1試合。大声援に押されているはずの荒田が、注意4回を受けてしまい、まさかの失格負けに。場内には一瞬エアスポットに入ったような空気が流れた。鎌田は3年連続の決勝戦進出となった。

第2試合は、上田がコチュネフの蹴りを流して足を払い転倒させる。そして、残心(相手に向かって突きをするポーズ)を決め、技ありを奪う。これが決め手となって、上田が勝利。初めての決勝戦に臨むことになった。

50回の記念大会のチャンピオンを決める一戦は、鎌田VS上田。昨年、一昨年と準決勝で対戦し、いずれも鎌田が優勢勝ちを収めている対戦だ。

本戦(3分)では鎌田が迫力ある回し蹴りを放つなど攻勢に出て、上田が下がる展開。中盤から持ち直した上田が突きや蹴りをまとめて打ち込み反撃する。が、どちらも決定打が出ず、5人の審判の判定は全員が引き分け

場内の声援が最高潮になった延長戦(2分)。鎌田は距離を取ろうと動くが、リズムよく攻め込む上田。上田の勢いは止まらず、鎌田は下がる一方になり、攻め手を出すことができない。そしてタイムアップ。5−0の判定で上田がついに極真の頂点に立った。

表彰台の一番高いところに立った上田。全日本大会上位の常連でも、ここに立つまでには時間もかかった。今年は、極真以外の道場にも通い、また海外に武者修行に出るなど「自分改革」を目指した。その成果がついに実った。インタビューの間、何度も「多くの団体や人々のおかげ」と口にしていた。
表彰台の一番高いところに立った上田。全日本大会上位の常連でも、ここに立つまでには時間もかかった。今年は、極真以外の道場にも通い、また海外に武者修行に出るなど「自分改革」を目指した。その成果がついに実った。インタビューの間、何度も「多くの団体や人々のおかげ」と口にしていた。

上田は優勝インタビューに、「毎年優勝すると言って3位、4位で。この50回目の大会はお世話になっている人たちに恩返しできました」と答えた。

優勝を決めてすぐ、松井章奎館長の元に駆け寄ると、館長から握手で迎えられた上田。

「自分はそんなに強くない人間。この団体に育てられました。今日はうれしいというか、ホッとした」(上田)

来年の世界大会をチャンピオンとして迎えることになることについては「世界大会は優勝あるのみ。極真会館が一番強いと信じて、頑張っていきます」と、海外勢に3大会連続で奪われている王座奪還への抱負を語った。

佐藤七海(20)と永吉美優(20)の対戦となった全日本女子大会決勝戦は、本戦で1−0、延長戦で2−0と判定で決着がつかない好勝負。再延長戦でも、決定打が出ないものの、終始攻めた永吉が3−1で判定勝ちし、優勝した。

女子大会の決勝。優勝した永吉(左)の蹴りが、佐藤(右)の顔面を襲う。
女子大会の決勝。優勝した永吉(左)の蹴りが、佐藤(右)の顔面を襲う。

取材・文/山本イチロー 撮影/五十嵐和博

全日本空手道選手権大会で初優勝した上田幹雄(左)