iPhoneにわいせつな画像を送りつける「エアドロップ痴漢」の被害が急増している。手口は姑息で悪質だが、端末の設定を変えれば被害は防げる。ITジャーナリストの高橋暁子氏は「本名やSNSアカウントなどを知られる可能性もある。すぐに設定を変更してほしい」と警鐘を鳴らす――。

■iPhoneに突然送られてきたわいせつ画像

「……え?」

女子大生A子さんが大学に行くために電車に乗っていたところ、突然iPhoneに妙な画像が現れた。「◯◯が1枚の写真を共有しようとしています」という文章とともに、男性の卑猥な裸体写真が表示されたのだ。

パニックになって思わず、「受け入れる」「辞退」という選択肢から「辞退」を選んでしまったA子さん。画像は消してしまったので証拠も残らず、誰が送ったのかを確かめたり、駅員に訴えたりすることもできなかった。「誰が送ってきたんだろうと怖くなりました……」と語るA子さん。しばらく1人になるのが怖くなってしまったという。

これがいわゆる「エアドロップ痴漢」だ。

エアドロップAirDrop)とは、iPhoneiPadなどのアップル製品を使っている周囲の人同士が、無線で写真や動画を送受信できる機能だ。URL、連絡先、位置情報、アプリも共有できる。送受信にあたりLINEのIDやメールアドレスを交換する必要はない。

■本名を知られてしまう「エアドロップナンパ」

iPhoneユーザーなら、Wi‐Fiのネットワーク選択画面などで「◯◯のiPhone」という表示を見たことがあるだろう。ユニークな名前にしている人もいるが、そのまま本名を設定している人もよく見かける。

女子高生B子さんは、エアドロップ痴漢ならぬ「エアドロップナンパ」をされたという。すいているバスに乗っていたところ、いきなり知らない男が隣に座ってきた。「すいているのに」と不審に思ったとき、男に声をかけられた。

「B子ちゃんでしょ。△△女子高に通っているんだね」

学校名は制服でわかるが、何よりも名前を呼ばれたことに驚いて気が動転したB子さん。慌てて途中下車してしまい、困って親に電話をして迎えに来てもらったという。

「今ならわかるけれど、あれはエアドロップのせいだったんですね」。B子さんはそう話す。

■制服からSNSのアカウントまで特定できる

エアドロップは、Wi‐FiとBluetoothを使って最大で9~10メートル離れた距離にいる相手を表示する。混んでいる電車内では難しいが、あまり人がいないところであれば、iPhoneの持ち主について大体の見当をつけることもできる。

エアドロップの仕組みに詳しいIT業界の知人は、電車内でスマホを使おうとしたときに、本名らしき名前が表示されていたので気まぐれでネット検索したところ、女子高生SNSアカウントがすぐに出てきたという。

「車内でプロフィール写真と同じ制服を着ている子を探したらすぐに見つかったので、悪用する人がいれば怖いと思った」

このケースも、ナンパしようと思えば簡単にできただろう。

怖いのは、本名とSNSアカウントが眼の前にいる人に把握されてしまうということだ。MMD研究所がマカフィーと共同調査した「高校生大学生社会人20代・30代のSNS利用に関する意識調査」(2018年3月)によると、高校生の52.7%、大学生の44.5%はTwitterを実名利用していることが分かっている。

つまり年齢が若ければ若いほど実名登録に抵抗がない状態であり、エアドロップナンパが現実味を帯びてくる。

■ローティーン向けのアンケートでも被害が明らかに

最近、あるローティーン向け雑誌に協力したときのことだ。編集部に、中高生の読者を対象に「ネットスマホSNSで困ったことやトラブルがあったら教えてください」という内容でアンケートを集めてもらった。

数年前にも同様のアンケートをとったのだが、今年はひとつの変化があった。以前にはなかった「エアドロップ痴漢」という回答の増加だ。エアドロップ痴漢は今年になって明らかに増えているのだ。

エアドロップ痴漢では女性が狙われやすいようだが、“近くにいる”という条件ありきなので無作為に近い。その中で女子中高生や女子大学生に被害が目立つわけは、やはりiPhoneが10代に絶大な支持を得ているからだろう。リテラシーがあまり高くなく、警戒心の低いユーザーが多いことが被害を広げていると考えられる。実は簡単な設定変更をするだけで、被害に遭わずに済む。

■簡単な設定で被害は防げる

設定方法は以下の通りだ。iPhoneの設定から「一般」→「エアドロップ」と選択し、「受信しない」あるいは「連絡先のみ」を選んでおこう。「連絡先のみ」にした場合は、端末に連絡先が登録されている知人や友人とだけファイルのやり取りが可能となる。写真や動画の送受信時など、エアドロップ機能を使いたいときだけ受信する設定に変更してもいいだろう。

シェアする際には送る相手を選んで送る仕組みなので、相手は意図的に被害者の女性たちを選んで送ってきたことになる。つまり、名前が女性名だと狙われやすくなるのだ。そこで、設定から「一般」→「情報」→「名前」とタップして名前を変更し、性別がわからないようにしておくといいだろう。

本名の登録は、SNSアカウントを特定されるリスクも考えると絶対にやめるべきだ。またプロフィール写真には本人の顔写真は登録せず、個人が特定できない写真を登録するといい。

エアドロップ痴漢は設定を変えるだけで、簡単に防ぐことができる。今すぐ設定変更を行ったうえで、身近にいる人にもアドバイスしてあげてほしい。

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高橋暁子(たかはし・あきこ)
ITジャーナリスト
書籍、雑誌、Webメディアなどの記事の執筆、企業などのコンサルタント、講演、セミナーなどを手がける。SNSなどのウェブサービスや、情報リテラシー教育などについて詳しい。元小学校教員。『ソーシャルメディア中毒』(幻冬舎)など著作多数。『あさイチ』『ホンマでっか!?TV』などメディア出演多数。公式ブログ: http://akiakatsuki.hatenablog.com/

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※写真はイメージです(写真=iStock.com/PRImageFactory)