この連載は、大阪で激増するインバウンド(訪日外国人観光客)の最前線を人気施設や旅行・観光に詳しい業界関係者などキーパーソンに話を伺うインタビュー企画。第12回は梅田スカイビルの広報を務める積水ハウス梅田オペレーション株式会社・高瀬奈々さんに、大阪のインバウンドの現状や、インバウンドが増えて変わったこと、今後の展望などを聞いた。

【写真を見る】スカイビルは外国人に大人気の観光スポット!空中庭園への入場列は年々増え続けている

――訪日外国人が増え始めたのはいつぐらいからですか?

2017年度の空中庭園展望台の年間入場者数は約150万人となりました。これは過去最高の数字ですが、2011年以降、日本人も含めて入場者数は増え続けている状況です。

2011年といえば、JR大阪駅大阪ステーションシティができた年。大阪ステーションシティができて北口から梅田スカイビルがきれいに見えるようになり、道も整備されてきて、そのあたりから伸び続けています。

そして2013年にはグランフロント大阪が開業しました。ほかにもいろいろな要因が重なって、訪日観光客が増えてきています。全体の75%くらいが外国の方ですね。

梅田スカイビルができてから25年経ちますが、「ずっと近くに住んでいて上がったことがなかったけど、外国人に人気らしいから上がってみた」という声もあり、インバウンドでの効果が日本人にも影響が出ているような状況です。

――どんなところを目的に来場されますか?

建築自体に興味があるという方が多いですね。まずは下から見上げて写真を撮影されます。そして、空中庭園に上がる時のシースルーのエスカレーターも特徴的なので、中でも写真を撮られますね。

もちろん、空中庭園からの景色が目的の方も多いです。大阪の街を屋外から360度のパノラマで見て、大阪に来たことを実感されているようです。高速道路が通っているビルがあったりと、大阪の特徴的な建物の構造や街並みは昼間の方がわかりやすいので、昼に来られる方もたくさんいます。

最近は夕陽の時間を狙って来られる方も多いです。「日本の夕陽百選」に選ばれていますしね。それと、大阪周遊パス持参で18:00までに来られると空中庭園展望台の入場が無料になるので、18:00前は大変混雑しています。

――どこの国の方が多く来られていますか?

韓国の方が一番多いですね。次は台湾、それから香港、中国。あとは意外にもスペインの方が多いですね。建築物に興味があるのだと思います。

今、増えているのはインドネシアマレーシア。ブラジルからもお越しいただいたり、世界各国から多くの方が訪れています。

――外国人向けのサービスなど、取り組みはされていますか?

今までなら日本語と英語だけで大丈夫かなと思っていたのですが、英語圏以外の方が増えているので、案内などを多言語化しています。

パンフレットは日本語以外に、韓国語と英語、中国語は簡体字と繁体字の両方で記載しています。そして何と言っても7月に施設をリニューアルしました。コンセプトは“雲の上に広がる未知なる世界”です。

白をベースにして、ゆっくりと過ごしてもらうために広いスペースを活かした空間づくりをしています。あと、梅田スカイビルの構造や完成するまでの様子などを展示したブースを新設しました。ビルができた当初の設計者の想いがそのまま反映されています。

これまでは展望台という位置づけで打ち出していましたが、世界の建築トップ20にも選ばれて世界中の方に来てもらえるようになり、建築的にユニークな構造自体が注目され始めたので、その辺りも打ち出そうと、このようなブースを設けました。

――世界の建築のトップ20に選ばれたのはいつですか?

2008年にイギリスの情報紙に掲載されました。ランキングではないのですが、サグラダファミリアやタージマハルなどの世界遺産級と並んで、日本の梅田スカイビルが選ばれたんです(笑)。

――これだけ人が増えていたら通訳の方も常駐していますか?

韓国語ができるスタッフが増えてきてはいます。だからといって外国語ができないと働けないという訳でもありません。開業当初から海外のお客さまが来ることを想定して国際的なイベントなどもやってきていたので、そんなにトラブルはありませんね。

――梅田スカイビル周辺の環境も変わってきていますか?

ビルの下の飲食店街(滝見小路)にも海外のお客さまが増えています。もともとは日本人のオフィスワーカーが中心だったのが、いろいろな国の方が来られるようになって、メニューの表記など対応を強化している店も増えています。ですが、まだまだ言葉が通じなくて困るという話も聞きます。

――今後の動きを教えていただけますか?

リニューアルしたばかりなのですが、今年の25周年を機に、梅田スカイビルのガイドツアー(別途料金必要)を始めました。外国の方にも対応できるように、英語と中国語の音声ガイドも用意しています。普段は入れなかった場所にも入れるツアーです。ビルを連結する関係者用の空中ブリッジにも入れます。実は、お客さまから空中ブリッジに行ってみたいというリクエストが多くて、関係者用の通路なので今までは入場できない裏の動線だったのですが、リクエストも多くてカッコいい写真も撮れるので、ツアーコースに組み込みました。

あと、地下にある機械室も案内しています。“マシン・ズー”という名前がつけられた機械室なのですが、それぞれの機械に、動物に例えられたニックネームがついていて、壁には実物大の動物が描かれてちょっとした動物園のような感じで機械室を楽しんでいただけるんです。ちゃんとカラーコーディネーターに依頼して色のバランスを見てもらっているなど、隠れたストーリーも説明しながらあっちこっち移動するので、ツアー全体で所要時間は1時間ですが、とても好評です。今は体験型が人気だと思うので、展望台だけ登って帰られる方が多かったなかで、ビル全体を楽しんでいただいて、より思い出を作っていただけたらという思いが込められています。これも7/2から受付が始まっています。当日受付もできるので、ぜひ参加して梅田スカイビル全体を楽しんでください。

※本企画は、情報誌「関西ウォーカー」2018年8/28発売号の大阪インバウンド特集「YOUは何しに大阪へ?」との連動企画です。(関西ウォーカー・横井哲也)

梅田スカイビルの広報を務める積水ハウス梅田オペレーション株式会社・高瀬奈々さん