人は、目の前にあるものをもっと良く知りたいと思ったらどうするのか?それを指先で触れることで、現実感を得ようとする傾向にあるという。
ドイツ・ルードヴィッヒ・マクシミリアン大学(LUM)の哲学者たちが、触覚という特殊な能力について研究している。
美術館では毎年、多くの鑑賞者が作品に触るせいで、そのダメージを修復する費用を負担している。
どうして人は、作品をもっとよく見ようとして触りたがるのだろう? 視覚では得られない触覚の妙とはなんなのだろうか?
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触れることによって事実を確認する
近世哲学の祖として知られるフランスの哲学者、ルネ・デカルトをはじめとする哲学者は、実際に触れることで現実感がもたらされ、外の世界との接触を体感できることに気が付いていた。
それとは対照的に、心理学者たちは、触覚はもともとほかの感覚よりもとくに優位性があるわけではないとみなす傾向があった。
我々は本当に触れることで現実感を得ようとしているのか?
臨床研究では、強迫性障害の患者は、ちゃんとドアに鍵がかかっている、水道の蛇口が閉まっているのがわかっていても、触って確認せずにはいられないことがわかっている。
だがこれまで、人が触覚を当てにするということを科学的に証明した研究はなかった。
人は不確かな情報を見たとき、触覚に頼る傾向がある
LMUを中心とした学際研究グループは、不確かな情報しかないとき、わたしたちは目で見るよりも指先で触ってみるほうを信用する傾向があるという、初めての科学的証拠を発表した。
研究では、わたしたちの物の形の見方や感じ方に影響する、垂直と水平の錯覚を利用した。
同じ長さの2本のマッチ棒で逆さのTの文字を作ると、長さは同じはずなのに、垂直(縦)のマッチのほうが、水平(横)のマッチよりも長く見えるし、そう感じる。
複数の被験者たちに、長さについて訊いてみると、2本のマッチの長さはほとんど変わらないと感じた人もいれば、明らかに2本の長さは違うと感じた人もいた。結果にばらつきがあるのは当然だ。
だが、重要なことは、長さの判断がつかず、なんとか推測しようとするとき、人は目よりも手を触れて判断するほうに自信をもつとが多いということだ。
「人は状況がはっきりしないときは、触覚を頼りにするようだ。触れるということは、現実をよりしっかりと把握する確実性という感覚を与えてくれる」LMUの准教授で認知神経学者のメルレ・フェアハーストは言う。
触覚が正しいというわけではない。触れることで得られる安心感
触覚によって特定の状況を理解するのは、現代の神経科学にとってとても難題なように思える。結局、触覚もほかの感覚器官と同じで、良いときも悪いときもあり、すべて状況や課題によって違ってくる。
触覚がほかの感覚よりも正確で優れているということではない。触れることで我々は安心し、気分が良くなるくれるということだ。
「この研究は、"触覚は疑うのがもっとも難しい感覚だ"と言ったデカルトが正しかったことを示している」LMUの心理哲学科の学長オフェリア・デロイは言う。
こうした結果が示しているのは、日常生活や強迫性障害において、触覚によって事実確認する行為は、そうした方が確実だからというだけでなく、触覚から得られる特殊な安心感からきているのかもしれないということだ。
「百聞は一見にしかず」ということわざがあるが、一目みてわからないものは「一見は一触にしかず」ということだ。
この論文は『Nature Scientific Reports』に掲載された。
というかモフモフしたものを見ると触れたくなってしまうのはなんでだろう?あれも安心感が得られるからなのか?その辺の研究も進めてみてもらいたい。
References:Philosophy of the Mind: In Touch with Reality - Neuroscience News/ written by konohazuku / edited by parumo
全文をカラパイアで読む:http://karapaia.com/archives/52267443.html
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