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電通と米VCが展開するスポーツスタートアップ支援プログラムSPORTS TECH TOKYO」が始動、スポーツXテックの盛り上がりに期待

 「スポーツで日本が盛り上がる”モメンタム”にある」――2018年10月31日ハロウィーンの夜、都内でスポーツを軸としたスタートアップ支援プログラムSPORTS TECH TOKYO」の説明会が開催された。会場には、同プログラムの詳細を聞くために、スタートアップ、元スポーツ選手、事業会社、学生など約330人が詰めかけた。

 「SPORTS TECH TOKYO」は、電通、そして米サンフランシスコを拠点とする投資会社Scrum Venturesスクラムベンチャーズ)が10月初めに発表したプログラム。世界からベンチャー、スタートアップ企業を募り、スポーツビジネスの創出のため、日・米でメンタリング、実証実験環境やビジネス機会の提供といった支援を受けられるというもので、すでに募集は始まっている。

 この日はプログラムの説明会及び交流会として、プログラムオーナーの電通 CDC Future Business Tech Team部長 事業開発ディレクターの中嶋文彦氏とScrum Venturesの創業者でゼネラルパートナーを務める宮田拓弥氏が概要を説明した。

 中嶋氏は背景として、世界的に高まるスポーツ分野の投資トレンドを挙げる。スポーツテックへのベンチャー投資は2010年から2015年の間に投資規模が3倍以上で増えており、日本でも、2015年に5兆5000億円だったスポーツ市場規模を、2025年には約3倍の15兆2000億円規模にさせる目標を政府が掲げている。

 スポーツ産業はスポーツコンテンツを中心に、チケット、スポーツ用品、施設、スポンサー、映像制作などのこれまでの市場範囲に加えて、AR/VR、データ/AI活用、IoT/ウェラブル、フィンテックなどのIT技術、さらには医療やヘルスケア、観光などの他の産業との交わりも予想されている。

 「スポーツ産業はこれまでの概念にとらわれず、スポーツで稼ぎ、その収益をスポーツに還元するシステムを実現する――これを国として行なっていく中で、我々もスポーツの発展に貢献し、様々な人が参画するエコシステムを構築したい」と中嶋氏は願いを表した。

 特にフォーカスしているのはIT技術で、スポーツの「する」、「みる」、「支える」の3つが募集テーマだ。

 「する」では、プロだけでなくアマチュアを含めて選手のコンディションやパフォーマンスの改善につながるようなツールアプリシステムデバイスなどが考えられるという。「みる」では、スポーツの視聴体験を高めるXR/VRやエンゲージツールなどを例に挙げた。「支える」では、2020年商用化が見込まれる5Gの広帯域、高速、低遅延を活用するようなスタジアムのソリューションや決済ソリューション、さらにはヘルスケアやエンターテイメント領域にも広がるようなものも歓迎のようだ。

 募集期間は2019年1月末まで、その中から約150社の”パーティパント”を選出する。公式サイトには、”応募フォームの内容、プロダクトのデモ動画(必須ではない)を精査して書類審査後、通過した人は面接を数回受ける”とある。

 パーティパントは招待制のイベントWebセミナーを受講でき、プロダクトを高めてビジネス化を進める。その中からファイナリストとして選ばれた約15社は、コアプログラムとして3ヶ月の間、日・米でのアクセラレーションプログラムに参加できる。ここでメンターシッププログラムなどを通じてアイディアを磨き、実証・実装に繋げていくという。

 プログラムスケジュールとしては、前半(2019年中盤まで)の「事業開発ラウンド」と、後半(2019年末まで)の「活性化ラウンド」の大きく二つのフェーズで進める。

 前半は3月に予定しているキックオフ、その後のマッチング、メンタリングと進め、7月にサンフランシスコで開催予定予定のデモディに向けた準備を進める。

 メンターは100人ほどがそろう予定で、この日はすでに決定しているメンターがスライドで紹介した。その中には、NBAバスケットボールチームゴールデンステート・ウォリアーズのデジタルの取り組みを率いるDaniel Brusilovsky氏、CVCであるComcast Venturesの投資家であるKai Bond氏、Product Huntの創業者Ryan Hoover氏など、「スポーツ、技術、投資家と様々なメンターで盛り上げていく」と宮田氏は述べる。

 デモディの後は、後半の活性化ラウンドに入る。このアクセラレーションプログラムの大きな特徴となる部分で、「デモディに終わらない」(中嶋氏)という言葉通り、プロダクトやサービスに合わせた実証実験の場の提供、投資に限らない様々なビジネス機会を提供する。

 スポンサーとして、すでにサッカーベルギー一部リーグのシント=トロイデン、FC今治などのスポーツチーム、大学、メディアなど20社がすでに参加しており、実証フェーズでの参画が期待される。電通自身も電通ベンチャーズなどの投資部門、テック部門などが支援する予定だという。プレゼンテーション機会が提供されるというスポーツアドバイザリーボードについては、国内外のスポーツ団体、チームなどが就任の予定だという。同時に、秋開催予定のスポーツテック東京など大規模カンファレンスや展示会での露出も考えているとのことだ。

 これらを経て、プログラム2019年末に終了を予定している。

 中嶋氏はプログラムの狙いとして、「SPORTS TECH TOKYOという名の下で、圧倒的なビジネス機会を作っていきたい」「様々なパートナーの方々の参画を元に、ワールドアクセラレーションと同時に、オープンなイノベーションプログラムを展開したい」と語った。投資家の立場から宮田氏は、「日本のビジネスチャンスと米国を繋げるのは簡単ではない」としながらも、後半のスペシャルセッションでは「スポーツは共通言語。(グローバル展開に)高い可能性を感じている」と述べた。

テクノロジーを必要としているスポーツの現場

 スペシャルセッションでは、中嶋氏と宮田氏に加え、元サッカー日本代表監督で現在FC今治の代表取締役会長兼オーナー岡田武史氏、インターネットスポーツメディアスポーツブル(スポブル)」を展開する運動通信社で代表取締役社長を務める黒飛功二朗氏、『統計学が最強の学問である』著者でJリーグのアドバイザーも務める西内啓氏が登場して、現在感じている課題やデータをはじめとしたテクノロジー活用について語った。

 黒飛氏は、アマチュアスポーツの配信について「全試合を配信するにはテクノロジーが必要」、「自社だけで解決は不可能」と技術への期待を語った。またスポーツ業界は「教育の文脈が強い」とし、「経済を回していく発想が必要」と強調した。

 スポーツビジネスについて岡田氏は、「日本発のアイディアが必要」と持論を述べた。週末に商店が閉まり「やることがない」ドイツなどを例に挙げながら、「日本は週末にやることがたくさんある。その中からどうやってスポーツを選んでもらうか」と視点を提起する。FC今治は”吉本興業マッチデー”などの取り組みを進めており、「サッカーを知らない人がきても、チームが負けても楽しかったと言って帰ってもらえる」仕組みを試みているという。

 西内氏は技術トレンドとして画像認識と深層学習などを挙げながら、「選手やコミュニティに対する感情的な思い入れが大切になってくるのではないか」と述べた。

電通 世界からベンチャーを集め、スポーツビジネス創出へ