今、あなたが住んでいる大事な住まいの「本当の寿命」を知っていますか?

今回は、知っているようで意外と知らない、住宅の「本当の寿命」について解説したいと思います。

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法定耐用年数ってなに?

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国税庁では法定耐用年数を、木造の住宅なら22年、鉄筋コンクリート等の住宅なら47年と定めています。

実は、これはあくまで税法上の「減価償却資産の耐用年数」であり、建物が実際に「使用に耐えうる期間」ではありません。

空き家
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言葉の定義として「耐用年数」といえばその建物を「使用できる年数」と考えるのが自然ですし、さらにそこへ「法定」が付くのですから、法定耐用年数とは「法で定められている、建物を使用できる年数」と考えてしまうのも当然です。

このように、本来、税法上で利用されている建物耐用年数が、一般的には建物を使用できる年数(寿命)と誤認されてしまっているのです。

 

本当の耐用年数とは?

住宅
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そもそも税法上で定められた「耐用年数」が経済的な建物評価に用いられ、それが「慣行」になってしまったことが、本当の耐用年数(実際に使用できる期間)が正当に評価されなくなった理由です。

では、本当の耐用年数とはどのように評価・算定すればいいのでしょうか。

実は、本当の耐用年数ともいうべき「住宅の使用価値を反映した耐用年数」を、実際の建物評価に用いようという取り組みが少しずつ始まっています。

中古住宅
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国土交通省は「期待耐用年数の導出及び内外装・設備の更新による価値向上について」というレポートのなかで、建物の耐用年数を「経済的耐用年数」、「期待耐用年数」、「物理的耐用年数」の3つに分類し、建物の評価方法には「期待耐用年数」を採用したらどうかという提言をしています。

このレポートのなかでは、期待耐用年数の定義を「建物が通常想定される自然条件で標準的な維持管理がなされた場合に通常必要とされる使用価値を維持し得る期間」としています。

なにやら難しい定義ですが、簡単に言えば「建物を通常の使い方で、通常の手入れをしてきた場合に、その建物が通常どおりの性能を発揮していられる期間」だと思ってください。

 

期待耐用年数で建物を評価すると何が変わるの?

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宅建業者(不動産会社)や銀行などの金融機関が建物を評価する場合、一般的には原価法(いま新築したと仮定した建物価格から老朽化した分を差し引く方法)が用いられます。

これまでこの原価法では商慣行として法定耐用年数を採用していたため、木造住宅の場合、築後20年超でほぼ価値ゼロと評価されてきた建物価格ですが、先述の期待耐用年数を用いることで「質の高い建物」については20年を超えても建物に価値(価格)が付くことになるのです。

リフォーム
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2014年に国土交通省が公表した「中古戸建て住宅に係る建物評価の改善に向けた指針」では、木造であっても一定の劣化対策(構造躯体等)を講じた住宅では50~60年程度の耐用年数、さらに長期優良住宅の認定を受けたものであれば、なんと「100年」程度の耐用年数(基礎、躯体)を想定しています。

上記の指針を受け、すでに公益財団法人 不動産流通近代化センターが提供する「戸建住宅価格査定マニュアル」では、2015年に内容を改定し、質の高い住宅、良好な維持管理やリフォーム等が適切に行われている住宅などはその性能に応じた耐用年数を設定して査定価格に反映しています。

 

ただし、売買する場合には注意が必要

住宅
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建物の評価方法が変わり、これまで価値がゼロと評価されていた建物に「値段」が付くことになっても、実際に「売買」する場合には注意が必要です。

せっかく値段がついても、その「価格どおりで売れるかどうか」はまた別の問題なのです。

古くなっても大事に手入れをして愛着をもって暮らしてきた大切な「我が家」に価値が付くことは嬉しいことですが、それが「値段に反映されない」としたら「何のための評価?」と思うかもしれません。

しかし、建物の「本当の寿命」を知るためには、この評価方法の変化がとても役に立つのです。

【参考】

※ 国土交通省 主な減価償却資産の耐用年数(建物・建物附属設備)

※ 国土交通省 「期待耐用年数の導出及び内外装・設備の更新による価値向上について」 

※ 公益財団法人 不動産流通近代化センター 国の建物評価指針を本格的に導入する「戸建住宅価格査定マニュアル」の改訂について

※国土交通省 「中古戸建て住宅に係る建物評価の改善に向けた指針」 

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