#12

ドライブイン七輿
ドライブイン

群馬県/藤岡市
住所:群馬県藤岡市上落合853
電話:0274-23-0951
休:日曜日


ドラマも何もなさそうな場所だが
ハンバーグサンドが美味しいからまた来よう


僕が寂寥感の虜であることは本連載でも何度か述べた。機会あれば存分に寂寥感を浴びるべく、地方の街々を訪ねる。頑張れば日帰りできそうな出張でも、絶対にそのまま帰らない。敢えて、東京への帰路具合の良さそうな街に降り立ち一泊する。

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この日も前日、嬬恋のキャンプ場でのイベント視察の帰り、長野市に一泊したところだ。曲がりなりにも県庁所在地。いい具合に寂しく、いい具合に食べ飲みも充実していることだろう。信州となれば蕎麦か。信州名物をアテにビールをやり、〆に蕎麦。望むところだ。

が、案外寂しすぎた(笑)。有名な鮨店があるようだけど、さすがに海なし県で最初に鮨というのは無粋だ。駅周辺の繁華街には食べログでも高評価の、如何にも観光客相手の大箱居酒屋がある。こちらも観光客だ、ここでいいだろう。が、すでに満席だという。

どれくらいで空きますかとの問いに、今日は無理とのこと。なるほど、周辺には外観が酷似した店が連なっている。ここにあぶれた客を収納する機能を持っているのだろう。結局普段なら絶対選ばない類の「肉バル」的な店に馬刺しを求めて入ってみた。馬刺しも美味いし案外満足。うん、こういうのも悪くないな。旅独特の感じ。

しかし、肝心の寂寥感に食い足りなさが残った。では、と帰りに一部マニアには聖地と言われる場所に立ち寄った。ここは『ドライブイン七輿』。昔、ロードサイドによく見た自動販売機のみで構成されるドライブイン。高度経済成長期の遺物とも言える施設だ。

すでに何人か先客あり。しかしどこででも食べられそうな日清カップヌードルを食べている。そりゃ安定して美味しいだろうけど、なぜ!? ここはレトロ食品調理系自販機の聖地なのに。中にはもうメーカーが製造中止はおろか、メンテナンスもできない貴重な自販機があるらしい。ハンバーガーやホットサンドなどを提供する絶滅危惧種とも言えるあれだ。

オートスナックの最盛期、つまり肉が高価だった当時、グルテンバーガーという模造肉を用いたハンバーガーが展開されていた。しかしいまや安くて品質の良い輸入肉が手に入る時代。代用する必要なしということなのだろう、本物の肉が使われている。

しかも、ハンバーガーというより僕の好きな類のハンバーグサンドの趣がある。パティではなくハンバーグそれが大事。そしてなんともちょうどいいジャンクさ。コーラ自販機は瓶。これまた良し。オリジナルのチャーシュウ麺も人気らしい。

ちょうど麺の補充が行われていた。麺は最初から容器に入っている。あ、これテレビで見たかも。また自宅で調理する用の持ち帰りバージョンも販売中だ。

帰りに併設されたゲーセンをのぞいてみた。こちらで気の利いたレトロゲームが楽しめるなら言うことなしなのだが、顧客層の望む麻雀ゲームなどで構成されていて、食後の一興とはならなかった。なんとか保存会とかいう張り紙や、誰が入れ知恵したか不安になるオリジナルグッズの数々が若干邪魔だが(笑)ドライブイン自体はなんとも味わい深い空間だ。

ドキュメント72時間」の題材にもならなそうな、ドラマ何もない場所。しかし僕はまたここに来るのだろう。寂寥感ではなくハンバーグサンドが美味しいから。

梶原由景(かじわらよしかげ):幅広い業界にクライアントを持つクリエイティブ・コンサルティングファームLOWERCASE代表。デジタルメディアRing of Colour』などでオリジナルな情報を発信中。

※『デジモノステーション2018年12月号より抜粋。

text梶原由景
(d.365)
掲載:M-ON! Press