▽「一体、何を隠したいのかしら」そんな風に私がいぶかっていたのは金曜日、いやあ、前日のセッションワンダメトロポリターノのジムで実施、ピッチでトレニーングしたのはGKだけだったアトレティコなんですけどね。一晩明けたマハダオンダ(マドリッド近郊)の練習場にはグラウンド周りの金網に幕が張られており、外から様子が覗けないようになっていたと聞いた時のことでした(https://as.com/futbol/2018/11/09/videos/1541772028_009012.html?autoplay=1)。確かに昨季まではほとんどのセッションを敷地内のミニスタジアムで人目に触れず、やっていたシメオネ監督だけに、「上のグラウンドは芝が良くない、カンテラ(アトレティコB)やラージョ・マハオンダ(ミニスタジアムをホームにしている2部Bのチーム)が練習するから、ユースや女子の試合があるからと、まったく使えないんだ」と嘆くのもわかりますけどね。

▽そこで「自分たちには下のグランドしかないから、entendemos que tener un poco de privacidad también es bueno para nosotros/エンテンデモス・ケ・テネール・ウン・ポコ・デ・プリバシダッド・タンビエン・エス・ブエノ・パラ・ノソトロス(プライバシーが少しあった方がいいと思った)」(シメオネ監督)という理由により、マスコミやファンたちから見えなくする手段を講じたようですが、もしや最近の負傷禍で試合翌日など、ピッチに出ているトップチームの選手は4、5人だけ。あとはカンテラから徴用したヘルプメンバーという悲惨な状態を世間にさらして、ファンに不安を与えたくなかった?

▽ちなみにこのフェンスを幕で覆うという方式はスペインのルイス・エンリケ監督も就任後、9月の練習から採用していて、ラス・ロサス(マドリッド近郊)のサッカー協会施設のメイングランドもこれまで定番だった、谷を挟んだ道から撮影などができないようになってしまったんですが、どうにも昨今は世知辛い。来週木曜のネーションズリーグ最終戦、ファイナルフォー(準決勝)進出の懸かったクロアチア戦に向けて発表された招集リストでは待望のジョルディ・アルバ(バルサ)の復帰やCBエルモーソ(エスパニョール)、同ディエゴ・ジョレンテ(レアル・ソシエダ)、MFフォルナレス(ビジャレアル)、同ブライス・メンデス(セルタ)ら、馴染みでない顔もあって楽しみだったんですけどね。どうやらそれも合宿初日に1度だけある公開練習でしか見られないなんて、あまりに勿体ぶっているじゃないですか。

▽まあ、そのスペイン代表の話はまた来週にでもするとして、今はミッドウィークのCL4節のマドリッド勢の様子を伝えていくことにすると。まずは火曜の夜、ワンダメトロポリターノに向かった私でしたが、何せ3週間前にはジグナル・インドゥナ・パルクで4-0と大敗を喫したドルトムントが相手ですからね。ドイツから駆けつけた3000人以上のサポーターが、大音響で天井のスピーカーから聞こえてくるアトレティコのイムノ(クラブ歌)に負けじとばかりに声を張り上げている光景も圧巻でしたが、大丈夫。どうやらロドリも後で「Les hemos estudiado mejor/レス・エモス・エストゥディアドー・メホール(彼らをより良く研究した)」と言っていたように、この日のアトレティコは相手にカウンターのチャンスを作らせず。

▽それはどういうことかというと、単純に相手のホームでは52%もあったポゼッションを36%まで下げ、敵陣エリアを囲んで攻撃なんていう、不毛な状態になるのを避けただけなんでけどね。たまに彼らが上がる場合は速攻を心掛け、序盤から何度もコレアがシュートを撃っていたんですが、これは単なる威嚇に留まることに。それでも前半33分、サウールを起点にフィリペ・ルイスがエリア内に侵攻すると、今度は折り返しのパスをコレアがスルー。サウールがシュートしたボールがCBアカンジに当たってゴールを割り、先制点となってくれたから、どんなに大入りのスタンドが湧いたことか。

▽1-0で折り返しアトレティコハーフタイムにヒメネスがハムストリングのケガを再発させ、折からサビッチ、ゴディンが負傷でベンチ入りしていなかったため、カンテラーノ(アトレティコBの選手)のモンテーロが先日のコパ・デル・レイ32強対決サン・アントレウ戦1stレグに続き、CLデビューを果たすなんてこともあったんですけどね。そんな苦境も、この日は選手たちに「Teniamos claro que con el 1-0 debiamos seguir en la misma dinámica/テニアモス・クラーロ・ケ・コン・エル・ウノ・セロ・デビアモス・セギール・エン・ラ・ミスマ・ディナミカ(1-0でもボクらは同じ勢いで続けるべきと明確に理解していた)。危険な場所でボールを保持せず、敵陣でプレーしないといけないとね」(ロドリ)という強い意志があったのが幸い。

▽得意の一歩後退をせず、チャンスを伺って攻めたおかげで34分にはとうとう、カウンターからジェルソン、トマスと繋いで、最後はアクラフが後ろから追うのもものともせず、グリーズマンが2点目のゴールを決めてくれたから、もう安心。いやあ、今季はまだ全然、エンジンがかかっていなかった彼なんですけどね。シメオネ監督も「Cuando el esta encendido y practico para leer por donde hacer dano, el equipo lo hace muy bien/クアンドー・エル・エスタ・エンセンディードーイ・プラクティコ・パラ・レエール・ドンデ・アセール・ダーニョ、エル・エキポ・ロ・アセ・ムイ・ビエン(彼が燃えていて、どこで敵にダメージを与えられるか読める時、チームはとても上手くやる)」と褒めていたように、バロンドール賞の投票締め切り前、これがアピールできる最後の試合だったのも当人を発奮させることになったのかも。

▽おかげで2-0勝利とリベンジを果たしたアトレティコは得失点差があるため、2位のままではありますが、ドルトムントと勝ち点で並び、今月28日のモナコ戦の結果次第ではグループ突破が決まることに。うーん、それにしても気になるのはこの週末のアスレティック戦。というのもアトレティコの負傷禍は半端なものではなく、ドルトムント戦後のミックスゾーンではフランス人記者たちと談笑していたリュカまでが太ももの肉離れを起こしていたことが判明したから。ゴディンとジエゴ・コスタこそ、ようやく招集リストに戻って来ましたが、3人のCBに加え、コケ、レマルも欠場となると、土曜午後6時30分(日本時間翌午前2時30分)からのワンダではまた、カンテラーノの力を借りることになりそうですね。

▽そして翌水曜には近所のバル(スペイン喫茶店兼バー)でソラリ監督のCLデビューとなるビクトリア・プルゼニ戦を見たんですが、いやあ、とうとうレアル・マドリーgoleada(ゴレアダ/ゴールラッシュ)体質が発現したから、驚いたの何のって。ええ、サンティアゴ・ベルナベウでの対戦では2-1と辛勝していたせいもあったんですが、GKがケイロル・ナバスからクルトワに代わったぐらいで、同じ主力選手たちがこうまで豹変していい?

▽そう、序盤にはセルヒオ・ラモスがハベルにcodazo(コダソ/肘打ち)を見舞い、CLにはVAR(ビデオ審判)がないため、被害者が鼻血をダラダラ流していながらもレッドカードを免れるという、ヒヤリとしたシーンもあったんですけどね。前半20分にベンゼマが敵DFをかわしつつ、エリア内を進んで1点目を決めると、その3分後にはCKからカセミロのヘッドで2点目。37分にも今度はセバージョスのクロスをベイルがヘッドで繋ぎ、ベンゼマの頭で追加点が入ったかと思いきや、40分にも今度はレギロンのクロスをベンゼマアシストベイルがvolea(ボレア/ボレーシュート)で9月のCLローマ戦以来の得点だなんて、こんなにポンポン、ゴールが決まるマドリーを見るのは一体、いつ以来だったかと。

▽後半もベンゼマと交代したビニシウスがクロースに折り返すと、見事なvaselina(バセリーナ/ループシュート)で5点目が決まったマドリーでしたが、相手のレベルを考えると至極普通の0-5のスコアも今季は何故だか、得点効率が最悪で、格下のチームにも僅差で負けていましたからね。これまでロペテギ監督の下ではゴール枠に阻まれていたシュートが入るようになったというツキがソラリ監督のおかげとなれば、「Si sale bien las cosas, ?por que no darle la oportunidad a el?/シー・サレ・ビエン・ラス・コーサス、ポル・ケ・ノー・ダールレ・ラ・オポルトゥニダッド・ア・エル(上手くいっているんだったら、どうして彼にチャンスを与えちゃいけない?)」(カセミロ)と、選手たちが暫定監督の続投を望むのも当然だった?

▽この勝利でCLグループ首位に返り咲き、こちらも次のローマ戦で突破を決められそうなマドリーですが、就任から3連勝。しかも計11得点で失点0とあって、最終試験となる日曜午後8時45分(日本時間翌午前4時45分)からのセルタ戦にもソラリ監督は自信を持って挑めそうですが、気になるのは彼らも負傷者が多いこと。プルゼニ(チェコプラハから90キロの都市)遠征に参加しなかった選手のうち、カルバハルだけは金曜から全体練習に戻ったそうですが、マルセロ、バラン、マリアーノ、バジェホは各国代表戦週間後の復帰になりそうだとか。

▽まあ、両SB代役のオドリオソラとレギロンは立派に務めを果たしていますし、CL戦でカンテラーノ(RMカスティージャの選手)のCBハビ・サンチェスもデビューと元々、Bチームを率いていたソラリ監督ならではの強みで、若手を抜擢しながら、何となく上手くは回っているんですけどね。クラシコ(伝統の一戦、バルサ戦のこと)での大敗のせいで、首位の宿敵にすでに勝ち点7差をつけられているとあって、もうこの先、1試合も取りこぼしができないのはちょっと辛いところでしょう。

▽そして今週末のマドリッド弟分チームたちの予定も見ていくと、トップバッターは土曜午後4時15分から、コリセウム・アルフォンソ・ペレスバレンシア戦を迎えるヘタフェ。リーガで15位と低迷している相手は水曜にCLヤング・ボーイズ戦があり、いえ、この試合はメスタジャで3-1と快勝し、何とかグループ生き残りを果たしたんですけどね。スイス勢相手に2得点したサンティ・ミナは要注意としても、ボルダラス監督のチームには1週間、じっくり調整できたのがアドバンテージになるかと。前節は土壇場にホルヘ・モリーナのゴールでウエスカと引き分けたのも励みになりそうですしね。日本代表戦のため、里帰りを控えている柴崎岳選手にも出場の機会があるといいんですが。

▽一方、同じ土曜の遅い時間にジローナに臨むのがお隣さんのレガネスで現在、降格圏の18位にいる彼らは17位のアスレティックとはたったの勝ち点1差なんですが、今回は前節ブタルケで1-1と引き分けた兄貴分の援護射撃が当てにできる?ただ今季の彼らはまだアウェイ戦で1勝もしていないのが気掛かりですが、このところのプレーを見る限り、エン・ネシリやカリージョら、FW陣も当たってきましたしね。とにかく守備ミスを減らして、paron(パロン/リーガ停止期間)を気分良く迎えられる順位に上がれるといいですよね。

▽そしてマドリーと共に日曜試合になるのがラージョでこちらは午後6時30分から、エスタディオ・バジェカスでビジャレアルと対戦。何せ、前節は残り3分までバルサを追い詰めながら、むざむざ逆転されてしまった彼らですからね。その悔しさをバネにすれば、相手は木曜のヨーロッパリーグ、ラピド・ウィーン戦でスコアレスドロー、遠征の疲れもあるため、今季ホーム初勝利を掴むいい機会になるかと。19位の彼らはレガネスより勝ち点3下になるんですが、ビジャレアルも16位とはいえ、アスレティックと同じ勝ち点10のレベル。この辺りのチームにはまだ数試合で追い越せる可能性があるため、選手たちもきっと気合が入っているはずですよ。


【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。
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