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 「美食を極めると奇食に走る」といわれるらしい。いわゆるグルメを趣味にした人が、世界の「美味しいもの」をひと通り食べ尽くしてしまうと、さらなる刺激を求めて珍奇な食べ物に手を出すというわけだ。

 この説の真偽はさておき、一口に「珍しい食べ物」といっても、万人に受け入れられるタイプのものと、それになじみのある文化圏以外では受け入れられにくいものとがある。

 このうちの後者にあたる食べ物を集めた博物館が、スウェーデンにできた。その名も「嫌悪をもよおす食べ物博物館」だそうだ。

 といっても、期間限定で1月末までの開館である。

 これから展示の一部をご紹介するが、見た目からして受け入れがたい写真も含まれるので、ここから下を読むにあたっては各自で注意されたい。

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「嫌悪をもよおす食べ物博物館」

 博物館があるのは、スウェーデン最南部にあるマルメだ。ストックホルム、ヨーテボリに次いで3番目に大きな都市である。

 展示されている食べ物は、一部を除いては全て本物だ。臭いの強いものについては、医療用に使われるレベルの標本容器に封じられている。

 本物の展示物については、少なくとも二日に一度は新しいものと交換される。これには結構な費用がかかるので、3ヶ月間の期間限定なのだそうだ。

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ドリアンフルーツは美味だが、臭いが強烈なため、東南アジアの多くのホテルや交通機関では持ち込みを禁止されている
image credit: Disgusting Food Museum

 平日は夕方に1回、週末には正午と午後の2回、屋外で試食イベントが行われる。登場するのはシュールストレミング(塩漬けニシンの缶詰)、ハカール(サメを発酵させたアイスランドの食品)、ドリアンだ。

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「千年卵」、英語を直訳すると「世紀卵」とも呼ばれるピータン。アヒルやニワトリの卵を数ヶ月かけて発酵させる
image credit: Disgusting Food Museum

一部は本物が展示できない理由


 「本物」が展示されてない食べ物は、まず、珍しすぎて入手が困難なものだ。

 さらに、その食べ物を調達するにあたって、動物に苦痛を与えるものがある。例えば、世界三大珍味のひとつと言われる「フォアグラ」は、ガチョウにチューブで強制的に給餌し、肥大させた肝臓だ。「ネズミ酒」は、生まれたてのネズミを漬け込んで発酵させる酒である。

 博物館では、このような食べ物については、写真、またはプラスチックの模型が展示されている。

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ネズミ酒
image credit: Disgusting Food Museum

展示数世界第2位はアメリカ


 さて、博物館の展示物は80点ほどあるが、一番多いのは、中国の食べ物だ。では、欧米の価値観に当てはまらないものを集めているのだろうか?実は、そうでもなさそうなのである。

 中国に次いで多いのは、アメリカの食べ物なのだ。中南米、アフリカオーストラリアからの食べ物よりも多いのである。

 展示されているのは、加工肉の缶詰の「スパム」や、究極のジャンクフードともいわれるスポンジケーキの「トゥインキー」、ルートビアパスタ入りのジェロサラダ(野菜やその他の具を入れた、色・味付きのゼリー)など、割と普通に受け入れられるものもある。だが一部の食文化の人にとってはダメなのだろう。

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キャビアルートビア
image credit: Disgusting Food Museum

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ジェロサラダ
image credit: Disgusting Food Museum

 だが、何といっても「ロッキーマウンテンオイスター」の破壊力には敵わないだろう。これは「山の牡蠣」と呼ばれているが、つまりは油で揚げた牛の睾丸なのだ。画像はちょっと自粛させていただく。

「嫌悪感」はどこからもたらされるのか

 いったいなぜ、このような博物館をつくろうと思ったのか。

 創設者のサミュエル・ウェスト氏は「我々は大抵、なじみのないものを嫌悪感を持って捉えがちです。慣れ親しんだものに対してはあまり嫌悪感は抱きません。それが何であるかには関わらず、ですと語る。

 「イナゴを食べることは、ベーコンを食べることと比較して、本当に嫌悪を催すことなのでしょうか?モルモットと牛肉ではどうでしょう?」

 さてみんなは、この中でどれに嫌悪を感じただろうか?

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羊の頭を煮込んだ「カーレ・パチェ」は、ペルシャから東欧にかけての料理
image credit: Disgusting Food Museum

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カース・マルツゥ」はイタリア、サルディーニャのチーズで、発酵をもたらす生きた蛆虫がそのまま入っている。蛆虫は胃酸に強く、食べると寄生されるおそれがある。
image credit: Disgusting Food Museum

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フルーツコウモリ」(オオコウモリ)のスープは、インドネシアやタイ、グアムなど東南アジアや環太平洋地域の国々で食されている
image credit: Disgusting Food Museum

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中央アジアで飲まれている馬乳酒、「クミス」
image credit: Disgusting Food Museum

menudo
牛の胃をチリペッパーと煮込んだメキシコスープ、「メヌード」
image credit: Disgusting Food Museum

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日本からはおなじみの「納豆」
image credit: Disgusting Food Museum

 「人々に、見ているものに対して疑問を抱き、『嫌悪感は見る者の目の中にある』ということに気がついてほしい」とウェスト氏はいう。

 嫌悪を感じること自体は反応としてどうしようもないことだろう。

 しかし、衛生面などの問題がクリアされ、危険でないことが分かっているなら、それでも嫌悪を感じるのは何故か、もう一度考えてみるのもいいかもしれない。

References: Amusing Planet / Disgusting Food Museum など / written by K.Y.K. / edited by parumo

全文をカラパイアで読む:
http://karapaia.com/archives/52267370.html
 

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