職場でセクハラが起きた時、主な相談先の一つが人事部だ。どうしたらセクハラが無くなるのか、人事部の担当者も日々悩んでいる。

セクハラ訴訟が報じられた瞬間に、セクハラの会社というイメージになります。それもあり、女性が人事部にセクハラ被害を伝えた段階で、問題は危機的なレベルだと受け止めます」。

こう話すのは、社内のセクハラを担当していた人事担当者。「人事はリスク管理を常にやる仕事ですが、相談が持ち込まれた時点で、単なるリスクと呼べる状況を超えてるんです。実際に被害が出ているわけですから」。社内のセクハラにどう対応していたのか、話をきいた。

人事部「またあの人か」

人事部歴10年のタケシさん(30代、仮名)は、かつて人材会社でセクハラ事案を担当していた。タケシさんの元には「あの上司がしつこいんで、どうにかして欲しい」「メールくるのがめっちゃうざい」といった相談が多く寄せられていた。

「男女トラブルは多くありました。セクハラについては、しょっちゅうやる人、酔っ払ってやる人、全くやらない人の3種類でした。やるのはもう社内でも決まった人で、事案が上がってくる度に人事部では『またあの人か』となっていましたね。

女性を食事に誘って一度断られたら、もうそれ以上言わないですよね。普通は察するところですが、なぜかしつこい。鈍感なのか分かりませんが、どうして相手の気持ちが分からないのかと思っていました」(タケシさん)

結局指導したものの、セクハラをしたという噂はすぐに社内に広まる。「あの人気持ち悪い」「あの人のいるところ嫌です」「気持ち悪い」、女性社員からそんな声が多く寄せられ、最終的に別の部署に異動させたこともあるという。

会社としてもリスク

男女雇用機会均等法11条は、セクハラの定義を「職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的言動により当該労働者の就業環境が害される事」と定める。

セクハラは、この「性的な言動」をめぐる加害者側の勝手な理屈が暴走することが多い。

食品会社で人事部にいたミカさん(20代、仮名)は、セクハラを繰り返す営業部長の扱いに悩まされた。仕事の成績は良いものの、お酒が入ると体を触ったり女性社員を口説いたりする常習犯。しかし、人事部が何度も注意をしても、改善されなかった。

「認識してなかった」「言われてやっとわかった」「コミュニケーションの一種だと思っていた」。営業部長から事情を聞き取ると、セクハラを悪いことだと認識せず、自分のしたことを軽んじていた。出勤停止の懲戒処分を行い、始末書を提出させたところ、内容はネット上のテンプレートを「コピペ」したものだった。

ミカさんは「何度もセクハラを繰り返している人を役職につけていると、会社として示しがつきません。『あんな人をあのポジションにおき続けているなんて』と社員の不信感につながりますから」とあきれ顔だ。

自分勝手にストーリーを展開

なぜ、こうしたすれ違いが起きるのだろうか。東京都職員として労働相談に携わり、長年セクハラ問題に取り組んできた金子雅臣さん(一般社団法人・職場のハラスメント研究所代表)は「セクハラ加害者の中には、相手の言ったことを主観的に受け止め、自分勝手にストーリーを展開させていく人がいる」と話す。

「こうした人は、社交辞令に対して『相手は俺のことを気にしている』『誘わないと失礼だ』と捉えがち。セクハラだととがめられると、こうした自分勝手な理屈では説明がつかないため、『合意があると思った』といった情緒的な言い訳に終始するんです」

また、「家庭でのはけ口を外で満たそうとするためにセクハラが生まれる」とも指摘する。

役職がついて立場が上になると、部下は敬語を使って敬う。「緩やかな力関係」によって、優位性が生まれる。部下は前のめりな姿勢に戸惑うものの、邪険にできず付き合わざるを得ない。それが「相手は拒んでいないから、やってもいいんだ」という意識を加速させていくとみている。

今も企業から「セクハラで困っている」といった相談を受けるが、紐解いてみると、会社や業界として女性が少ないという構造的な問題が背景にあることが多いと感じている。

「女性の管理職が増えれば、職場の中での力関係も変わってくる。日本は圧倒的に遅れています。そこが変わらない限り、セクハラ問題で辞任した福田淳一元財務次官のような問題が今後も起きるでしょう」

弁護士ドットコムニュース

人事が見たセクハラ 常習犯は「始末書」をコピペ、「コミュニケーション」と悪びれず