将来あなたの入るお墓はあるだろうか。実は近年、墓地の墓を撤去する墓じまい(改葬)が増えている。厚生労働省によれば、ここ3〜4年で墓じまいは増加し、2016年時点では9万7千件を超えた。この原因は主に、管理者や負担者の高齢化である。一方で、埋葬の観念が多様化していることも挙げられる。そこで、今回は墓じまいを行うとすれば、メリット・デメリットはどこにあるのか、さらにお墓に代わる未来のサービスについて紹介しよう。

■墓じまいのメリットは維持費用? 一番は今後の管理

お墓があれば、定期的に手入れをする必要があり、また誰かに引き継いでもらわなければならない。お墓が墓石という形で存在する限り、この種の問題は尽きない。心に残る家族葬の葬儀アドバイザーが挙げる墓じまいのメリットには、こうしたお墓の維持管理からの解放がある。

「墓じまいをすれば、今後一切の管理が不要になるという点は、大きな魅力の一つです。ただ、お墓から取り出した遺骨をどうするかという問題もあります。遺骨を手元に残す選択肢もありますが、お墓の管理問題と併せて考えるならば、遺骨を永代供養してもらうのがよいでしょう。他にも、散骨や樹木葬といった方法もあります」

墓じまいはお墓の管理から逃げることではなく、次世代に同じ負担を強いることや先送りされる墓じまいの問題に向き合う場面である。それだけに遺骨の問題は蔑ろにはできない。

■墓じまいのデメリットは幾重にも重なる、手間と時間とお金

では、墓じまいで覚えておくべきデメリットはなにか。葬儀アドバイザーは墓じまいの手順に沿いながら、各所で要する手間と時間の問題について言及している。

「墓じまいは、(1)合意・連絡(2)行政手続き(3)実行の3ステップで進行します。まず(1)の親族間の合意・管理者への連絡では、後のトラブルとならないようにどこまでの親戚と相談するかや、お寺から離檀料を請求されることに注意しましょう。特に離檀料は、5〜20万円と法事一回分のお布施を包むのが通例ですが、中には何百万円という離檀料を請求するお寺もあります。消費者契約の問題でもあるので、相談できる弁護士を探しておきましょう。次に、(2)の墓じまいに必要な申請を行います。そのためには今の墓地から納骨証明書を、永代供養先から受入証明書を交付してもらいます。散骨などを行う場合には対応が異なるため、各市町村窓口で聞いてみるとよいでしょう。これらは、非常に時間の読めない手続きです。余裕を持って申請するようにしましょう。最後、(3)の墓石撤去では魂抜き(閉眼供養)を行ってから撤去工事を行います。他の墓石を傷つけないように、後になって管理者との間でトラブルが起こらないように、工事完了後に更地になっていることを最後に確認しましょう」

整理すると、既存のやり方を変えることに周りが、大きく抵抗する可能性があるので、それを説き伏せ、事を穏便に進めるには余裕を持った時間と惜しまない手間が必要である。こうしたデメリットと、それでもお墓問題から解放されるというメリットをどう天秤にかけるかが問題である。

■未来の墓参り 仮想墓 VRお墓

最近ではアクセスのしやすさから納骨堂を選ぶ人も増えてきた。一方で実は10年以上前から、こうしたお墓のアクセスや管理問題に一つの打開策を打ってきたサービスがあった。それが「仮想墓・ネット墓」であり、最近ではそれは「VRお墓」へと進化しているという。この未来感漂うお墓について、アドバイザーに詳しく紹介していただいた。

「仮想墓では、自分の選んだ墓石の画像に、故人の戒名などを埋め込み、線香やお花も画像で供えることができます。その特徴はデータであるが故に、故人の生前の音声や動画なども登録してお墓参りに利用できる点にあります。こうした仮想墓は、永代供養を行いお墓がない方や、散骨などで遺骨が手元にない方のニーズを満たす形で生まれました。もちろん、お墓はすでにあるがなかなかお墓参りに行けない方のために、墓地を管理するお寺自身が仮想墓を運営しているケースもあります。気になる費用面については、初回に登録料が発生しますが1万円未満、その後の月々の管理費は数千円程度と低く抑えることができます」

まだまだネットだけでお墓参りを済ませるということには抵抗感があるかもしれない。しかし、忙しくてなかなかお墓参りにいけない方や、お墓が遠方にあってお墓参りするだけでも一苦労する方、高齢者の方には便利になりそうだ。さらに去年、先立って香港で開発された「VR墓参り」について、アドバイザーは紹介している。

「去年の11月香港で、VR技術を用いたお墓参りソフトが発表されました。ヴァーチャル空間にお墓を設置できるという基本的なコンセプトはこれまでの仮想墓と変わりませんが、一番の特徴は、その空間内を自由に移動できることです。手を動かしながら線香やお花を供えたり、お墓の手入れをすることができます。画面の向こうの仮想墓から、ヘッドセットをつけることでよりリアルに近いお墓参りを自宅で実現できる未来もそう遠くないかもしれません」

これらの近未来サービスは、お墓がまだ残る現代よりも、これから墓じまいの数が増え、またお墓を管理する高齢者の数が増えていくにつれて、アクセスや管理面からニーズは高まっていくだろう。

■手間と時間がかかるからこそ、今から考えよう!

ここまで、増える墓じまいのメリット・デメリットと、それに代わるだろう近未来のお墓参りについて紹介した。現段階では、まだ墓じまいのデメリットのほうが大きく見える。しかし、墓じまいの件数がこれからさらに増えていき、自分も歳を重ねることで触れる機会が多くなることは確かである。今から墓じまいについて考え、早めの準備を心がけることが、いざというときの墓じまいをトラブル無く行う手段ではないだろうか。


専門家プロフィール:心に残る家族葬 葬儀アドバイザー
故人の家族と生前に親しかった方だけで行う家族葬こそが、故人との最後の時間を大切に
過ごしたいという方に向いていると考え、従来の葬儀とは一線を画した、追加費用のかか
らない格安な家族葬を全国で執り行っている。

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