国により法や処罰も異なる。しかしこのほど「法によって裁かれる正義とはいったい何なのか」ということを考えずにはいられないようなニュースが、中央アメリカ中部の共和制国家エルサルバドルから飛び込んできた。この国ではカトリック教会の影響力が強く、1998年に中絶を全面的に違法とする法律が制定された。そのため女性が中絶すると、法により罰せられる。このたび性的虐待を受けた末に妊娠・出産したある女性が、中絶を試みたとして殺人未遂罪で20年の懲役刑に直面していることを『The Guardian』『Mirror』などが報じた。

エルサルバドルのサン・ミゲルにある貧しい農村地域で暮らしていたイメルダ・コルテスさん(20歳)は、12歳頃から年老いた継父(70歳)に性的虐待を加えられていた。昨年に継父の子をトイレで出産したイメルダさんだが、母親は娘の深刻な痛みと出血に気付き、すぐに病院へ連れて行った。イメルダさんは自分が妊娠していたことに全く気付いていなかったようだ。

この時診察した緊急治療室の医師が、イメルダさんが赤ちゃんを中絶しようとしたのではと疑いを抱き、警察に通報。トイレで生まれた乳児は生きており健康状態も良好であったが、イメルダさんは殺人未遂罪で起訴され、病院を出た1週間後の2017年4月に保釈金なしで刑務所に拘留された。

イメルダさんが病院にいた間、継父がやってきて「性的暴行をバラしたら、お前やお前の母親、きょうだいを殺すぞ」と脅迫した。これを耳にした別の患者が看護師に知らせ、病院側は警察へ通報している。しかし現在も、継父は逮捕されていない。

エルサルバドルでは、どんな状況においても中絶は違法となる。しかし全面的に中絶を禁じてしまうことで、女性たちへの迫害の事実も増加している。特にイメルダさんのようにほとんどの被害者は貧しい独身の農村民で、流産や死産といった故意の中絶を行っていない場合においても、証拠が希薄ゆえに有罪判決を受ける結果になってしまうようだ。中絶合法化を支援する活動家らによると、現在イメルダさんの他にも24人の女性が法律に違反したとして懲役15~30年の刑に服しているという。イメルダさんの場合、検察側からは自分の犯罪を正当化させるために性的虐待をでっち上げたと非難されていたがDNA検査の結果、子供の父親は継父であることが明らかになった。

イメルダさんは拘留後の精神鑑定で、虐待やトラウマの認知およびその影響による情緒障害も見受けられたものの拘留されてから18か月の間、イメルダさんは何の心理的支援も受けていない。イメルダさんを弁護する弁護士の1人はこのように話している。

「今回のような女性に対して最も極端でスキャンダラスな不当行為を、私はこれまで見たことはありません。被害者としてのイメルダさんの人権がことごとく侵害されています。イメルダさんは、心身ともに相当な影響を受けているにもかかわらず、彼女の心理的感情はまるで無視されているのです。」

イメルダさんの公判は12日から開始されたが、中絶を試みたとして殺人未遂罪で起訴されているだけに20年の懲役刑を科せられる可能性もあるという。

このニュースを知った人からは、「望まれずに生まれた子供たちのどれほど多くが、施設に預けられているか考えてみたらいい。中絶を全面的に禁止することは、そんな子供たちを増やすことに他ならない。必要とされない子供がどれだけ将来、幸せになっていると思うんだ。ゼロだよ」「イメルダさんの体はイメルダさんのものであり、子供をどうするか決断するのもイメルダさん自身という考え方は当然のこと」「カトリックの考え方は、結局、子供が神からの授かりものという考えを歪めているだけだ」といった声があがっている。

画像は『The Guardian 2018年11月12日付「Woman who bore rapist’s baby faces 20 years in El Salvador jail」(Photograph: Alamy Stock Photo)』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 エリス鈴子)

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