この頃、女の子とメカを組み合わせたキャラクター、いわゆる“メカ少女”を目にする機会が増えてきたのではないだろうか。大人気スマホRPG『Fate/GrandOrder』(以下、『FGO』)のヒロインである「マシュ・キリエライト」も、最近では重厚なメカアーマーを身に纏っているご時世だ。
メカ少女とは、その名の通り戦車や航空機などの兵器、あるいは、『機動戦士ガンダム』や『アーマード・コア』シリーズなどといったロボット作品に登場するようなメカニックパーツを美少女に装着・融合させたキャラクター物のことを指す言葉だ。
2017年にアニメが放映され、プラモデルや関連商品が品切れ続出の大ヒットを記録したコトブキヤの『フレームアームズ・ガール』(以下、『FAガール』)や、長き沈黙を破り、再始動が決まったコナミの『武装神姫』などの作品を思い起こしていただければ、概ねイメージはつかめるだろう。
そんなメカ少女を題材としたスマートフォン向けゲーム『アリス・ギア・アイギス』(以下、『アリスギア』)がコロプラより2018年1月より配信された。
『アリスギア』は、数多くのコンシューマーゲーム、アーケードゲーム、ブ ラウザゲームなどの制作を手がけてきた老舗ゲームディベロッパー、ピラミッドが開発・運営を行い、キャラクターデザインには『ガールズ&パンツァー』や『ストライクウィッチーズ』で知られる島田フミカネ氏を起用。
さらに『機動戦士ガンダム00』などで活躍するメカニックデザイナーの海老川兼武氏、柳瀬敬之氏が関わるという、その筋の人間が見れば超豪華というほかないクリエイター陣が贈るカスタマイズアクションゲームだ。
※『アリスギア』の魅力を15分の映像にまとめました。
そんな『アリスギア』だが、先日まで『FAガール』とのコラボイベントが実施され、さらには『武装神姫』の生みの親ともいえる鳥山とりを氏が手がける『メガミデバイス』シリーズとの密接なコラボ展開など、『アリスギア』というゲームを中心に、今この瞬間、極めて高い“熱量”を発している。
(画像はアリス・ギア・アイギス メガミデバイス 吾妻 楓 | プラモデル | KOTOBUKIYAより)
この熱量の高さはどのようにして生まれているのか?という疑問を抱いた電ファミニコゲーマー編集部は『アリスギア』、『FAガール』、『メガミデバイス』に関わるクリエイター陣へ座談会形式の取材を依頼。
ピラミッドの代表取締役社長である柏木准一氏、そして『FAガール』に携わり、プラモデルコンテンツとして創作した事で知られるコトブキヤ企画部 野内秀彦氏にご協力いただいた結果、座談会は、デザイナー陣として島田フミカネ氏、海老川兼武氏、柳瀬敬之氏、『アリスギア』からピラミッドの企画部部長 牟田貞治氏、“立体プロデューサー”の肩書で携わるランペイジのプロデューサー 鳥山とりを氏の総勢7名というメンバーが一堂に会する場となった。
『アリスギア』の制作に関わりつつも、いちユーザーとして熱心にプレイされている各人の熱意、仕事への姿勢、開発の裏話から、メカ少女ジャンルにまつわる話題全般にまで及んだ座談会は、3時間を超える長丁場となった。
あちらこちらへと話が飛んだ上に、最終的には“技術が発展してメカ少女が実在する未来はどうなるのか?”という、ある種の禁断の話題にまで踏み込んでしまうという、収拾のつかない内容となってしまったが、結果として非常に濃厚なトークが展開され、当事者たちのメカ少女ジャンルへの深い愛情が垣間見える座談会となった。
なお、本稿は文字数が多いため、要所要所に『アリスギア』や『FAガール』、『メガミデバイス』関連の画像を差し込んでいる。箸休めとして楽しんでほしい。
文/Leyvan
編集/クリモトコウダイ
メカ少女を作るようになった原体験
──本日はよろしくお願いします。錚々たるメンバーに集まって頂きましたが……まずは、みなさんのルーツをお訊きしていきたいと思います。
そもそも、なぜロボットやメカ少女を作るようになったんでしょうか? ロボット物ですとか、ミリタリー、メカ少女など、そういうものを好きになった原体験ってどういったものだったんでしょうか?
島田フミカネ(以下、島田)氏:
自分はキャラもメカも描きたかった人間なんですよ。すでに先達の作られたメカ+少女方法論はあったのだけど、そこから変わったものを描きたいってなったときに、メカニックをアーマーみたいに纏うだけじゃなくて、衣装として解釈したりするようになったんですよね。
鳥山とりを(以下、鳥山)氏:
島田さんが凄いのは、そのメカニックを衣装として解釈できるところだと思っていまして。昔、島田さんのイラストをフィギュア化した『メカ娘』【※】が出たじゃないですか。
最初に島田さんを知らないでイラストを見たとき、「ああ、こんな風に機能を分解して再構成するんだ、この人は」って思ったんですよ。それまではいわゆる“ポン付け”──パーツをそのまま着けたデザインが多かったので驚きましたね。
島田氏:
そういう意味では、『フレームアームズ・ガール』はストレートにロボットのデザインをそのままアーマーとして着せているので、方法論としては先祖返りしているんですよね。
──それはロボットっていう原型があるからこそなんでしょうか。
島田氏:
そうですね。だいたいのロボットアニメに出てくるロボットは人型なので、人間に対応させやすいんですよ。これが戦車や艦船、飛行機になってくると「どうすんねん?」って話になりますが。
鳥山氏:
そこはやっぱり、島田さんはすげえなあって思っていて。いまだに、兵器の解釈とか、要素を分解してっていうデザインの仕方は、島田さんはすごい。第一人者と言っていいかなと思いますけどね。
──同じ質問を皆さんにもさせていただきたいんですが、鳥山さんはいかがでしょうか。
鳥山氏:
僕はすでに公言していますけど、ホビージャパンの読者投稿欄ですね。あそこで女の子が戦車を着ましたとか、パワードスーツを着ましたっていう文化を、中学生ぐらいの頃に見て、「おおう!」って衝撃を受けたんです。その頃からプラモ大好きでそのまま来ちゃってますね。
柳瀬敬之(以下、柳瀬)氏:
俺は『タイムボカン』シリーズから始まって、『ガンダム』に入って、「コミックボンボン」にいって、ズルズルっとそのまま来ちゃっている(笑)。「ニュータイプ」で『ファイブスター物語』【※】も始まっちゃって、そこからもう抜けられなくなって。
野内秀彦(以下、野内)氏:
メカはわかりやすいですよね。そこに女の子を乗せようとしたのは何がきっかけでした?
柳瀬氏:
俺の場合はサイバーコミックスを目指していた人間なので、メカと女の子っていうか、漫画でメカを描くっていうのがまずありまして。メカデザイナーが漫画も描くっていう時代があったんですよ。出渕裕さんだったり、永野護さんだったり。それで「メカデザイナーって大河原邦男さん以外は漫画も描けないといけないんだ!?」って思って。
一同:
(笑)。
※サイバーコミックス
バンダイ発行のロボットアニメ専門のアンソロジーコミック集。後に『機動武闘伝Gガンダム』のキャラクターデザイン協力を手がける島本和彦氏の『あしたのガンダム』、MS少女を描いた元祖とも言える赤井孝美氏の『ルウム戦役』などの作品が掲載された。
柳瀬氏:
だから両方描いていたんですけど、途中からキャラはそんなに上手くないなって自分でもわかってしまいまして。それでメカばっかり描く仕事をしようと思って、フロム・ソフトウェアに入ったんです。ところが、その後に引き受けた『武装神姫』のときに「メカもキャラもお願いします」って言われたので……。
鳥山氏:
ああ、そうそう。
柳瀬氏:
(手前にある火器型MMS ゼルノグラードを指しながら)これが、はじめてのキャラデザインですよね。厳密に言うと「砲台型MMS フォートブラッグ」が最初なのでふたり目ですけど、それまではキャラクターデザインでお金をもらったことがなかったんですよ。
ただ……正直言うと、フォーマットは島田さんのデザインがあったわけですよ。その上で「柳瀬さんには戦車系、ミリタリー寄りをお願いします」という発注だったので、いかに少女にカッコいいメカを着けるかっていうことに重点を置いてデザインしたんですが、それでも自分で考えたっていう感覚が今のところなくて。
ですので、ことメカ少女を描くことになった原体験という意味では、「発注があったから」ということになりますね。
※火器型MMS ゼルノグラード
2008年4月5日に発売されたアクションフィギュア『武装神姫』シリーズ第8弾の神姫で、愛称は「ぜるのん」、「ゼルっち」など。PSP版『武装神姫バトルマスターズ』にも登場し、声優は白石涼子が担当した。
※砲台型MMS フォートブラッグ
同じく柳瀬敬之氏デザインである「砲台型MMS フォートブラッグ」は2007年2月22日にEXウェポンセット(カスタマイズ用の追加パーツセット)として発売されている。
──海老川さんは、いかがでしょうか?
柳瀬氏:
海老川さんは、自分発信でメカ少女を描こうって思ったことがあんまりないんじゃないかな?
海老川兼武(以下、海老川)氏:
あんまりっていうか、ゼロでしたね。まず、可愛い女の子を描くっていう作業に対しての欲求がなかったんです。だって、そういうのは島田さんの様な上手い人が描いてくれるから、それを僕は、受け手としていればいいやって思っていました(笑)。そういう意味で『アリスギア』の仕事は、とても新鮮で楽しい作業でしたね。
いま皆さんの原体験のお話を伺ってふと思ったのですが、今の世代の人たちは、はじめからメカだけでなく、メカ少女を描きたいと思うものなんでしょうか。
島田氏:
今10代の人とかだったら、最初からこういうジャンルで描きたいって人もいるかもしれないね。
僕らの子供の頃はまだ、ロボットアニメの主人公が女の子なんていうのは、なかった時代だし。……でも、だからこそ、メカと美少女の組み合わせというのは、遊びとして面白くなったのかもしれないですよね。
一同:
ああー。
鳥山氏:
昔のアニメは基本的に主人公が男でしたし、メカも男性的でガッシリとしたものだったので、その機械の男の部分を、女の子に変えて、「イェーイ!」ってやった遊びが、もしかしたら発祥なのかもしれないですね。
柳瀬氏:
っていうか、「描きたいものの上位ふたつがそうだった」って話なのかもしれない。たまたま女の子が描きたくて、メカも描きたいっていう。じゃあ一緒に描くぞって。
ガチになればなるほど“キモく”なっていく
──話を伺っていると、メカ少女というジャンルはオタク文化の中でも特殊というか、島田さんが言われたように、変わったものだったんだなと。
島田氏:
“半裸の女の子がメカをくっつけている”って、正直気持ち悪いじゃないですか。そりゃ僕らは大好きですけどね?
──その“気持ち悪い”っていう感覚が、近年は薄まってきているんじゃないかと思っていまして。
鳥山氏:
そうなんですよ! それがほかの人たちも同様なのかは客観的に見てみたいですね。
島田氏:
それで言うと、要因のひとつは『艦これ』さんじゃないかなと。重要なのは、“メカ少女ジャンルの文脈で売れたわけじゃない”ということで、ビジュアルの立て方がメカ少女とは違うじゃないですか。例えば、ずっとこの手のジャンルをやっていた人間が『艦これ』さんをはじめて見たとき、「デザインがそのまんま過ぎる」だとか「艤装を外したら普通の女の子だよね」って思ったはずなんですよ。
でもだからこそ、入りやすいし描きやすい。何なら、別にメカを丸ごと外せるわけじゃないですか。
そうしたら普通のセーラー服を着た女の子ですよ。メカが苦手な人でも抵抗なく描ける。
これを狙ってやったかどうかはわかりませんが、流行るにはそういう“ゆるい部分”が必要であり、それで跳ねた結果、“気持ち悪い”という感覚が薄くなったと。
──なるほどなるほど。
島田氏:
一方のメカ少女は、よくも悪くもガチ。そしてガチになればなるほどニッチになって、結果キモくなると。でもそのキモさを正面から見つめたときに、「これがカッコいいんだ」とか「これがオシャレなんだ」って嘘をついちゃうんですよ。
──嘘……ですか。メカ少女には燃え要素も、スタイリッシュな要素もあると思いますが。
島田氏:
いやいや、嘘ですよ。もちろんカッコイイと思いますし、オシャレにしたいと全く思っていないわけじゃないんです。でも結局、突き詰めたら「自分は半裸の女の子がメカをまとって戦うのが好きです!」ってことなんですよ。それは、傍から冷静に見たらキモいでしょ? これはもう、どう言い訳してもキモいことなんですよ。
でもキモくていいじゃないかと! 好きなものにウソなんてつけねーじゃん! ましてや「じゃあ、これを嫌いになります」なんて絶対言えねえじゃん! だってもうそういう性癖なんだもん。
「たまにはエッチなものを描きてえ!」ってなるもん。むしろそれを隠しては生きられない──と、自分に言い聞かせています(笑)。
一同:
(爆笑)
島田氏:
だから、いい歳こいてアニメにハマっているくせに「俺、硬派でございます」って言っているほうが厄介なんですよ! 「硬派ですから」みたいな言い訳はしないで!
一同:
(笑)。
島田氏:
キモいものを「キモいけど好き!」って言える人でありたいですね。
柏木准一(以下、柏木)氏:
あの、だいぶヒートアップしていますけど、島田さんが言う「キモい」は優しさなので、そこはお察しいただけると(笑)。
島田氏:
これはもう僕の持論なんですけど、メカ少女ってジャンルの中でやろうとすると、すごくオシャレでカッコいいものばっかり描こうとしちゃうんですよね。「俺たちは最先端を走っているんだ」みたいな、ちょっといけ好かねえ感じの(笑)。
一同:
(笑)。
島田氏:
自分も描いていて、オシャレでカッコいいものが描けたらいいなと思うんですけど、半裸のレオタード着た女の子にメカを着せて、それで「オシャレです。最先端です」と言いはるのって、無理があるんですよ! 「結局、女の子のパンツだよね」みたいな話になってくる。
だからそんな小洒落たものではなく、言ってしまえば子どもっぽいような、「可愛い女の子とカッコいいメカをくっついたらカッコいいじゃん?」みたいな気持ちでいいと思っていまして。
──そうですね。子どもの頃の模型いじりやお絵かきの延長線上のような、純粋な欲求なのかもしれません。
島田氏:
なんて言っていますけど、実は描いている側からしてみれば照れみたいなものがあって。でも『アリスギア』ではシナリオのバカさ加減みたいなところで、それをうまく拾ってくれているというか、救われているところがあるんですよね。
柏木氏:
照れというのはその通りで、好きなはずなのに邪魔しちゃうというか、正直になれないところがあると思うんですよね。それが結果的に、島田さんが言う「嘘をつくことになる」ということなのかなと。
わかりやすいところで言うと、子どものころに親御さんがいる前で『うる星やつら』とか『ダーティーペア』を見れましたか? っていうことです。
鳥山氏:
ああ、見づらかったですよ。
海老川氏:
うちは『キャッツアイ』で視聴禁止でした(笑)。
柳瀬氏:
キビシーな、それ!
柏木氏:
そういう家庭で育ってきちゃった人だと、やはり照れが勝ってしまう。でも『アリスギア』ではそこを逆手にとって、大人が楽しんで遊べるようなゲーム内容にしたんです。
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『アリスギア』を「ずっと戦っていけるIP」にするために島田フミカネ氏を起用した
──ここからはメカ少女としての『アリスギア』について深掘りしていこうと思います。ピラミッドさんは過去に『武装神姫バトルマスターズ』を手掛けられていますが、今回はなぜメカ少女ものになったんでしょう。
柏木氏:
こういったジャンルは僕自身も含めて、うちの会社のスタッフたちがすごく好きなんですよ。少し昔の話をしますと、2004年頃に『ガンスリンガー・ガール』という作品を題材にしたゲームを作らせていただいて。以前から女の子と銃火器の組み合わせという題材には縁があったんです。
(画像左)GUNSLINGERGIRL VOL.1(画像はAmazonより)
(画像右)武装神姫BATTLE MASTERS Mk.2 – PSP(画像はAmazonより)
ですので「またそういったゲームを作りたいね」という話はずっとあったんですが、今までは機会に恵まれず、今回自分達で好きなものを作っていいよって話になってですね。
そこで僕はバリバリのシューティングゲーム(以下、STG)が大好きなので、STGを作ろうじゃないかと。しかもずっと戦っていけるIPとして。
──バリバリのSTGでずっと戦っていけるIPというのは、正直に言って難しいですよね……。
柏木氏:
ええ。そもそもロボットとかシューティングとか、そういう単語を会社の中で使うと怒られていて。社内で「シューティングゲーム禁止令」みたいなものが定期的に発令されてました(笑)。
正直なところ、いつものメカメカしいSTGには限界があるので、人気のIPを作るためには顔となるもの──キャラクターが必要だと思ったんです。ところが、僕らだけでやるとカッコよさだけに振っちゃって、可愛さを忘れちゃう。そこでカッコよさと可愛さをデザインから作れる人と組みたいと思ったときに、やっぱり島田フミカネさんじゃないかと。
だから僕らとしては、STGとして生き残って──みんなの手にとってもらうために最適解を選んだつもりです。
──そういった経緯があったんですね。また、メカ少女と言ってもいろんなテイストがありますが、“『アリスギア』のメカ少女”はいつごろ固まったんでしょうか。
島田氏:
それでいうと吾妻楓ちゃんをデザインしたときですかね。彼女が最初の一体でして、基本となるものだから全て中ぐらいのサイズ。武器も刀とライフルっていう、すごく一般的なもので。本当になんか、『機動戦士ガンダム』における「RX-78-2ガンダム」を描いてくださいっていう発注だったんですよ。
この段階で考えていたのは、わかりやすいところだと背中ですね。例えば、『アリスギア』はゲームシステム上、プレイヤーはずっとキャラクターの背中を見ていることになるので、背中やお尻にでかいパーツを付けすぎると、後ろ姿が見えなくなっちゃうんですよ。
だからメカをアームで支えるのではなく、浮遊パーツにしようとか。
変形したり展開するパーツなんかも、前側に展開するより、横にシルエットが拡がるようにした方が後ろから見たときには変化がわかりやすいんですね。
海老川氏:
いま話を聞いて、実際にデザインして「ああ、これがメカ少女というジャンルなんだ」と驚いたことを思い出しました。
開発段階の宇佐元杏奈(うさもと あんな)の原型を島田さんが見たときに「これは後ろから見ても、お尻がしっかり見えていていいですね」って言っていたのが、すっごく頭に残っていて。そういうメカ少女ならではのコツがあるんだなと思って。
──ビハインドカメラ【※】のゲームならではの方法論ですね。背面のデザインに注力するというのは、『アーマード・コア』や、『オメガブースト』という作品でデザインを担当された河森正治氏が意識していたと訊きますが、お尻が隠れないようにするというのは、メカ少女ならではだと思います。
※ビハインドカメラ
後方視点。主に3Dのゲームで、操作キャラクターの背後にカメラが固定、あるいは半固定されている状態のことを指す。『モンスターハンター』シリーズや『DARK SOULS』シリーズなどもビハインドカメラを採用している。
柏木氏:
(一呼吸置いて)お尻のレギュレーションは、最初にすごく言ったのですが、社内のデザインでもいくつか守られていない物が存在します。
野内氏:
それは、どんなレギュレーションだったんです?
柏木氏:
いや、ずっと後ろから見るから、お尻のところはパーツを置かないで欲しいという話をしたんです。
野内氏:
ああ、そういうことか。
柏木氏:
それなのに、今は結構隠れちゃっているやつが多くて。
海老川氏:
多いですよねえ……初期のやつは、ちょっと直したいやつがある(笑)。
一同:
(笑)。
統一感を重視した『アリスギア』流のメカ少女デザイン論
野内氏:
メカ少女を描くことになった柳瀬さんと海老川さんはどうなんですか? 基本はメカをメインで描いていたわけじゃないですか。
柳瀬氏:
島田さんにキャラ監修をしてもらえるので、割と自由にやらせてもらった感ありますね。
海老川氏:
僕がこれまでやってこなかったジャンルなので、本当に新鮮な気持ちで楽しくやっていますね。だから「わからないので教えてください!」って素直に言えるし、島田さんに聞くときも変なプライドが邪魔してこなくて(笑)。
柳瀬氏:
俺は若干そのプライドがあったけどね(笑)。でも途中からは「いや、やっぱりチェックしてもらおう……お願いします、島田先生!」って(笑)。
──島田さんは監修という立場ですが。
島田氏:
監修としては、「ここは設定の範囲を超えているかな」とか「ここをちょっと変えれば、ぐっと統一感が出る」みたいな話はしますね。『アリスギア』は基本的に世界がひとつで、極端に違った科学体系のものが存在しない──つまり人類かヴァイスかの二種類しか存在しないって設定なんですが、ゆえにそういう時代感とか、ある程度の統一性みたいなものは残したいなっていう部分がありまして。
でも逆に、皆さんのデザインからアイデアを得ることもありますね。『アリスギア』には動物をモチーフにしたギアが多いんです。
柳瀬さんデザインの文嘉は鹿がモチーフなんですが、初期稿はつま先がブレードみたいな形状になってました。ところが、後から海老川さんがデザインした猪モチーフのリンが上がってきて見てみたら、つま先が蹄のようになっていて。
蹄なのは、猪だからある意味当然なんですけど、「なるほどな」と……。鹿も猪も基本的にはウシ目だし、自分担当の愛花も羊なので、蹄は共通要素にしようと思いついて、後からデザインを修正したんですよ。
柳瀬氏:
そういう意味で、『アリスギア』のデザインは難しいと思うんですよ。そういえば怜ちゃん、最初はイヌガミって名前だったんです。だから俺さ、犬モチーフだと思って描いていたら「いや、あの、鷹です。」って言われて(笑)。「じゃあ、なんで名前に犬って入れたんですか?!」って。だから小鳥遊という名字もこちらが提案したんです。
──『アリスギア』はキャラクターの名前が特徴的ですよね。シタラちゃんの名字の兼志谷(かねしや)はインド神話の“ガネーシャ”が元になっていたりとか。
柏木氏:
アリスギアのキャラクターの名前は開発中にかなり変更していました。モチーフやバックボーン、そしてアナグラム的な内容を、シナリオチームのほうで組み直したりしながらよく考えてだと思います。
海老川氏:
そういうのを見て僕らはデザインするんですけど、実際に経験してみて、キャラとメカ、その両方が描ければできるかと言われれば、そうじゃない。「キャラとメカを融合させる」という、違うスキルが必要なんだなと実感しましたね。
なおかつ、どう混ぜればモチーフがデザインに残っていくのかなっていうのもありましたし。
──キャラクターを一体作るにしても、キャラクターとギアを作り、そしてデザインの整合性をとる作業にしても、コスチューム、ギア、アクセサリーとすべてが繋がるように作るのは至難の業だと思うんです。そこをあえて自ら突き進んでいると言いますか。
柏木氏:
まあ、大変ですね。うちはモデリングにしてもキャラクターとメカ部分は別々の人間でやっていますし……そういえば、模型ではキャラクターを作る人とメカの部分を作る人はバラバラで作る場合が多いんでしょうか?
野内氏:
最初はキャラ部分だけフィギュアの人間がやって、メカはメカの人間が担当していましたね。ただ、元々『アーマード・コア』の『ヴァリアブルインフィニティ』【※】シリーズとかを作っていた会社なので、中には両方できる人間もいまして。原型師である浅井真紀さんもそのタイプですが、そういう人が担当するときは両方お願いしましたね。
※アーマード・コア ヴァリアブルインフィニティ……フロム・ソフトウェアのメカカスタマイズアクションゲーム『アーマード・コア』を原作とするプラモデルシリーズ。ゲームシステムであるパーツの組み替えをキットにも導入し、シリーズ間での互換性を実現。文字通り、「無限の可能性」を秘めたシリーズとして展開した。
(画像左)コトブキヤ アーマード・コア ヴァリアブル・インフィニティシリーズ ホワイト・グリント&V.O.Bセット ムービーカラーVer.(画像はAmazonより)
(画像右)コトブキヤ アーマード・コアV UCR-10A ヴェンジェンス(画像はAmazonより)
鳥山氏:
ちなみに『メガミデバイス』は別ですね。
島田氏:
でもフィギュアにしても、ゲームにしても、その面倒臭さが最終的にメガヒットの方向には跳ねないんですよね。
一同:
(爆笑)。
島田氏:
例えば、メカ少女を1体描いている間にセーラー服の女の子だったら5人描けるぜっていうのが実情なんです。原稿料が5倍になるわけじゃないのに(笑)。その結果、メカ少女は昔からずっとあるジャンルにもかかわらず、描き手がなかなか増えないジャンルなんですよ。結局はそこなんですよね。
鳥山氏:
ああ、そうですねえ。
野内氏:
本当に。
島田氏:
描ける人が急に増えるわけじゃないし、描ける人だって毎回描くわけでもない。『艦これ』さんのコミックを読んでいても、日常モノだとすぐ装備外されちゃう。それぐらい描くのが大変なんですよ!
一同:
(苦笑)。
──線が多いデザインはイラストを描くのがたいへんでしょうしね……。ちなみに、『アリスギア』ではプログラム上で実現が難しかった、などの苦労はあったのでしょうか。
牟田貞治(以下、牟田)氏:
バーニアとか……。
一同:
ああー……。
海老川氏:
僕のデザインって、だいたい上半身にバーニアを付けるんですけど、上半身のバーニアがゲームの仕様上、噴射しないんだってことにずっとあとに気が付いて。 「あ、しまった……!これは余計だった……」って。
鳥山氏:
バーニア噴射に関しては、ゲーム内だと下半身だけだもんね。
海老川氏:
そうなんです。下半身から噴射しているので。あの上半身のバーニア、いらないな…と思って(笑)。
バトル中では、一部例外を除いて、下半身のギアからのみバーニア噴射される。
柏木氏:
バーニアは、上半身もつけたかったんですけど、処理が重すぎて……。
海老川氏:
それこそ、出撃シーンで前ダッシュするときにバァーっと噴いていたら、「まあいっかな」と思っていたんですけど。一切使っていないんで。
柏木氏:
あれ、でもこれバーニア出てない?(牟田氏を見ながら)
牟田氏:
……コッソリ直しました(笑)。通常のダッシュとかでは厳しいんですけど、一部のSPスキルを発動している間限定で、演出としてなんとか噴射できるようにしています。
──コッソリ(笑)。
島田氏:
そうそう、苦労といえば一条綾香ちゃんの盾なんですけど。あれ、すごい複雑な模様が入っているんですけど、実はテクスチャじゃなくてポリゴンなんだよね。
盾の複雑な模様がなんとポリゴンでモデリングされている。画像右のように角度をつけると立体であることがはっきりと分かる。
柳瀬氏:
ウソ……!?
牟田氏:
モデリングでやっているんです。
柏木氏:
じつはこれ、プログラマー激怒案件で。モデリングの人間が勝手にやったんですよ
一同:
(爆笑)。
野内氏:
勝手にやったんだ(笑)。
島田氏:
でもレギュレーションは守っているんですよね。
柏木氏:
ええ、レギュレーションを守っているし、テクスチャも使ってなくて、パッキリ出るのでいいんですけど……「ムダなことをするな!」と。
野内氏:
(実機で確認しながら)おお、これが全部立体なんだ。すごいなあ。でも、もっとやりようがあっただろうに……。
──でもどうしてポリゴンでやることになったんですか?
島田氏:
最初はこの面積だと、盾のテクスチャの容量が足りないからって言われて、「じゃあもっと簡単な模様にします」って言っていたら、担当さんが「ポリゴンでやればできる!」みたいなことを言い出したんですよ。
野内氏:
彼はなんて恐ろしいことを言うんだ(笑)。
島田氏:
だからこの表面の模様、テクスチャじゃなくて、全部一枚板の色のついたポリゴンなんですよ。
柳瀬氏:
ほんとだ……モデリングしている。画像処理じゃないんですね。
島田氏:
うん。モデリング担当の人が、なんか「テクスチャじゃなくって、ポリゴンでやればできるはず!」って。
一同:
(笑)。
──結果、かなったんですね。
島田氏:
はい。結果、できちゃいました。
柏木氏:
いやまあ……「ありえないでしょ?」って。あとバージニア・G(グリンベレー)ちゃんの専用ギアの迷彩模様も、最初は海老川さんから来たデザインが単色だったのに、島田さんが「迷彩にしようぜ!」ってデザイン指示書に迷彩模様を描き加えて「メールにとんでもないことが書いてあるぞ!」ってメカモデラーが大混乱になりました。
海老川氏:
ああ、そうそう!
一同:
(笑)。
島田氏:
僕、3Dで迷彩の模様をちゃんと貼るっていうのが、そんなに面倒くさい作業だとは知らなかったので……(笑)。
柏木氏:
そうですよねえ……。この迷彩模様はですね、右と左とか全部バラバラなんですよ……(遠い目)。
島田氏:
怜ちゃんの専用スーツも、手足の横にジャージみたいな白いラインが入っているけど、あれも関節とか動かしたときにきちんとラインを繋げるのが、「すげえ面倒くせえ!」って後で聞かされて。
野内氏:
本当、すみませんって感じだね。
島田氏:
でも、「じゃあ描き直しましょうか?」って言ったら、「いや、これでいいんです!」みたいに返されて。
一同:
(笑)。
島田氏:
「すげえ大変だった!っていうことを、とにかく伝えたかったんです」って。
柏木氏:
長文でいかに大変だったかっていう現場モデラーの気持ちと苦労を代弁したメールを……頻繁にデザイナー陣に送っているんです。
──長文(笑)。
島田氏:
なんか「対処しましょうか?」って言ったら、よく「もう作ったもんは作った!」って話になって。
柳瀬氏:
いや、本当にこだわってんなーって思いましたね。
ほかのスマホゲームにはない操作系、遊び方を構築した
──さて、ここまではメカ少女とその文脈で『アリスギア』について話を伺ってきましたが、ここからはゲームとしての『アリスギア』に迫れればと思います。
柏木氏:
スマホでは『ダライアスバーストSP』と『シルフィードAlternative AM』をうちで作ったんですが、バーチャルコントローラーで遊ぶゲームの中では、結構初期の頃に完成形といえるものが作れたんじゃないかなって思っているんです。たしかiPhone4Sが主流だった頃ですね。まだソーシャルゲームが流行り出す前です。
──時代的に言うと、モバゲーの『怪盗ロワイヤル』などが出ていたころですね。
柏木氏:
バーチャルコントローラーできちんとしたものは作れたのですが、やっぱりすこしやりにくさを感じていて、今回はタッチパネル入力、スマホ操作に最適化された操作系をゼロから構築したいと思っていました。
──すでにあるフォーマットではなく、誰もがゼロからスタートできるゲームということですね。
柏木氏:
アーケードゲームでよくあるような、操作系のリセットですね。たとえば敵の周りをくるくる回りながら射撃をしつつ近接攻撃で斬りつける事を簡単に出来るような操作系にしたかったので。
──ちょっと補足しておくと、『アリスギア』の操作性って指ひとつで操作できて、前後左右の動きはあるけど、縦軸の動きはあまりなくて。概念としてはあるけど、操作はしないっていう割り切り方なんですよね。
だけども、前後左右でダッシュ攻撃があるとか、近接コンボ、派生技があるとか、ステキャン(ステップキャンセル)【※】があるとか、知れば知るほど「ああ、こんな動きができるんだ!」っていうアクション性があるゲームで。これって、メカ少女といわず、スマホのゲームとして見ても、他に類を見ないレベルではないかなと思います。
※ステキャン(ステップキャンセル)
攻撃やジャンプなどの動作の隙をステップすることによってキャンセルするテクニック。主に対戦型格闘ゲームで多用されるテクニックで、近年では『ファンタスースターオンライン2』など、アクション性の高いオンラインゲームに導入されているケースもある。
柏木氏:
作っている側としては、あえてほかの作品とは全く違うことをやろうと思って作っているんですよ。ただ、ボス戦なんかは歯ごたえがありすぎて、ユーザーさんにはそれでお叱りの声をもらったりはするんですけれど(苦笑)。
──たしかに、サソリ(セルケト)【※】やケルベロスなんかは強かったです……。
※サソリ(セルケト)
正式名称、セルケト(通称:サソリ)。ゲーム中盤以降に登場するボスとして、多くの初心者を苦しめる難敵。とくに一撃が重い尻尾回転攻撃と尾先から放つビームは脅威。
※ケルベロス
人型モードと巡航モードの2形態を持つ可変型のボス。人型モードの時は運動性に優れ、小刻みな動きと的確な射撃、ワンテンポおいて格闘をはさむなど隙のない行動パターンが特徴。巡航モードでは爆撃機のように高速で飛び回りながら大火力の攻撃を繰り出してくる強敵。
柏木氏:
「ゲームとして遊び込んでいけるようなものを目指して作りましょう!」と意気込んで作ったので、開発中はずーっと「これでは難しすぎる」とか「逆に簡単すぎる」とか、社内で揉んでいました。
牟田氏:
バランスを絶妙にするのが難しかったですよね。スマホゲームの場合はライトなユーザーさんのことも考えないといけないですし、しかもコントローラーみたいにボタンがいっぱいあるわけでもないので、どこを単純化してどこを複雑化するのか──かなり試行錯誤と話し合いをしながら決めていきましたね。
僕らが好きだったものを、魂を込めて作った
──この言葉が適切かわからないんですけれども、『アリスギア』って“バカゲー感”もすごく魅力的だと思っていまして。大人達が本気でバカやって、好き勝手に楽しい事をやっている雰囲気がありますよね。
柏木氏:
いろんなものをアホみたいに丁寧に作っているからこそ、イベントでは無軌道な面白さや独特な悪ふざけしても多少は許されるのかなって。
柳瀬氏:
それでもデザインはちゃんと本気でやっていますからね。キャラも3Dモデルもですけど、本当に丁寧に作っているなあって思う。
──「ほっちゃーん! ほ、ほーっ、ホアアーッ!! ホアーッ!!」【※】みたいな感じのセリフがあったりとか。懐かしい!って思いながら、正直これは大丈夫なんですか?って思うネタもあったり……。
※「ほっちゃーん! ほ、ほーっ、ホアアーッ!! ホアーッ!!」
2004年の東京ゲームショーにて行われたメインステージ『双恋』のスペシャルイベントに駆けつけた堀江由衣ファンの熱い声援を書き起こした記事が元ネタ。シリアスなレポート記事の中で異彩を放つ文字列のインパクトがネット上で評判となった。
柳瀬氏:
正直パロディに関しては、そろそろ誰かに怒られるんじゃねえのかなって思うけども(笑)。
柏木氏:
そうですねえ。いやあ、いろいろと怒られそうなものがありますからね。
柳瀬氏:
もう少しオブラートに包んでいいんですよって思うときがある(笑)。
柏木氏:
島田さんが言われているシナリオに関しても、大人がクスクスっと笑えるようなものにしたいなと思って作っていまして。
どこかで聞いたようなセリフや、おバカな一面が魅力的なイベントパート。「探検隊」イベントや水着イベントなど、期間限定配信のイベントではとくにテンションが高い。
──兼志谷 シタラ(かねしや したら)ちゃんがぶっこんでくるんですよね。いろいろと。
柏木氏:
あ、そうだ。作中で頻繁に、ブキヤにいこう、ブキヤにいこうって単語が作中で垂れ流されているんですけどー。
野内氏:
ですけどー、じゃないですよ(笑)。
一同:
(笑)。
──あと格闘ゲーム好きな小芦睦海(こあし むつみ)ちゃんなんかは、名前を数字に変換すると『ストリートファイター』の昇竜拳のコマンドになるとか。
柏木氏:
胸の所にもそのモチーフがあるんですよ。誕生日も逆昇竜のコマンドとか。
一同:
(笑)。
──そういったネタ的なところも含めて、『アリスギア』ってすごく好きで作っているなっていうのが、もう画面から、イベントシーンから、いたるところから感じるんですよね。ホーム画面の時計がリアルの時間と連動していたりとか、イベント中はホーム画面に専用の小物がいっぱいあったりとか。もう作り込みのレベルがおかしい。
それでいてカスタマイズ要素があって、バリバリのアクションシューティングで出るというのは、いまのスマートフォンゲームでは本当に稀有な存在だと思います。
柏木氏:
ええ。社員一同魂を込めて作っていますからね。僕らが好きだったものを、いろんな人が面白いよねって感じてもらえるように作っています。このジャンルの分母を頑張って広げていきたいなと思っているんですよ。
──そのほかにも、BGMをサウンドチームZUNTATA【※】が手がけていたり、一部のエピソードで高橋よしひろ【※】さんが描かれた熊や犬が出てきたりと、随所にこだわりが見られます。
※ZUNTATA
株式会社タイトーのサウンドチーム。名称は三拍子の「ずんたった(ZUNTATTA)」からTの一文字を取ったものとされている。古くからタイトーが開発するゲームソフトなどの音楽を手がけ、『ダライアスバースト』、『レイストーム』などSTGの楽曲も多数制作している。
※高橋よしひろ
漫画家。代表作『銀牙』と、それに連なるシリーズ作品には、力強いタッチで描かれた犬が登場することで有名。また、凶悪極まりない面相の熊の画にも定評がある。
柏木氏:
シナリオ的にマタギのキャラクターがいたのでそのエピソードで熊と犬が登場する事は決定していたんですよ。でも、社内では魂が入った熊と犬は描けないと。
一同:
(笑)。
──“魂の入った犬と熊”というのがパワーワードなんですが(笑)。
柏木氏:
で、社内で日本一魂の入った熊を犬を描ける人という事で検討して「高橋よしひろ」先生の名前が挙がりまして、確かに先生にお願い出来るなら最高の熊と犬になるのではないかと、難しいとは思いつつも日本文芸社のゴラク編集部さんに打診を行いました。
柳瀬氏:
いちイラストレーターとしてお願いしたってことですよね。コラボというよりも。
柏木氏:
そうですね、サイレントコラボと言いますか本当に特別枠でお願いした形です。
快諾していただき本当に嬉しかったです。
──イラストが出たときに、「ん!? この画面はアリなのか?」って、目を疑うような絵面になっていました。
柏木氏:
魂が入っていたでしょう? 見た者の魂を一瞬のうちに獲っていくような最高の絵になったと思います。
──そして、最後に協力としてクレジットが出るっていうのも良かったですね。探検隊イベントとかも、だいぶ昭和感のある……「わかる人しかわかんねえ!」っていう、濃ゆいネタが来たりとか。
柏木氏:
探検隊イベントはですね、あの赤い字をバァーンってやるのは、効果音をZUNTATAにお願いしています。「効果音が必要なんです!」って。もちろん、探検隊のBGMもですね。
期間限定配信した「リンちゃん探検隊」イベントは、インパクト絶大のBGM、効果音とともに展開される濃厚なシナリオで大きな反響を呼ぶ。画像を見ても「何を言っているのか分からない」状態だと思うが、プレイ済みの筆者も未だによく分かっていないので安心してほしい。
──字を出すSEにZUNTATAを……すごく豪華な発注ですね。
柏木氏:
とてもいいBGMが上がってきて。シナリオチームからも、専用BGMだったのですが、今後も出来れば使いたいですって話をされました。
鳥山氏:
そういったテイストは、今後『アリスギア』みたいなゲームがほかに出てきたとしても、絶対に真似できない部分ですよね。
アクションゲームであること、スマホゲームであることの狭間で
──『アリスギア』はアップデートを重ねてどんどん遊びやすくなっていますが、続いては今後の施策について伺っていこうと思います。
柏木氏:
今のソシャゲのユーザーの人にも触ってもらえるようにしていくのが優先事項ですね。難しすぎると言われる部分は敷居を下げますし、もっとアクションをやりたいっていう人には、それなりのものを用意していこうと。僕らとしてはすごく頑張って作ったつもりなんですけど、今はまだ中途半端な状態にあるというのは間違いないと思うんですよね。
──今の『アリスギア』って、調査任務を遊ぶのが主ですよね。ひたすら調査というか……。
柏木氏&牟田氏:
(苦笑)。
──ユーザーの間では“調査兵団”【※】っていう言葉が出るぐらい、調査にひたすら勤しむ方々が頑張っているゲームなんですけれども。
柳瀬氏:
調査兵団……。
※調査兵団
元ネタは諫山創による漫画作品、およびアニメ作品『進撃の巨人』より。作中で調査任務がメインコンテンツであることから、調査を続ける様をユーザー達の間でネタとして定着した。
──調査兵団だけではなくて、もっとマルチで気軽に遊べる要素が増えたりとか、コンテンツが増えていけば、どんどんライトな人も入っていけるよう間口が広くなっていくのかなあとは思うんですよね。
島田氏:
このゲームの基本はもう、それこそ『Wizardry』【※】でして。潜って、「MURAMASA BLADE!」【※】を探すっていう遊びです。すごく単調なのは単調なんですけど、そこが好きっていう。逆に、そこを面白いと思えない人はたしかに厳しいかもしれないですね。
柏木氏:
本当に。世代的にドンピシャなんで。『Wizardy』で、10階で、ずーっとキャンプ張って戦い続けるっていう、まさにそれをモチーフにして作っているので。
※Wizardry
1981年にApple II用ソフトウェアとして発売されたコンピュータ・ロールプレイングゲーム。現代のRPGに多大な影響を及ぼしたタイトルのひとつであり、『Ultima』、『Might&Magic』と並び、世界三大RPGとして数えられている。
※MURAMASA BLADE!
『Wizardry』シリーズに登場する武器。妖刀村正をモデルにしていると思われるユニークアイテムで、極めて強力な性能を誇るため、MURAMASA BLADE!を追い求めてダンジョンに籠もる冒険者が続出した。
──その、“『Wizardy』でキャンプを張って戦う“っていうワードが通じる人が、おそらく結構上の方々だと思うんですけれども。
柳瀬氏:
僕、『Wizardy』はちょっと……。『イース』【※】世代ですね。
──敵から反撃を受けないように、半分軸をずらして戦うやつですよね。
柳瀬氏:
そうそう。そういう世代でした。
島田氏:
あと、『アリスギア』でストーリーモードをクリアーするのは、本当に通過点でしかなくて。
──そうですね。その後は、専用ギアを集めたりとか、キャラクターを育てたりとか、ギアのプラス値をマックスにしたりとか、ひたすら自分が満足するまでやり続けるっていう遊びですよね。
島田氏:
自分の中での最強パーティーができるまで遊ぶっていう感じでしょうか。
牟田氏:
今、先頭を走っている、いわゆる調査兵団と言われる人達と、下のレイヤーの人達の差が大きくて。「専用ギアがなかなか手に入らない」ってなったときに、どうしてもモチベーションがどんどん下がってきちゃう。だから、それの緩和で初心者用のマップでは専用のショットギアが出るシェルを配布するなどといった施策はしているんですよね。
今後はもっとコア層とライト層の間を埋めつつ、さらに、潜り続ける人のためのコンテンツを出していくっていうバランスを考えているところですね。
──専用ギアといえば、完全に特定のキャラクター専用という扱いになっていますが、今後ほかのキャラクターに着けられるように装備制限の解放などはされないのでしょうか?
柳瀬氏:
それは俺も気になっているところです。前の仕事で『アーマード・コア』【※】シリーズのデザインをやっていたので、『アリスギア』でもキャラクター専用のギアだと思いつつも、どこかでカスタマイズを前提にデザインしたところがあったんですよね。
※アーマード・コア
フロム・ソフトウェアが制作するメカカスタマイズアクションシリーズ。機体のパーツを組み替えて、多様なミッションに挑む自由度の高さとゲームプレイの幅、どこまでもストイックなゲーム性がカルト的な人気を博した。
柏木氏:
最初は専用装備のスロットに「特定のキャラクターに装備可能」というキットを入れれば他キャラクターでも装備出来るようにするという仕様はありました。
──ああ、そういう構想もあったんですね。
柏木氏:
いつか制限開放はされるかもしれないですけれど。バランス的に難しい事と、専用ギアがキャラクターのアイデンティティになっているので難しいと思います。ただ、仕組み的には可能ですね。
柳瀬氏:
あと色変えたいなーとか思ったりもして。
柏木氏:
色、変えたいですよねえ。
柳瀬氏:
『アリスギア』はビューワーモードがね、テストプレイのときから一番楽しかったんです。これって本当に模型の遊びかたと同じだなと思って。
──俺色に染めたいとか、統一感を出したいっていう気持ちですよね。
柳瀬氏:
そうなると、もうそれこそ『アーマード・コア』になっちゃうと思うんですよね。……でも、エンブレムもやりたいなーとか。
柏木氏:
エンブレム貼りたいっていう要望もいっぱい来ますからね。
柳瀬氏:
さっきの話にもありましたが、そういうユーザーが、今やるものがないんですよ。
島田氏:
でも、難しいところですよね。スマホゲームっていう範囲の中で、作ろうと思えば『アーマード・コア』とか『フロントミッション』みたいなものも作れるんでしょうけど、じゃあ出撃する前に、一体のキャラにエネルギーがこれで重量がいくつで、とかアセンブルを何十分もかけてやるのかっていう話じゃないですか。
柏木氏:
うん。
島田氏:
それで、何戦もこなしていくっていうときに、次のボスがこれだから、アセンブリをこれにしなきゃみたいな。据え置きのシミュレーションゲームとかだったからそれが楽しめるんでしょうけども。
──据え置き機の時間の使い方だからこそできた遊びではあるかもしれません。
島田氏:
どこまで複雑化していくのかっていうことに関しては、僕はこのぐらいがいい(笑)。
一同:
(笑)。
島田氏:
専用装備は専用装備であるがゆえに、最終的にはどのキャラクターも専用装備に収束していくんですけど。ただ『アリスギア』の場合、3キャラでチームを組んで戦うので、カスタマイズ要素としては、専用装備をとった後はチーム単位でカスタマイズしている、みたいなところですよね。だから、もっと僕、複数属性の混ざったマップを増やしてもいいんじゃないかなって思います。そうしたほうが編成で遊べるから。
──たしかに。「この敵にはこの子」って、交代する必要性が生まれますね。
島田氏:
アシュラマンみたいに戦っている途中で属性が変わるボスとかが出てくれば……。
柏木氏:
属性をある程度固定化して、高難度マップとかだけ変えているっていうのも、キャラを変えるのが面倒くさいっていう人がいるので、そうしている部分はありますね。でも、もっとディープに遊びたいっていう人もいて、そのせめぎ合いみたいなものがあって、程よい落としどころというのが難しいのは事実です。
だから、両方の人に対応するようにゲームモードを分けていたりとか。ちょっとゆるいゲーマーでも、可愛いキャラが見たいっていうような人達もいるし、せっかくちゃんとできるシステムになっているんだから、もっとちゃんとしたゲームがやりたいんだよ! って人もいる。
──両者が納得するバランスというのは難しいですよね。
柏木氏:
今まではゲームを作っているときって、もう難度はこれだ! ガーン! って決めたらそれで終わりだったんですけど、やっぱり運営型のゲームで、しかもアクションゲームなので、今までに手がけたゲームとは違った悩みが出てきていますね。それは遊ぶ側も同じように、これまでとは違った感覚だと思うんですよ。
開発中も「どうしてこれはこうなっているんだろう?」みたいな素朴な質問をいっぱいされて、「ああ、なるほど」と思ったこともすごく多かったんです。
──アクション以外の部分でも、ビューワーモードは眺めているだけでしあわせなので、どんどん進化してほしいですね。
鳥山氏:
3Dビューワーの着せ替えは、すっごく強化していただきたい。そうしたら、もう、ずっと眺めていられるので、ぜひともお願いしたいです。
──あそこで、攻撃や移動モーションを再生できるようにしたいんですよね。
鳥山氏:
そうなんですー。あと、ビューワーが充実すると原型作るときにすげぇ参考になります!
一同:
(笑)。
柏木氏:
頑張ります! 僕らが今できることは、とにかく愚直に、真面目に、モノを作ること。中途半端だと、どこかで綻びが出ちゃうので、そうならないようにひとつずつちゃんと作っていくってことですからね。それはデザインに関しても同じだし、ゲームの中身も同じだと思います。
やるからには、理想的な轟雷ちゃんが出てくるコラボを実現する
※『アリスギア』×『FAガール」映像集を電ファミオリジナルで作成しました
──『アリスギア』では、『メガミデバイス』に続き、ファン待望の『FAガール』とのコラボイベントが実現しましたが、コラボが決定したきっかけはなんだったのでしょうか?
島田氏:
あれはやっぱり、『メガミデバイス』で繋がりができたからっていう、そういう話?
野内氏:
そうですね。『メガミデバイス』はきっかけとして大きいですね。
柏木氏:
『FAガール』とのコラボに関しては、コロプラさん主導でお話しが進みました。
島田氏:
ああ、コロプラさんがやろうとしたってことなんですね。
柏木氏:
そうです。最初は、どのタイミングでコラボするのが良いのかは迷いました。もう少し『アリスギア』がタイトルとして確立してからという事も当然思いましたが、マーケチームに色々教えていただき、また最初にコラボするのであればコトブキヤさんとが良いと考えていましたので進める事になりまして。
ただ、やるからには、ちゃんとしたものをやりたい。『FAガール』のファンってとてもコアな人たちだと思うんですよね。
そのファンの人たちがガッカリしないように、ちゃんと喜んでもらえるものを作ろうと思って臨みました。
島田氏:
このコラボで模型のファンがゲームにも目を向けてくれればいいなと思います。
野内氏:
なかなかねー。プラモデルを作るのと、ゲームをやるのって、やっぱり人が持っている時間は同じなので、「どっちをやるか」ってなってきちゃうのはあるんじゃないかな。
島田氏:
それでも、少しは手にとってくれるかなと思うんですよ。
野内氏:
両方やる人はいるだろうと思います。今の人は、どちらかというと、ゲームがベースになっていて、それ以外の趣味として模型とかがあるのかなって個人的には感じています。
島田氏:
ああ、なるほど。
柳瀬氏:
鳥山さんがゲームも模型も、両方ガッツリやっているのがすごいなって思う。
鳥山氏:
ええ?(笑)。
柳瀬氏:
いや、あんなに模型をいっぱい作りつつ、なんでこんなに『アリスギア』でも一番ぶっちぎっているんだろうって。俺らよりもぶっちぎっていて「すげえ!」って。
一同:
(笑)。
鳥山氏:
『アリスギア』はですねえ。あのー、本当に大好きで……。
柳瀬氏:
鳥山さんがそう言うのは珍しい。
鳥山氏:
『アリスギア』は、休憩時間にタバコを吸うときにやるようにしたんですよ。そしたら最近タバコが増えちゃって(笑)。
柳瀬氏:
それはゲームをやる時間が増えているってことじゃないですか(笑)。
鳥山氏:
そうなんですよ。でも、元々やっぱり、アクションシューティングっていうのはすごく好きだったので。
柳瀬氏:
もともとはゲーム会社の人ですからね。
鳥山氏:
でも今って、僕みたいに『アリスギア』だけしかゲームをしないって人もいれば、いろんなゲームを掛け持ちで一日回してやっている人もいる。
その中には、『FGO』もやってアレもやって『アリスギア』もやってるって人もいると思うんですけど、そういう人達って、メカ少女かそうじゃないかはあまり気にしないで遊んでるんですかね? 僕はメカ少女のゲームだから『アリスギア』を遊んでいるんですけど。
柏木氏:
その人達は、話題があったからとか、誰かが勧めたからやっているというのがすごく多いんじゃないかな。
──スマホゲームを遊ぶ大きな理由のひとつって、「みんながやっているからやる」、というのが結構大きいですね。話題を共有するためのゲームという遊び方。
柏木氏:
スマホゲームって、セカンドゲームという考え方があって。メインでやっているゲームがあって、「そのお供にこれもどうですか?という戦略なんですけど。うちらも本当はもう少しそういう戦略をとればよかったんですけど、結構ガッツリ系になっちゃっているので。
牟田氏:
そ、そうですね(笑)。
柏木氏:
それは、いいところでもあり、悪いところでもある。コンシューマー系の短時間でガッツリやって、「うわあ、やったぁ! 今日も疲れたァ! でも面白かった!」っていうノリのままソシャゲになっちゃっているっていうのが『アリスギア』なんですよ。
──「なっちゃった」んですね。
柏木氏:
なっちゃったんです。
一同:
(笑)。
柳瀬氏:
ピラミッドさんらしいなって思いますけどね(笑)。
ブームが再燃している“メカ少女”ジャンル
──名残惜しいですが、そろそろ締めの話題に移らせて頂ければと思います。その前に、メカ少女というジャンルの現状を整理させて頂ければと。
最近はメカ少女というジャンルにいろいろなメーカーが参入してきていて、まるで“戦国時代”のような様相となっているかと思います。今、このメカ少女が溢れてきている現状について、どう思われますか?
野内氏:
そもそも論としては、今流行っているというより、ブームになっていたのは結構昔からですよね。
──『FAガール』の前で言うと、『武装神姫』がメカ少女ブームの火付け役とも言えると思います。
鳥山氏:
メカと女の子っていう文化は、昔からありましたし、そういったものをシリーズ商品として展開して発売したというのが、『武装神姫』のエポックメイキングなところだったんじゃないかなって思いますね。
それでだんだん人気が高まっていったのか、たまたま商品化できるタイミングになってきたのか、だと思うんですよね。
──鳥山さんはほかのインタビューで、工業生産の精度が上がってきて、角ばったロボットじゃなくて、女の子が作れるようになってきて、それがきっかけのひとつだったとおっしゃっていましたが。
鳥山氏:
それもありますし、あとは、子どもの頃からメカ少女っていうものを割と見てきたんですけど、そういう人達が商品企画の仕事をできる歳になってきたということだと思います(笑)。
──昔の雑誌などに載っていたものに憧れた人が、作る側に回ったということですね。
鳥山氏:
あの辺の時代は、あれですか。えっと、『ガルフォース』【※】とかがあったりもしましたね。そんなのを見ながら育って、ゲーム会社とか玩具会社に入った人が、やっていたんでしょうね。……ああ、だんだん喋りながらわかってきた気がしますね。技術っていうよりは、考え方とか、原型を女の子っぽく作ろうっていう意識になってきたからなんですよね。
柏木氏:
製品として、手に取りたいって思うような魅力を持ったものっていうのが、割と着彩されて出始めたっていうのが、『武装神姫』などが出てきた時期になると。
島田氏:
トレーディングフィギュアとか、ガチャとか、小さいサイズでも結構完成品で女の子を作れるじゃん、みたいなことは話していましたね。当時はコスト的にも間に合っていたしね。
野内氏:
ワンコインフィギュアとかですね。まあ、『メカ娘』はまさにそうですよね。
鳥山氏:
むしろ、ね。昔はコストが安かったのでね。このくらいグリグリ動く『武装神姫』で、それこそアーンヴァルの大きな羽がついていたりとか、ストラーフの、でっかい腕がついていたりして、あれでいくらで売っていたんでしたっけ。たしか3500円ぐらいでしたか。
柏木氏:
今ではありえないですよね。
鳥山氏:
ありえないですよね。なんですけど、逆に、だからできたのかもしれないですね。
“メカ燃え”と“洋服萌え”、それぞれの楽しみ方
──またメカ少女といえば、女の子であることを重視して洋服を着せて楽しむこともできますよね。『FAガール』では「マテリア」や「イノセンティア」などにドール服を着せて楽しむ人が少なからずいたと思います。
それは『武装神姫』がブームになった当初から今でも変わらなくて、この遊ばれ方、楽しまれ方は、どこまで想定していたのか、また、どう感じているのか、伺ってみたいです。
(画像左)フレームアームズ・ガール マテリア Normal Ver.
(画像右)フレームアームズ・ガール イノセンティア
鳥山氏:
『武装神姫』が世に出る以前は『ミクロマンレディ』などがありましたが、そもそもとして、1/12サイズで可動する立体物自体があまりなかったわけです。そういった物が出始めた頃に、ドールを好きな人達が1/12サイズの子に服を着せてみたら、「予想以上に楽しい!」という感じで盛り上がったんでしょうね。
──なるほど。とはいえ、そういった遊び方をされているのは、結構限られていると思うんですよね。
鳥山氏:
うん。すごくニッチです。なんですけど、1/12サイズで服を着せて面白いのは、確かなんですよ。それは、1/12サイズ用の服を出すメーカーがあるというのと、1/12っていうスケールの小物がいっぱい充実しているから、遊びの幅がとてもひろいんです。
──「AK-GARDEN」【※】などのイベントで服や小物を出品されているディーラーさんもいますし、このサイズ感がひとつのフォーマットになった印象もあります。
※AK-GARDEN
可動キット、ガレージキットやミニドール、ミニチュアを中心とした立体創作物の展示即売会イベント。1/12スケール前後(約13cm~21cm)のものを中心に扱うイベントで、公式、非公式問わずさまざまなジャンルが集う活気のある催し。
鳥山氏:
そうなんですね。そういうものがいろいろと集まって、ひとつの遊び方、文化になったんだと思っていますね。
島田氏:
『武装神姫』が出たころの話で言えば、あの時期には1/12サイズで、手軽な値段で買える素体が神姫だけだった。
鳥山氏:
それもありますね。
島田氏:
あと、元々が裸に近いデザインだということに加えて、武装をつける仕様の関係で、上腕と太ももを分割できるので、タイトな服を着せやすい、遊びやすかったという理由もあります。まあ結果論ではありますよね。
鳥山氏:
うんうん。
島田氏:
とはいえ、現状ではなかなかプラモデルの商品としては布服は組み入れづらい部分がありますよね。『メガミデバイス』の楓ちゃんなんかもそうなんだけど、前だれの部分だけを布でできるのかっていえば、作ろうと思えば作れるんだけども……。プラモデルで生産する個数のベースに、布の部分の生産が追いつかないので。
野内氏:
そうですね。
島田氏:
もし、そういう問題がクリアーできるんだったら、アーマーに布パーツを組み合わせたデザインをあらかじめ想定して作ることも、可能になってくるのかもしれない。
野内氏:
そうなったら面白いですよね。ぜひとも挑戦してみたいです。
僕らがやっているのは、深海の中で、いかに生きるかっていう“深海魚戦略”
──メカ少女というジャンルの今後についてなんですが……。月並みなお題になってしまうんですけども、みなさんはその未来をどう見ているんでしょうか。
野内氏:
それは、せっかくこの面子がいるので言いますけども、メカ少女としてのフォーマットを固めるか、固めないか、ですね。島田さんが「こうだ!」って言ってしまえば、決まってしまうようなこともあると思うんです。それがどうかなっていうのがありますね。
島田氏:
それはどうなんでしょうね? ジャンルとしてどうこうっていうよりは、僕はもう、メカ少女は今がバブルだと思っているので。発展っていう意味だと、単発の作品として、コンテンツとしてヒットする作品が出てきても、それがメカ少女としての盛り上がりなのか? っていうと、わからない。
野内氏:
それはまた別でしょうね。
島田氏:
『艦これ』さんの盛り上がりなんかは、まさにそれで。『艦これ』がヒットしたからって、『艦これ』の女の子を描く人は増えたんだけど、じゃあ、『艦これ』でまだデザインされてない外国の艦とかを、自分のメカ少女のフォーマットで描いてみようなんていう人は、先ほどの艤装を描くか描かないかという話と同じように、1000人にひとりとかなんです。
野内氏:
なかなかいないでしょうね。
島田氏:
それでも、いろいろな作品が出て、盛り上がって、その中からファンの人が多い作品が出てくるっていうのは、自分の商売にとってもありがたい話だし。その波に乗っかることにやぶさかではない(笑)。
一同:
(笑)。
島田氏:
ただ、それで、すごくジャンルとして、オタクカルチャーのメインストリームになるのかっていうと、僕は別に全然そんなことを思っていないし、なってほしいとか、そういう夢とか野望みたいなものもないし。なんか、このまま、また5年前、10年前みたいな、すごく変わり者の趣味の人が、細々とやっているジャンルに戻ったところで変わんねーかな、と。今から10年後、そのころに当時を振り返って、「10年前なんかは、『FAガール』とか、『アリスギア』っていう、いい時代があってね……」、みたいな話をしているかも。
柳瀬氏&海老川氏:
(笑)。
島田氏:
「あの時期、いっぱい商品が出てねえ、まあ俺は、今でもやってるけど」とか、そういう未来でも、僕は全然構わないんです。
野内氏:
ねえ……。
──では野内さんから、コトブキヤとしての『FAガール』の展開といいますか、展望というのはいかがでしょうか?
野内氏:
展望と言っても、『FAガール』はもうすでに3年目を迎えているので、一段落というところですね。だから、鳥山さんと『メガミデバイス』をはじめました、というところです。まあ、とはいえ、これからどうするかな、と……。
一同:
(笑)。
野内氏:
うちの展望は、どちらかというと、デザイナーさんとか、プロデューサーさんにお任せするというのが。うん、基本なので。……かな?(鳥山氏を見つめる)
鳥山氏:
振ったねえ(笑)。
野内氏:
今、作っているところじゃん? こっちは、ひと通り……一周目は終わったので。
鳥山氏:
あの、本当ねえ、島田さんと同じ意見なんです。ジャンルがすごく発展していくだろう。それに僕らは、どうにか貢献しなきゃならない! とは、それほど思ってないんですよ(笑)。
島田氏:
もちろん、売れてほしいとか、ファンの人に喜んでほしいとかっていうのは当然思っているんです。
鳥山氏:
そうそうそう。
島田氏:
思っているんだけど、じゃあ、今やっているコンテンツが、ガンダムに、エヴァになるのかなんて、まったく考えてないので。
一同:
(爆笑)。
野内氏:
ならないですよ!
島田氏:
逆に商売として「そろそろ潮時だね」ってなったからって、「商売にならないからやめましょうよ」ってなるかっていうと、「いや、別に趣味でやるし!」っていう心境です。
鳥山氏:
うんうん。
島田氏:
むしろ、今が趣味をやっていたらお金がもらえるバブリーな状態(笑)。
一同:
(笑)。
鳥山氏:
実際そうですね。
島田氏:
「趣味で描いていたのに、お金までもらえるの!?」みたいな。こういう状態が続いてくれれば、自分としてもそれはたいへんにありがたい話です。だけども、萎んだからってそういうジャンルをやらなくなるのかっていうと、そういう話でもない。
鳥山氏:
とはいえ、最近やっとガンプラしか作ってなかったような人も、女の子のフィギュアを恥ずかしながら買ってみようとか、買ってみたら「ああ、いいじゃん!」って言ってもらえる状態にはなってきていると思いますね。
──そうですね。受け入れやすくはなってきたという印象はあります。
鳥山氏:
はい。でも、もう取り込む層は大体取り込んだと思うんですよね。
──ほかに拡がらない?
鳥山氏:
取り込み切った感じはあります。ほかのメーカーさんで同じような企画がちょこちょこ出始めていますけど、多分相当好きな人じゃないと、続けられないと思いますね。
──そうですね……。
鳥山氏:
それこそ、島田さんじゃないけど年季が違うので。
──いきなりできるか? というと、そう簡単にいくものではないと。
鳥山氏:
うん。まあだからといって安心しているという訳ではないんですけれども。結局なんだろう……ニッチなんですよね!
一同:
うん。(同時に頷く)
鳥山氏:
言うてもニッチなんです! これは!
柳瀬氏:
それを言われたら、俺が話すことはもうないです。
一同:
(爆笑)。
柳瀬氏:
その言葉が出ちゃったら(笑)。
鳥山氏:
ああ、ごめんなさい!
野内氏:
まあまあ。
柳瀬氏:
本当にそうだと思いますよ。
鳥山氏:
ねえ?
柳瀬氏:
なんか、流行っている風に見えるけど。ニッチだよなあーって思いますよね。
鳥山氏:
いや実際、立体物っていう方向で言ったら流行っていますよ。
野内氏:
うん。
島田氏:
でも昔からやっている人ほど「今が異常!」って思っている。
鳥山氏:
ははは。たしかに。
柳瀬氏:
流行っているけど、模型業界や立体業界全体で見ると、まだニッチなんじゃないかなっていう気はしていて。
鳥山氏:
いや、意外と……比率的に言えば、ガンプラっていうのを除けば……いや、除くわけにはいかないですけども!
一同:
(笑)。
柳瀬氏:
オタク業界全体で見ると、すごくニッチだなって感じるときがあって。
鳥山氏:
ああ、それはありますね。
柳瀬氏:
例えば、アニメやゲームの仕事でいろんな会社の人と話すんだけど、「あ、(メカ少女が)まだ知られてない!」ではないでしょうか?っていうことが結構あったりするので。こんなに流行っているのに目に届いてないんだって思うときがたまにあります。
鳥山氏:
ありますねえ。
──なるほど。
柳瀬氏:
逆に言うと、ニッチの中で、いかに新しいものを見せていくかっていうことを考えていかないといけないし。だからねえ……『FAガール』もアニメ化はしたけど、なんか超えられない壁はまだあるなって思います。
島田氏:
「深海魚戦略」ってやつだよね。
柳瀬氏:
ん?
鳥山氏:
深海?
島田氏:
僕らがやっているのは、深海の中でいかに生きるかっていう。
鳥山氏:
ああ、深海魚ね!
島田氏:
欲を出して陸上に上がると、ガンダムっていう大きな鳥に喰われるので……。
一同:
(爆笑)。
島田氏:
うかつに「そろそろちょっと、両生類に進化しよう」ってなるとパクッ! と。「いやいやいや、深海いいとこじゃん。深海をひろげようよ」って(笑)。
野内氏:
潜っていけばいいのか(笑)。
鳥山氏:
上手いことを言いますねえ!
島田氏:
深海のサメぐらいになればいい。深海での、食物連鎖の上のほうっていう。ただ、釣り上げられると、多分浮袋が出て死んでしまうという。
一同:
(笑)。
──たしかに(笑)。
見てみたいけれども、来てほしくはない「メカ少女が現実にいる世界」
──時間もそろそろ迫ってきましたので、最後の話題になるのですが、ぜひ技術面についても伺いたくて。例えば、現実で人工知能ですとか、そういった技術が発展して、このサイズで動くメカ少女が実在する未来が来るかもしれない。そういった、未来への可能性についてはどう思われますか……?
柳瀬氏:
(爆笑)。
野内氏:
何を言っているんだ……。
鳥山氏:
わはははは。
柏木氏:
高尚な感じになってきているぞ!
野内氏:
でも、これは多分、技術的にできますね。やりたい人が勝手に作ると思いますよ。
柳瀬氏:
すごいな……でも、それは……作らなくていいんじゃないの。
野内氏:
なんかねえ、そんなものだと思っていますよ、もう。
鳥山氏:
何十年後には、できていると思いますよ。うん。
──その未来が結構近いところにきているのかな、という感覚があります。
島田氏:
本当に、こんなサイズの、動いて喋れる美少女ロボットみたいなのが出るとして、今、絵で描いているようなやつよりも最高にキモいですよね。もちろん買うけど!
一同:
(笑)。
柳瀬氏:
買うのか!
鳥山氏:
本当に人に見せられないかもしれないよね。
島田氏:
サブアカを作って「買ったぜ!」みたいなつぶやきをするかもしれない。
一同:
(笑)。
鳥山氏:
わざわざサブアカを……。
島田氏:
メインアカでは明かせない!
柳瀬氏:
変な話ですけど、来てほしくないんですよ。
──その未来が、ということですか?
柳瀬氏:
今は絵で仕事をしながら楽しく遊べているのに、それが現実に来ちゃうとやりづらくなるなぁって。
鳥山氏:
(笑)。
柏木氏:
そしたら、ロボットのデザインの仕事とか、あるんじゃないですか?
柳瀬氏:
いや、どうでしょうね……。
柏木氏:
いやいや、AIBO【※】とかだったりとかあるじゃないですか。
※AIBO
ソニーが1999年より販売しているペットロボットシリーズ。2018年より、デザイン変更とともに名称がすべて小文字の「aibo」となった。名称は「Artificial Inteligence roBot」の略で、AI(人工知能)、EYE(視覚)、相棒(aibou)にちなむ。2001年に発売された「ERS-220」は、『超時空要塞マクロス』シリーズで著名な河森正治氏のデザインで話題を呼んだ。
柳瀬氏:
ああ、河森正治さんがやっていますね。ロボならいいですよ。女の子、メカ少女がリアルになると困るなぁって、正直、そう思いながら働いています。来なければいいと思う、そんな未来は(笑)。
鳥山氏:
市販されるかどうかは別としてですけど、研究はされそうですよね。
──愛玩用ロボットとしての可能性は追求される気はしますね。
鳥山氏:
真面目な話をすると、バッテリーの問題さえクリアーできれば実現すると思いますよ。
柳瀬氏:
AIBOとか、そういうね、ペットの代わりという方向性は全然アリだと思うし。ただ女の子はちょっとなあ。
野内氏:
絶対ね、作る人間はいますよ。
鳥山氏:
まあ、その未来が見たいかどうかっていうと、ちょっとどうかなあ。
一同:
(笑)。
鳥山氏:
それがゴールではないのでね。
柳瀬氏:
そうですね。そこを目指してやっているわけじゃない。
海老川氏:
Siriに話しかけるだけでも、ちょっと恥ずかしいですからね。
鳥山氏:
そうなんです!「Hey,Siri!」って言わせないでくれよって。
島田氏:
メイドロボとか出てきたら最悪ですよね。「ご主人様!」って言われても、「やめてくれよぉ! 俺はそんな大した存在じゃない!」って言いたくなる。
一同:
(爆笑)。
島田氏:
「俺は君をローンで買ったんだ!一括で買えなかったんだ」って。
鳥山氏:
それ、なんか漫画になりそう!
島田氏:
いや、それはさ。ドーラーの人【※】とかを見ていて感じることの延長線上なんですけど、やっぱ、ドーラーの人も、ものすごいお金持ちの人ばっかりじゃないから、なんか、一点豪華主義っていうか、六畳一間の畳とか、すごい生活感のある、部屋干しの衣装とかかかっているんだけども、ドールのある一角だけはすげえ豪華で。ヨーロッパ風のお人形さんがいるんだけど、カメラをこうやって角度を変えたら、とたんに生活が見えたりとかさ。
メイドロボを買うのはいいんだけど、そこがお屋敷ならいい。お屋敷ならいいけどさ、散らかってる自分の部屋なわけでしょ。
※ドーラー
ドール愛好家。なかでも、等身大のドールを愛する人達の事を指す場合もある。1/6スケールや1/3スケールのドールを好む人間とは区別されて使われる事もあるが、境界線は曖昧である。
一同:
(笑)。
島田氏:
やっぱりそれって、高級車を買ったけど自宅ガレージがないから、遠くの駐車場に駐めてわざわざ歩いてます、みたいな感じになってくるじゃないですか。トータルとして様になっていないと、自分の中ですごく恥ずかしくなってくる。それがドールだと、視界が箱庭的にそこを作り込むっていうのがあるけど、スケールがでかくなればなるほど、この子に見合う全体的な生活のレベルが必要になって、どうなんだ? っていう。
鳥山氏:
すごい、プレッシャーとストレスが溜まりそうな(笑)。
島田氏:
この子が尽くしてくれれば尽くしてくれるほど、俺はそれに値する人間なのか?! みたいな。
──あくまで二次元だから、作品の中だから、いい。現実に来てほしいかというかどうかは、また別の話と。
鳥山氏:
見てみたいですけどね。
島田氏:
技術的には見てみたいですよ!
野内氏:
勝手に作ってくると思う。それが商売になるかは、また別の話で。 私の知り合いでAIBOを作っている人間がいて。 やっぱりね、そういう話はしているので。もう中でもやりたい人と、やりたくない人がいるようですよ。別に技術屋さんはそんなものに興味はないけど、オタクな人はやりたいっていう人がいるので。だから自然にそうなるんだろうなと。
鳥山氏:
しかし……いやあ、すごいなもう。最後の締めにしては、ずいぶんと否定的な結論に……。
柳瀬氏:
なんて否定的な質問をするんだろうと思いましたよ。
一同:
(笑)。
鳥山氏:
でも、どのくらいの人が欲しいのかはわからないので、訊いてみたい気はしますよね。一般の人達に。
柏木氏:
SF的にくるかこないかでいうと、「くる」と。ほしいかほしくないかでいうと……「ほしいけど言えない!」。
一同:
(笑)。
島田氏:
とりあえず買って、買ったことは黙っておこう。
──そうすると、まるでラブドールみたいな扱いになっちゃいますね。
柳瀬氏:
本当にそうですね。女の子のフィギュアでやっているわけだから。
野内氏:
女の子のフィギュアは、まさにうちの会社だとそうでしたから。10数年前、本当にアダルトゲームのキャラのフィギュアが多かったですし、本当に最近ですね。
島田氏:
ああー。
──そうですねえ。
野内氏:
うん。うちは、15年か。
鳥山氏:
健全になったねえ……!
柳瀬氏:
健全になったね、って(笑)。
海老川氏:
逆じゃないんですか(笑)。
野内氏:
一般化しちゃったと。おそろしい話です。
柳瀬氏:
麻痺したのかもしれない。
──本当に麻痺してきているのかもしれないですね。……と、そんなこんなで、オチとしてはたいへんな話題になってしまった感はありますが、みなさん、本日はお集まりいただき、本当にありがとうございました!
一同:
ありがとうございました。(了)
古くからオタクカルチャーとして脈々と受け継がれてきたメカ少女ジャンル。そして、今では貴重なカスタマイズシューティングアクションゲーム。そんなジャンルで活躍し続けるクリエイター達を招いた座談会だったが、皆さんはどんな感想を抱いただろうか。
『アリス・ギア・アイギス』のクリエイター陣、開発メーカーを見た時、そして実際にゲームを触った瞬間に「このゲーム、愛の深さが尋常ではない、本気(マジ)だ!」と直感し、どうにかこのゲームの熱量の高さ、関係者の深いこだわり、仕事ぶりを明らかにしようというのが今回の取材の主なテーマだった。
「シューティングでずっと戦っていけるIPを作りたかった」、「社員一同、魂を込めて、真面目に、愚直に作るしかない」と力強く語るピラミッド 柏木氏の言葉通り、『アリスギア』は本取材後もアップデートを重ねて、メキメキとクオリティアップを果たしており、どこまでもゲーム作りに真摯な姿勢は、長年に渡って数多くのゲームを作り続けてきた生粋のゲームメーカーだからこそのこだわりと、ゲームへの“愛”ゆえなのだろう。
そして、メカ少女の新たなフォーマットを切り拓いた島田フミカネ氏の切れ味鋭い言葉の数々とデザイン論や仕事に対する姿勢が窺えたのも大きい。鳥山とりを氏が語ったように、「メカニックを衣装として解釈するデザイン手法」や、作品の世界観を徹底して尊重するこだわりの強さ、また、銃器や兵装だけでなく、動物のモチーフでデザインを揃える几帳面さと造詣の深さは、同氏の代表作である『ストライクウィッチーズ』シリーズの人気、キャラクターの魅力も大いに納得させられる。
島田フミカネ氏は取材中、「伊達に10年以上この仕事をやっていない、まだまだ若い者には負けないぞ!」と熱っぽく語っていたが、その言葉には確かな自信と、「オレを倒しに来い!」と、“新しい世代へのエールを送っているのではないか”と感じた次第だ。
一大ブームとなった『武装神姫』の生みの親である鳥山とりを氏をはじめ、クリエイター陣が口を揃えて「メカ少女はニッチなジャンル」だと言い切りつつも、全力で走り続けるクリエイター達の姿勢、力強い言葉からは、並大抵ではない“情熱”と“愛”を感じずにはいられない。
そんな愛と情熱溢れるクリエイター達がエネルギーを注ぐメカ少女ジャンルと『アリスギア』がどのように発展していくのか、今後の動向に注目していきたい。(2018年5月7日収録)
「アリス・ギア・アイギス」公式サイトはこちら フレームアームズ・ガール公式サイトはこちら【プレゼントのお知らせ】
アリス・ギア・アイギス『吾妻楓』プラモデルを1名様にプレゼント!
詳しい応募方法は電ファミニコゲーマー公式Twitter(@denfaminicogame)をチェック!『アリスギア』メカ少女座談会を記念して
— 電ファミニコゲーマー (@denfaminicogame) November 13, 2018
プラモデル「吾妻楓」を
1名様にプレゼント!@denfaminicogame
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当選はDMでお知らせします。
デザイナー島田フミカネも参加している座談会はこちら↓↓https://t.co/M82fKOTDmL pic.twitter.com/tSgkM353ch
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