サイボウズが主催するイベント「サイボウズデイズ2018」が11月7日と8日、幕張メッセ千葉県千葉市)で開催された。8日に行われた基調講演「楽しいは正義」には、同社の青野慶久代表取締役社長、タレントの眞鍋かをりさん、慶応大学大学院の前野隆司教授が登壇し、幸せな働き方について語った。

育休を6年間も取れる、副業ができるなど働き方が自由なことで知られるサイボウズだが、元々は離職率が28%(2005年)にもなるブラックな会社だったという。青野社長は、人が辞めない会社にしたいと思い、社員の幸福を追求するようになった。

「社員に話を聞いてみると、『週3日しか働きたくない』『イタリアナポリで在宅勤務をしたい』と様々な希望が飛び出しました。そこで僕は『出社時間も働く場所も自由でいい。そうすれば全員が楽しく働ける』と思ったんです」

他の経営者からは、「それでは売り上げが出せず、かえって社員を不幸にしてしまう」と言われたそうだが、同社は順調に売上高を伸ばしている。離職率も約3.8%にまで低下した。

幸福学・前野教授「経営者がアホに見えるくらいがいい」

青野慶久社長

同社では、家族の介護が必要になり、地元の岡山で在宅勤務をするSEもいる。

「岡山にはオフィスがないので、仕方なく在宅勤務をしてもらうことになったのですが、岡山のお客さんがどんどん注文をくれるようになったんです。腕のいいSEが常駐しているんだから当然ですよね。そこで岡山でしか働けないのはむしろ強みになるんだと気づきました。今では社員に『なんで東京で働いているんだ。実家はどこなんだ』と聞いています」

同社は在宅勤務を含め、かなり自由な働き方が可能だが、どうやって組織としてのまとまりを生み出しているのだろうか。青野社長は「実は理念に沿って行動してほしいということについてはむちゃくちゃうるさいんですよ」と明かす。

「サイボウズには『チームワーク溢れる世界を創る』という理念があります。理念のために行動していないなと思ったら、徹底的にツッコミます。例えば、在宅勤務は体が辛い時でもチームに貢献するために使う制度なんです。体が辛い社員のための制度じゃない。自由だからこそ理念による縛りが重要になってくるんですね」

前野隆司教授

幸福学が専門の前野教授は、「幸せな会社にはそうした会社が多いです。細かいルールが多いとそれに囚われてしまうので、理念や社会にどう貢献するのかといったところがルールになっているのがいい」と応じた。

また、幸せな組織づくりのためには、社員が「やらされている」という感覚を抱かないことも重要だという。

「社長が社員を厳しく管理すると『やらされている』と感じてしまうので、『後は任せた』と言って社員の自発性に任せた方がいいんです。経営者がアホに見えるくらいがいい。皆がやりがいを持っている企業は不景気の時に強いんです。トップダウンの企業だと、業績が悪いときに社員がついてこないんですよ。社員が自発的に働いている企業なら、『皆でなんとかしよう』となるんです」

幸せな人はそうでない人に比べ、生産性は1.3倍、創造性は3倍にもなるという。企業が生産性を上げるためにも、個人の幸福度を上げるような組織づくりが必要だ。

眞鍋かをり「20代の頃は幸福度が低かった。やらされてる感があった」

眞鍋かをりさん

基調講演には、眞鍋かをりさんも登壇し、子育てや仕事について語った。眞鍋さんは2015年に人気ロックバンドTHE YELLOW MONKEYボーカル吉井和哉さんと結婚。現在は3歳の子どもを育てながら徐々に芸能活動に復帰している状態で、幸福度がとても高いという。

「環境を30歳の時に変えたのが幸福度につながっていると思います。アイドルとしてデビューして、20代の頃はたくさんお仕事をもらっていたのですが、当時は幸福度がとても低かったです。当時は、スケジュールも自由にならず、やらされてる感があったんです。働き詰めで健康もメンタルもボロボロでした。周囲の人に対して、ありがとうという気持ちもありませんでした。今はどのような仕事をしたいか、私の意向を尊重してもらえるし、幸福度がとても高いです」

出産直後は仕事をしていなかったものの、今は生活の4~5割を仕事に割いている。仕事と家庭のバランスに満足しており、夫の吉井和哉さんとの間にも齟齬がないという。

「私は育児は責任を持ってやりたいし、仕事もできる範囲でやりたいと思っています。夫には、育児・家事は楽しめる範囲でいいので、仕事をどんどんやってほしいと思っていた。たまたま私と夫の希望が合ったので良かったのですが、それが合わずに苦労しているご家族も多いかもしれません。夫には『イクメンでいてほしい』という女性もいれば、逆に『稼いできて』という女性もいて様々です」

青野社長の場合は、自身はできるだけ仕事に没頭したかったものの、妻と希望が合わなかったという。しかし結果的には、妻の希望に合わせ、3度の育児休暇を取得している。

「男性でも仕事に没頭したい人もいれば、育児家事もやりたいという人もいる。100家族いれば100通りのやり方があると思うんです。僕はできるだけ働きたいというタイプ。そこが妻とは合っていないんですね。妻には『私が結婚した時は、あなたは社長じゃなかった。私は社長夫人になるつもりだったわけじゃない。家事もやってほしいし、苗字も私に合わせてほしい』と言われました。相手の希望がわからないと困るけれど、言ってもらえれば、それをやれば喜んでもらえるのだからありがたいですね」

希望の働き方を実現するためには、家事や育児の負担についても希望を実現する必要がある。眞鍋さんは「夫婦ですり合わせることが大切だと思う」と話していた。