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Point
食虫植物ハエトリグサの捕虫器は、トゲへの機械的刺激で捕虫器が閉じて虫を捕まえる
・発電機を使って温度の低い「低温プラズマ」を作ってハエトリグサにかけたところ、機械的刺激なしに捕虫器が閉じた
プラズマに含まれる分子が、細胞のシグナル伝達系を刺激して反応が起こったものと考えられる

ハエトリグサの捕虫器のトゲにハエが触れると、瞬間的に捕虫器の葉っぱが閉じ、ハエは捕らえられてしまいます。物理学者は、この捕食過程がオゾンのような「低温プラズマ」の放出によって引き起こされることを発見。研究は“annual Gaseous Electronics Conference”という学会で発表されました。

研究では、まず発電機を使って、イオン化した空気から「低温プラズマ」を生成。それをハエトリグサの捕虫器が反応しないくらい、優しく吹き付けました。通常ハエトリグサの罠は、捕虫器のトゲが2本以上刺激されることで生み出される電気信号によって閉じます。しかし、プラズマ流の中に含まれる、過酸化水素、一酸化窒素、オゾンといった高い反応性を持った化学物質も同様の効果を引き起こし、トゲへの機械的な刺激を伴わずに罠を閉じさせることがわかったのです。

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低温プラズマに含まれる活性酸素や窒素分子のあるものは、細胞シグナル伝達系などの生物機能で重要な働きをしています。しかし通常、シグナル伝達系の研究は培養細胞の複雑な解析を伴います。ハエトリグサを使った今回の研究では、罠が閉じるという現象を直接観察することで、シンプルに研究できることが示されたのです。

シグナル伝達系を理解することは、新しい世代の「インテリジェント材料」の開発に役立ちます。ハエトリグサが必要なときに罠を閉じるように、シグナル伝達系を介して必要に応じて形を変えるような材料の開発が期待されています。また、次の研究課題も単純明快です。ハエトリグサの様々な部位がどのようにして、罠を閉じるのに適切なタイミングを知るのかさらに詳しく調べることです。

 

ハエトリグサがプラズマに反応するということは、植物が生体機能としてプラズマを利用しているという可能性があることを示しています。ハエトリグサは、シグナルとしてプラズマを放出さえしているかもしれないのです。

 

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via: Science/ translated & text by SENPAI

 

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