Credit: Kiel University/BAS / 西南極と東南極の地形の違い
Point
人工衛星GOCEが撮影した地球の重力分布のデータを用いて、地球のリソスフェアの全体図が明らかになった
・重力分布のデータから作成した地球の立体画像を分析した結果、南極大陸が、かつて存在した超大陸「ゴンドワナ大陸」から分裂する様子が明らかになった
・南極氷床下の地殻とその他の大陸が陸続きだったことを示す類似点・相違点が見つかっただけでなく、南極の東西で顕著な地質学的相違があることが判明

地球の最南に位置する南極大陸。これまで研究者は、分厚い氷に覆われた「地形」の解明に手を焼いてきました。

ところが、独キール大学と英国南極観測局(BAS)が行った新しい調査により、南極氷床下の地形がかつてないほど鮮明に浮かび上がってきました。鍵になったのは、ある人工衛星が捉えた地球の重力分布のデータです。研究内容は、11月5日付で雑誌“Scientific Reports”に掲載されました。

研究チームは、人工衛星GOCE(ゴーチェ)が集めた地球の重力分布のデータと地震学的データを用いて、地球のリソスフェア(岩石圏)の全体図を明らかにしました。リソスフェアは、流動的なマントル層であるアセノスフェア(岩流圏)の上部を移動する、プレートを構成する固い岩盤層のことです。

GOCEは、地球の地殻と海洋の密度の違いを見分けられる高性能な重力傾斜計を備えた人工衛星で、欧州宇宙機関(ESA)が2009年3月に打ち上げ、2013年11月まで運用していました。BASで地質学・地球物理学の科学リーダーを務めるファウストフェラチオリ氏は、GOCEが捉えた重力分布の画像が、地球にある陸地のなかでもっとも理解が進んでいない南極の地形の研究に革命をもたらしたと考えています。

Credit: ESA / 人工衛星GOCE

研究チームが具体的に行ったのは、GOCEのデータを用いて、特に南極大陸に焦点を当てた地球の立体画像を作成することでした。出来上がった立体画像を分析した結果、南極大陸が、かつて存在した超大陸「ゴンドワナ大陸」から分裂する様子が手に取るように分かりました。ゴンドワナ大陸は、さらに大きな超大陸「パンゲア大陸」を構成する一部です。

これまで南極大陸の地形の調査は、分厚い氷と距離が遠いことが障壁でしたが、重力分布のデータが大いに役立ちました。「東南極には、南極氷床下の地殻とその他の大陸に基本的な類似点や相違点があることを示す、興味深い地質学的特性を数多く見つけることができます。1億6千万年前まで、南極大陸と他の大陸はつながっていたのです」と、フェラチオリ氏は説明しています。

さらに、西南極は東南極と比べて地殻やリソスフェアが薄く、古い「安定陸塊」と新しい「造山帯」から成っていることが判明しました。「安定陸塊」とは、大陸地殻のうちカンブリア紀以前に安定化した部分を指し、対して「造山帯」は、山脈や列島を作り上げる造山運動を受けた地帯を指します。

今回の発見は、南極大陸の構造が氷床の動きにどのような影響を与えるか、そして氷床が溶けるにつれて南極大陸がどのような反応を示すか、といった疑問に関するヒントを私たちに与えてくれます。GOCE計画に携わったロジャー・ハーグマンズ氏は、「GOCEがはじめて観測した重力の勾配を直接活用することで、分厚い氷に覆われた地球を新たな視点から見ることができたことは、興味深いことです。さらに、今回の研究は、プレート運動によって分裂する以前の大陸のかつての姿を知るための手掛かりも、私たちに提供してくれます」と語っています。

南極の氷が溶ける速度は、過去5年で3倍にもなっていると言われています。「氷が溶ける」ことに関しては進行を食い止める必要がありますが、南極大陸を覆う「謎が解ける」ことは大歓迎ですね。目を閉じれば、氷の下で眠る太古の世界のシルエットがまぶたに浮かんで来るようです。

 

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via: mnn / translated & text by まりえってぃ

 

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