Credit: American Chemical Society
Point
・藍藻には光合成によって電流を生み出す性質がある
・藍藻を人工的な電極上で生存させるのは難しかったが、マッシュルームの傘の上で育てることに成功
マッシュルームグラフェンを含む導電インクで回路を印刷し、藍藻を螺旋状に印刷したところ発電に成功

スーパーで売られている普通のマッシュルーム。その表面に、藍藻による発電をグラフェンナノリボンで組織化させることで「発電するキノコ」を生み出すことに成功しました。論文は11月7日付の“Nano Letters”で発表されています。

発電キノコと聞くと『不思議の国のアリス』の世界に迷い込んだ気分になりますが、生物の複雑な仕組みを様々な分野の技術に応用しようとする試みは広く行われています。今回の研究は、生物的に強化されたキノコが、電気を生み出すというもの。藍藻をナノ素材で組織化して電流を集め、バイオとナノの両面の良いところを組み合わせて機能するシステムを生み出すことに成功したのです。

藍藻が発電能力を持つことは、生物工学界隈では有名です。しかし、藍藻を使って発電するためには避けて通れない問題がありました。人工的な生物互換材料の表面では藍藻が長く生き残れないのです。研究を行ったマヌ・マンナー氏らは、自然界でその表面に豊富な微生物環境を維持しているマッシュルームが、藍藻を生き延びさせるのに最適な栄養素・湿度・pH・温度を提供してくれるのではないかと考えました。

Credit: American Chemical Society

そこで、生きたマッシュルームの傘に藍藻を植え付けて育てたところ、数日間生き延びさせることができました。これは、シリコンや死んだマッシュルームの傘で育てた場合よりも長いものでした。つまり、人工的に共生状態を生み出すことに成功したのです。

次に、3Dプリンターを使ってマッシュルームの傘にグラフェンを含んだ「導電性のインク」を使って、電流を集めるための枝分かれした模様を印刷しました。これは、藍藻の細胞に突き刺した電極のような働きをします。

それから、藍藻を含む「バイオインク」を同じマッシュルームの傘に螺旋状に印刷。これによって、バイオインクと伝導性インクが交わる交点を複数つくることができます。この交わった点で、藍藻の外膜を介してグラフェンのナノリボンに電子が移動します。つまりキノコに光を当てると藍藻で光合成による発電が起き、ナノリボンで統合されることで電流が生まれるというわけです。

 

見た目もかわいい発電キノコ。無骨な電線を張り巡らせる代わりに、お庭でキノコを育てて発電なんていうのも粋かもしれません。

 

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via: EurekAlert!/ translated & text by SENPAI

 

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