何事も過ぎたるは及ばざるがごとしだ。様々なものに依存性が認められているが、筋肉トレーニングにも依存性がある。
ノルウェー科学技術大学とアメリカ・ハーバード大学の研究によれば、やたらと筋トレが好きな若い男性はうつ病になるリスクが高まるという。
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男性の10%が自分の体型を過剰に気にする
この研究では、男性の10%が身体に対する著しい認知の歪み(ボディ・イメージ障害)を持っていることが明らかになっている。
ボディ・イメージ障害は、本来健康的な体型なのに、勝手に太りすぎや痩せすぎであると思い込んでしまう障害だ。
また若い男性の3人に1人が過去にダイエットした経験があることも分かった。そうしたダイエットは太っているわけでもないのに行われているのである。
少年や若い男性が、これまで考えられていた以上に、自分の体のイメージに悩んでいることをはっきりと示唆する結果である。
スポーツ選手のような体になりたくて・・・
その結果筋トレにとりつかれてしまうわけだが、そうなった男性は、うつ病のリスクはもちろん、週末に深酒をする傾向があることもわかった。更に、合法・違法サプリメントやステロイドの使用する確率が4倍アップするそうだ。
「胸の筋肉が足りない」「筋トレをサボると罪悪感が……」「ステロイドでも飲もうか考えている」
こうした発言は、今回研究の対象となった18~32歳の男性2460人を対象とした研究で聞かれたものだ。
多くの若い男性がスポーツ選手のようなムキムキの体になりたいという願望を持っていることが窺える。
「仕事、学業、家庭を大切にしなければならない普通の若い男性の理想の体型が、サッカー選手のような職業アスリートのようなものになってしまうことは問題です」
「(サッカー選手の)ロナウドのような体になるには、フルタイムの仕事のように筋トレに励まねばなりません。でも、彼はスポーツでお金が稼げるほんの一握りの人間なんですよ」とノルウェー科学技術大学のTrine Tetlie Eik-Nes氏は話す。
「女ならスリムでくびれたウエスト。男なら広い肩幅とムキムキの筋肉。最近の若い人たちはこうした狭隘な理想の中で育ちます。でも、女性にとっても、男性にとっても、現実的なボディイメージではありません」
筋肉は女性にとってのお化粧のようなもの
これまでの研究からは、太りすぎか痩せすぎの少年は、若い男性の中ではボディ・イメージ障害を発症するリスクがもっとも高いことが分かっている。
このことは、ムキムキの体になりたいという男性の願望は体重とは関係がないという今回の研究の結果からも裏付けられている。
Eik-Nes氏によると、筋肉に取り憑かれた男性にとって、それは一種の化粧のようなものだという。
彼らが体を鍛えるのは、スポーツの成績を伸ばすためや健康になるためではない――筋肉を鍛えるために筋肉を鍛えるのだ。
また自分の体に満足できない人たちは、学歴とは関係なしに存在する。むしろ高等教育を受けた人々こそ、自分の体に満足していないことが明らかになっている。
男子の筋トレは女子のダイエットと同じ
「どうにかしてムキムキにという気持ちは、若い男性がまだ生き方をきちんと理解していないのに、分かったつもりになっているサインです。女の子が太らないよう食べては吐くという行為を繰り返すことがありますが、男の子の場合、極端なくらい筋トレをしてしまうような感じです」
Eik-Nes氏は、運動自体は健康にいいと念を押す。だが、それにとりつかれ、生活の中で何よりも最優先されるようになれば問題だ。
「自分のお子さんが、毎日ジム通いをして、鶏肉やブロッコリあるいはプロテインやサプリメントしか口にしないようなら、注意が必要です。彼らの話す話題が筋トレばかりなら、親御さんは話し合う時間を設けるべきでしょう。たとえば、何のために運動をしているのか? と訊いてみてください」
対岸の出来事ではない
なお今回、調査の対象となったのはアメリカ人の若い男性だ。しかし今日、西洋世界における文化や模範となるモデルは、ほとんど同じようなものだ。
Eik-Nes氏はノルウェー人だが、同様の調査をノルウェーで実施したとしても、同じような結果になるだろうと予測する。西洋世界の価値観に慣れ親しんでいる日本も他人事ではないだろう。
この研究結果は『International Journal of Eating Disorders』に掲載された。
References:Men who are obsessed with body image struggle with binge drinking and other woes
全文をカラパイアで読む:http://karapaia.com/archives/52267490.html
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