ピーリング洗顔料はドラッグストアでも販売されており、ピーリングという言葉は一般的にもなじみがあると思います。 ケミカルピーリングとは薬剤を用いて表皮を剥がす治療のことで医療機関にて受けることができます。ケミカルピーリングの効果や治療の頻度、気になる料金について詳しく説明していきます。
ケミカルピーリングってどんな治療
ケミカルピーリングは、薬剤を皮膚に塗って皮膚をはがすことで、傷ついた皮膚が再生される過程の現象や効果を利用して行われる治療法です。
ケミカルピーリングに用いられる薬剤は、グリコール酸、サリチル酸(サリチル酸エタノール・サリチル酸マクロゴール)、トリクロロ酢酸(TCA)、乳酸、ベーカーゴードン液、フェノールがありますが、現在、一般的に使われているのは、グリコール酸、サリチル酸、乳酸です。
皮膚は表面から順に表皮の角層、顆粒層、有棘層、基底層、表皮基底膜、真皮の乳頭層、乳頭下層、網状層という構造になっています。ケミカルピーリングは皮膚の層のどこまではがすか(剥離深度)によって分類でき、一番表面の角層のみはがす再浅層ピーリング、表皮顆粒層から基底層までの間まではがす浅層ピーリング、真皮乳頭層までをはがす中間(深)層ピーリング、網状層まではがす深層ピーリングに分けられます。(表1)
剥離深達レベル | 剥離深度による分類名称 | 組織学的剥離の深さ |
1 | 再浅層ピーリング | 角層 |
2 | 浅層ピーリング | 表皮顆粒層から基底層の間 |
3 | 中間(深)層ピーリング | 表皮と真皮乳頭層の一部から全部 |
4 | 深層ピーリング | 表皮と真皮乳頭層および網状層に及ぶ深さ |
表1 ケミカルピーリングの剥離深度による分類(日本皮膚科学会ケミカルピーリングガイドラインより)
剥離深度は薬剤の種類、薬剤の濃度、pH、施術時間、施術後のケア、部位、皮膚の状態や湿度・温度などにも左右されます。
剥離深度ごとに使用される薬剤は、再浅層ピーリング・浅層ピーリングはグリコール酸・乳酸・サリチル酸・トリクロロ酢酸が用いられます。中間(深)層ピーリングでは、再浅層・浅層ピーリングで使用される薬剤が高濃度で用いられます。深層ピーリングではベーカーゴードン液やフェノールが用いられます。(表2)
剥離深達レベル | 使用薬材例 |
1.2 | ・20~35%α-ヒドロキシ酸(グリコール酸・乳酸)
・20~35%サリチル酸(エタノール基剤・マクロゴール基剤) ・10~20%トリクロロ酢酸(TCA) |
1.2.3 | ・50~70%グリコール酸
・35~50%TCA |
3.4 | ・ベーカーゴードン液
・フェノール(濃度 88%以上) |
表2 剥離深度と使用薬材例
出典:公益社団法人日本皮膚学会 日本皮膚科学会ケミカルピーリングガイドライン(改訂第 3 版)
ケミカルピーリングの効果
日本皮膚科学会ケミカルピーリングガイドライン(改訂第3版)では、ケミカルピーリングで治療の選択肢の一つとして推奨すると示されているのは、グリコール酸とサリチル酸(マクロゴール基剤)を使用した場合のざ瘡(ニキビ)、小さな日光性黒子(しみ)、小じわです。
ニキビは、ケミカルピーリングで表面の皮膚が剥がれることで、毛穴に詰まっている角質や皮脂、膿などが排出され、詰まっていた毛穴が開くのでニキビが改善し、できにくくなります。
凸凹が残るニキビ跡は高濃度のグリコール酸やトリクロロ酢酸を用いた剥離深達レベル2,3の治療例がありますが、有効性の根拠に乏しく、強い刺激感や長期間皮膚が剥がれ落ちるなどの副作用が表れやすいとされています。
色素沈着に関しては、ケミカルピーリングで表皮が剥がれることにより、皮膚の再生が促され、表皮内にある色素が角質とともに剥がれ落ちるので、しみやくすみが改善します。
また、表皮の角質が均一に剥がれ落ちるので肌のきめが整い、小じわが改善されます。
肝斑(かんぱん)、雀卵斑(じゃくらんはん:そばかす)、大きな日光性黒子、炎症後色素沈着については文献的に積極的に推奨されるレベルではないものの、有効性や改善が認められる報告もあります。
肝斑は紫外線やホルモンバランスで悪化しやいとされていますが、注意深く行えば、ケミカルピーリングによっても改善が期待できます。そばかすは遺伝が関与しており、紫外線にあたることによっていったん薄くなっても、再び出現することがあります。
しわは真皮まで及ぶ深いしわへの効果は認められておらず、表皮の浅いしわのみ有効とされています。
治療の頻度
治療の目的や皮膚の状態、使用する薬剤や薬剤の濃度によってケミカルピーリングの効果の表れ方は異なり、治療期間も変わってきます。
ニキビ治療では初めのうちは約2週間ごとに治療を行い、ニキビの状態によって治療間隔をあけていきます。「中等度のニキビで平均6回、重症のニキビで平均10回」の治療後に改善がみられると言われています(日本皮膚科学会より)。
しみの治療はほかの治療法と併用しながら数か月から数年かかるといわれています。くすみは約4~5回で改善がみられるとされています。(出典:公益社団法人 日本皮膚科学会 皮膚科Q&Aケミカルピーリング)
ケミカルピーリングの料金
ケミカルピーリングは保険診療外の治療のため自費診療となり、各施設によって料金も異なります。例として何件かの施設のケミカルピーリング料金を見比べてみましょう。(表3)
施設 | ケミカルピーリング料金 |
A皮膚科クリニック | 1回6,000円、イオン導入込8,000円 |
B皮膚科医院 | 1回4,320円 |
C美容皮膚科クリニック | 1回4,860円、5回23,080円、10回43,740円 |
D皮膚科クリニック | 1回14,040円 |
E皮膚科クリニック | 1回9,300円、イオン導入込11,300円 |
表3 ケミカルピーリング料金比較
日本皮膚科学会ケミカルピーリングガイドライン(改訂第 3 版)では、ケミカルピーリングは「皮膚科診療技術を十分に修得した皮膚科専門医ないしそれと同等の技術・知識を有する医師の十分な管理下に行われるべき行為である.」(出典:公益社団法人日本皮膚学会 日本皮膚科学会ケミカルピーリングガイドライン(改訂第 3 版))とあり、主に皮膚科で受けることができます。
施設によって料金はまちまちであり、使用している薬剤やケミカルピーリングの施術で行われるケアの内容なども異なります。
ケミカルピーリングの注意点
ケミカルピーリングは表面の皮膚を剥がすため注意が必要な点もあります。治療中は皮膚への刺激感があり、治療後には皮膚の赤みや乾燥などがみられることもあります。
ときには、水ぶくれや傷、かさぶたなどができることもあります。皮膚の角質が傷ついていると深く皮膚が剥がれることがあり、治療前日の顔そりやスクラブ洗顔、パックなどは避けなければなりません。傷跡が残りやすい人や病気の治療中の人、妊娠中・授乳中の人など、皮膚が敏感で傷つきやすくなっている状態の人は医師へ事前に相談しましょう。
また、ケミカルピーリングの後は角質層が剥がれることで、皮膚に紫外線が通りやすくなるので、毎日日焼け止めによるケアが必要です。
まとめ
ケミカルピーリングはニキビやしみ、小じわなどに悩む人にとっては魅力的な治療ですが、皮膚の表面を故意に剥がす治療であり、使用薬剤や施術内容も異なるので、皮膚の敏感な方などは治療前に医師と十分に相談することが大切です。国民生活センターには初回に高額な契約をさせられ、施術を受けてないにもかかわらず解約できないトラブルも報告されています。自費診療であるがゆえ、慎重に自分の納得する治療施設を選択しましょう。
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