10月27日に放送された『ドロ刑 ─警視庁捜査三課─』日本テレビ系)の第3話。第2話のレビューで「このドラマは斑目の成長物語」と書いたが、その要素がドンドン顕著になっていく。

初回とは見違えて成長の中島健人
仕事の不満を爆発させる斑目勉(中島健人)。憂さ晴らしにと煙鴉(遠藤憲一)から渡されたクーポン券を持ってゲーセンを訪れた斑目は、対戦ゲームで対決した男とゲームの話で意気投合した。
順平 順平です。
斑目 えっと……、神北勉です。

初対面の人間に対し、とっさに偽名を使った斑目。刑事の勘が働いた? 初回、煙鴉という部外者へ守秘義務お構いなしに情報をペラペラ喋っていた斑目も意識が変わってきたようだ。
斑目の対応は正解だった。順平の正体は、高度なハッキング技術で電子キーの金庫を破る窃盗団のメンバー。金庫の暗号解析アプリを開発する河原順平(寛一郎)だった。順平から「うちの会社手伝わない?」と誘われた斑目。煙鴉は“潜入捜査”で手柄を上げろと斑目をけしかけた。

斑目は未熟だ。彼の短所は優しすぎるところ。意気投合した順平を欺いていることに後ろめたさがある。
斑目 どうして誘ってくれたの? 知り合ったばっかなのに。
順平 同じ目してたから、昔の僕と。

同じようなタイプだと思ってくれているのに、実は身分を隠した警察官の自分。仕事と割り切れない斑目は何とも言えない顔になる。

金庫破りの当日がやってきた。即ち、潜入捜査の当日ということ。結果、犯行中に斑目は窃盗団のカマかけに引っかかり、順平共々金庫の中に閉じ込められた。密閉された金庫内で呼吸できるのはあと4時間だ。命のタイムリミットが迫る中、2人が行ったこととは……
「とりあえずさ、ちょっと話そっか!」(斑目)
学生時代はひどいいじめに遭い、死んだとしても泣いてくれる者がいない順平を相手に、好きなゲームについて語り合うことを選んだ斑目。死の間際でも、そんな風に喋り合える友だちが一人でもいたら人生は最高。斑目の短所は優しすぎるところだ。

結果、閉じ込められた斑目と順平は13係の同僚らの奮闘によって助け出された。
「仲間いたんだ、君」(順平)
第2話で「俺、チームプレーとか大っ嫌いなんですよ!」とこぼしていた斑目にも、いつしか仲間ができていた。

13係は順平に手錠をかけようとする。金塊をカバンに入れようとしていた現場は斑目が目撃しているから、順平には窃盗罪が成立する。
「俺! 見てません。その前に仲間に頭殴られて、本当見てないんです。それ(金庫を開けたの)も別の仲間です。彼は、ただ金庫のキーを破るアプリを作っただけじゃないでしょうか」(斑目)

決して悪人ではない順平も、自分を思う仲間がいないがために悪事に手を染めてしまった。だから、斑目はギリギリの状況でも順平の仲間でいようとした。
大きな罪に問われずすぐ釈放された順平は犯罪の詳細を示すメールを匿名で警視庁に送付、窃盗団は壊滅した。斑目との友情を契機に、悪事から足を洗って順平は前を向くことができた。

煙鴉が斑目を促す形で始まった今回の案件。斑目の優しさが刑事として短所になりかねないことを見抜き、課題を与えている。結果、優しさが事件解決の決めてとなった。毎回のように、煙鴉は斑目の能力を引き出している。

追い詰められる遠藤憲一がもう一つの軸
第3話は、“皇子山回”でもあった。13係の皇子山隆俊(中村倫也)が煙鴉の正体に気付き始めている。
「フリーのジャーナリストがそんなに暇だとは思えないなあ」(皇子山)
皇子山の自宅には、煙鴉に関する多量の資料があった。

斑目が金庫に閉じ込められた時、皇子山が頼ったのは煙鴉だった。
煙鴉 俺にその金庫が開けられると?
皇子山 さあ。俺が知ってるのは、あと2時間で金庫が開かなければ斑目が死ぬ。そして、あなたはあらゆる犯罪に精通したジャーナリスト。それだけです。

煙鴉が斑目を大事に思っていると、皇子山は見抜いている。これだけ疑われているのに金庫破りを行おうとする煙鴉。これは、皇子山によるカマかけだ。金庫破りに成功したならば、この男はただのジャーナリストではない。斑目救出と共に煙鴉逮捕も行ってしまおうと皇子山は企んでいる。

このカマかけは機転ですり抜けた煙鴉だったが、皇子山からのマークはより激しいものになるはずだ。煙鴉に追い込みをかける皇子山。この関係性も、次週からの大きな筋になる。

そういえば、バーで出くわした煙鴉と皇子山はこんな会話を交わしていた。
皇子山 奴(斑目)とつるんで何のメリットがあるんです?
煙鴉 メリットがなきゃ付き合わないんですか?
皇子山 他に理由があると思えない。
煙鴉 あいつのことがよく見えてないんじゃないですかね、あなたには。

なぜ、皇子山はここまで煙鴉に固執するのか。なぜ、煙鴉はここまで斑目に献身的なのか。それらが徐々に明かされていく次回以降こそが、このドラマの佳境だ。
(寺西ジャジューカ)

『ドロ刑 ─警視庁捜査三課─』
原作:福田秀「ドロ刑」(集英社週刊ヤングジャンプ」連載)
脚本:林宏司
主題歌:Sexy Zone「カラクリだらけのテンダネス」(ポニーキャニオン
音楽:木村秀彬
演出:大谷太郎、中島悟、高橋朋広
チーフプロデューサー:池田健司
プロデューサー:能勢荘志、次屋尚、関川友理
制作協力:The icon
製作著作:日本テレビ
※各話、放送後にHuluにて配信中

ドロ刑(ヤングジャンプコミックス)1巻/集英社