今日11月13日はFA宣言の期限。お気に入りチームに関係する選手の宣言に、ファンが悲喜こもごもを味わう第一段階が終わり、明日以降はFA宣言をした選手の動向が話題となる。
今年は91人の有資格者のうち、4人(11日時点)の選手が宣言をしており、それ以外の多くの選手は「宣言残留」「残留」「行使をせず残留」「引退」・・・など自身の進退を明らかにしている。残る今日の注目は阪神・上本博紀選手や日本ハム・中田翔選手、オリックス・金子千尋投手になるだろう。
ではこのFAでもっとも「つらい思い」をしている球団はどこか? その理由とは・・・?(JBpress)
もっとも多くの選手を「輩出」している球団は?
「ここライオンズで育ててもらって、この権利を獲得できたのは事実。感謝でいっぱいです。外(他球団)に行くから行使したのではなく、とにかく他球団の思いを聞きたいという思いです。この世界でやっている以上、他球団の評価を聞いてみたい」
今季取得した国内フリーエージェント(FA)権を行使することを決めた西武・浅村栄斗内野手の11月7日の記者会見での言葉だ。翌8日は同じく西武・炭谷銀仁朗捕手もFA宣言をした。
14日にはFA宣言をした選手が公示され、翌15日から12球団との交渉が解禁になる。
11日現在で、プロ11年で通算74勝を挙げているオリックス・西勇輝投手、広島の主砲としてリーグ3連覇に貢献した丸佳浩外野手、そして先述した西武のふたりの計4名がFAを宣言しているが、他にも日本ハムの主砲・中田翔選手、阪神のバイプレーヤー・上本博紀選手ら権利を手にしたビッグネームがそろっており、宣言の期限となる13日まで目が離せない展開が続きそうだ。
FAは、選手のチームに対する貢献を認めたれっきとした権利である。それでも、チームやファンからすれば、そうした選手が出ていってしまうことに複雑な心境を抱く。FA宣言をし、違うチームへと移籍してしまうことを「流出」とたとえることが多いのはその表れだろう。
ではそんな「流出」を最も経験している球団は・・・というと、すでに今年も前出の浅村・炭谷のふたりがFA宣言をしている西武である。FA制度が導入された1993年以降、昨年オフまでに流出した各球団の選手の人数をランキングにすると以下になる(ポスティングによるMLB球団への移籍は含まない)。
他球団が欲しがる選手を育成する力がある
1位 西武 16人
2位 日本ハム 14人
3位 ソフトバンク 11人
3位 オリックス 11人
5位 阪神 10人
6位 中日 9人
6位 DeNA 9人
8位 広島 8人
8位 ヤクルト 8人
8位 巨人 8人
11位 ロッテ 7人
12位 楽天 3人
計114人がFAによって他球団(MLBを含む)へ移籍している中で、今季のパ・リーグを制した西武は16人。
特に2010年以降、その勢いは加速しており、細川亨(10年→ソフトバンク)、許銘傑(11年→オリックス)、中島裕之(12年→アスレチックス)、片岡治大(13年→巨人)、涌井秀章(13年→ロッテ)、岸孝之(16年→楽天)など、14年をのぞいて毎年、選手が「流出」している。
今季はさらに14勝を挙げた左腕・菊池雄星はポスティングでのメジャー挑戦を表明している。過去には松坂大輔投手も同制度でメジャーへ移籍するなど12球団でもっとも「流出」を経験した球団といえるだろう。
2番目に流出選手が多いのが日本ハム。14人が昨年までに他球団へ移籍している。そして次いで3位となる「流出」をしているのがソフトバンクとオリックス。今シーズンのパ・リーグ上位3チームが「流出」トップ3でもある事実は興味深い。
育ててくれた球団への感謝の気持ちは強いが、プロ野球選手としてプレーする以上、自分をより高く評価してくれる球団があれば話を聞きたい。冒頭の浅村の言葉は、移籍してゆく選手たちの偽らざる気持ちだろう。
そのとき、やはりお金の問題は切り離せない。2000年代に入った頃から球団売却、合併が噂されるようになるなど資金力で戦えない西武、予算が決まっている日本ハムが上位に上がるのは納得がいく。
ネガティブに捉えられる「流出」だが、違う見方をすれば「他球団がお金を払ってでも欲しい選手を育成する力がある」とも言い換えられる。
西武は過去10シーズンでAクラス入り6度の成績を残し、今季は日本シリーズ進出こそ逃したものの、10年ぶりのリーグ優勝を勝ち取っている。毎年のように中心選手が流出しながらも低迷せず、素質の高い若手選手を次々と早い段階で抜擢し、他球団やMLBが欲しがるような一流選手に育て上げている。西武のスカウティング力と育成能力の高さを示していると言えるだろう。
13年ドラフト2位入団の山川穂高は今季4番に座り、47本塁打でプロ5年目にして本塁打王に輝いた。16勝を挙げ最多勝利を獲得した多和田真三郎は15年ドラフト1位入団。16年ドラフト3位で入団した源田壮亮はプロ1年目から遊撃のレギュラーを獲得し17年の新人王・・・と、実際に今なお、球界を代表する選手を生え抜きで続々と育て上げている。
万が一、浅村・炭谷が「流出」してしまったとしても(もちろん簡単に埋まる穴ではないが)、浅村の守ってきた二塁のポジションは外崎修汰、呉念庭、水口大地、金子一輝らが争い、炭谷の務める第二捕手の座は岡田雅利、中田祥多らが埋めることになるだろう。さらに投手では今井達也、伊藤翔、斉藤大将、中塚駿太、野手では戸川大輔、山田遙楓、愛斗、鈴木将平といった素質の高い若手選手たちがブレイクの気配を漂わせている。
ドラフトで比較的知名度の低い大学地方リーグの逸材を多数指名し、その中から秋山翔吾、多和田、山川、外崎らを主力選手に育て上げているのも、西武のドラフト戦略における特長だ。
今年のドラフトでは、高校生・野手の3人、根尾昂(大阪桐蔭高→中日1位)、藤原恭大(大阪桐蔭高→ロッテ1位)、小園海斗(報徳学園高→広島1位)に入札が集中する中、西武は弱点とする投手力強化のために大学球界屈指の本格派右腕・松本航(日本体育大)を単独指名し交渉権を獲得した。
主力選手の流出が続きながらも低迷することのない西武、日本ハムといった球団には、資金力はないが生きのいい若手選手が次々に飛び出してくる魅力がある。
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