職場の上司の意見に賛同できない場合、みなさんはどうするだろうか。意見の相違が生じた状況や内容によっても対応はまちまちだろうが、色やデザインなど“好み”による場合ななどは正解がない事も。そんなときは、自分の意見を主張するだろうか。一方、正解のない分野ではなく、組織や実務に関することなどで上司と考えが異なる場合、どこまで主張すべきだろうか。職場での人間関係やキャリアなどの相談に対応することも多い、パーソナリティーコンサルタントの横山人美さんに、適切な対応についてアドバイスを頂いた。

■正解のない分野で、上司と意見が異なる場合

好みが分かれそうな色やデザインなどにおいて、上司と意見が異なる場合、部下である自分の意見を主張すべきだろうか。黙って従うべきだろうか。

「社会心理学では、他者や集団からの圧力により自分の主張や意見が変化することを『同調』といい、少数意見の人を多数意見の人に暗黙的に同調させることを『同調圧力』といいます。同調が起きやすい状況としては『(1)人数が多いとき』、『(2)教育水準や文化、年齢など、何らかの点で似た人々によって集団が構成されているとき』、『(3)集団の中にさまざまな地位の人がいるとき(地位の低い人は高い人に同調しやすい)』というデータがあり、まさに、職場での上司と部下の関係は“(3)”に該当し、部下は上司に同調しがちです」(横山さん)

自分以外の同僚が上司に同調している場合は同調圧力もかかり、一層、自分だけ異論を唱えづらくなるだろう。

「しかし、『一人でも例外があると同調は起こりにくくなる』というデータもあります。他者がひとつの意見を支持していて、複数の人も同じ方向を向いているとき、自分だけ抵抗することは容易ではありませんが、勇気を出して異を唱えてみると、他に同調していた仲間も自分と同じ方向を向いてくれる可能性があります。むやみやたらに反論するのではなく、適切な知識や行動をもって自分の意見を主張することは大切なことです」(横山さん)

では、相手が上司ではなく、同僚の場合はどうだろう。

「同僚も“(2)”に該当するため同調が起きやすいですが、上司に対するより自分の意見を主張しやすいかもしれません。しかし、同僚の中でもリーダーシップを握る人もいるため、『嫌われたくない』といった心理が働きやすく、『同調圧力』の構図が出来上がりやすいです」(横山さん)

人は周囲と過剰に同調することのストレスを無意識に抱えていることが多いそう。横山さんは「自分の意見に自信や思いがあるなら、相手が誰であっても勇気を出して主張してみるべき」とアドバイスをくれた。

■組織や実務に関することなどで、上司と考えが異なる場合

例えば、経営方針や業務の割り振り、人事、仕事の進め方などについて上司と考えが異なる場合、自分の意見を主張すべきだろうか。

「『同調圧力』により、同じ集団の中では、同じようなコミュニケーションが好まれる傾向があります。しかし個性が重視され、生き方も多様化した現代社会では、『コミュニケーションギャップ』が起こりやすくなっていることも事実。あくまでも職場内のルールに沿うことが前提ですが、『上司の考えがわからない、賛成できない』ときは、最初から関係性を諦めたり断ち切ったりせず、『ギャップはあって当たり前』という姿勢で自分の考えや思いを伝えることが大切でしょう」(横山さん)

コミュニケーションギャップを埋めるため、できることはあるだろうか。

「職場では、エレベーターで一緒になったときや、廊下ですれ違ったときなどに、相手を思いやる会話や、相手を理解しようと向き合う会話を重ねることをおすすめします。そのような日頃からの小さな心がけが、お互いの思いを主張しやすい環境を整え、コミュニケーションギャップを埋めることに繋がるのではないでしょうか」(横山さん)

横山さんによると、ビジネスでは互いの意見や考えの違いを埋めることが、成果を生み出す大きな要素になり得るとか。同調しストレスを抱えている人も、思い切って相手に主張してみてはいかがだろうか。

●専門家プロフィール:横山 人美
Keep Smiling代表。パーソナリティーコンサルタント、講演・セミナー講師。各種メディア執筆やテレビ出演など多数。前向きな発達障害とのかかわり方を始め、子育てや人間関係の悩みが楽になる心理学を伝えている。

教えて!goo スタッフ(Oshiete Staff)

上司と意見が異なる場合、自分の意見を主張する?