記録的な大雨などにより、キノコが豊作といわれている中で、山に入って、遭難してしまう人が全国で相次いだ。

報道によると、長野県では、8月から10月中旬にかけて、20人が遭難して、13人が滑落などで死亡した。高齢者が滑りやすい地面まで、1人で採りにいくなど、キノコ狩り特有の事情が背景にあるようだ。

秋が深まり、シーズン終盤になっているが、近くの山にキノコを採りに行く人も少なくない。ただ、山といっても、誰かの所有地だろう。キノコ狩りの法律問題について、東山俊弁護士に聞いた。

●勝手にキノコを採取すると、窃盗罪や森林窃盗罪にあたる

「まず、山へ立ち入ること自体については、私有地(民有林)であれば、犯罪となることはありません。ただし、所有者には、立ち入りを禁じたり、退去を求めたりする権利がありますので、立ち入り禁止の掲示や所有者の指示には、素直にしたがう必要があるでしょう。

次に、キノコの採取についてです。キノコは山林や野原に生えるものですから、その所有者が、キノコの所有権を有することになります。勝手にキノコを採取すると、窃盗罪にあたります(刑法242条)。

ただし、森林でキノコを採取した場合には、森林の管理・占有が緩やかであることなどが考慮されて、より刑罰の軽い森林窃盗罪となります(森林法197条)。いずれにしても、犯罪になりますし、所有者から損害賠償を請求される可能性もありますので、注意すべきでしょう」

●特別保護区ではキノコ採取が禁止されている

それでは、国が保護管理している「国有林」の場合はどうなるのだろうか。

「原則として、国有林の立ち入りは制限されておらず、登山など、レクリエーション目的であれば、入林届も必要ないようです。一方、条例によっては、立ち入り自体が禁止されている場所に無断で立ち入ると、罰則が科されることもあります。

また、国有林の場合も、民有林と同じように、勝手にキノコを採取すると、森林窃盗罪が成立します。国有林では、レクリエーション程度であれば問題にしない場合もあるようですが、違法であることには変わりはありません。特に、国立公園や国定公園では制限が厳しく、国定公園内でキノコを盗んだ男性が森林窃盗罪で書類送検されたという報道もあります。

なお、国立公園や国定公園に関しては、特別保護区の指定がされている場合、キノコの採取が全面的に禁止されています(自然公園法21条)。

キノコ狩りする際は、立ち入りが禁止されていないか、キノコの採取が禁止されていないか、確認することです。無用なトラブルを起こさないためにも、事前に十分調査すべきでしょう」

なお、国有林を管理する林野庁の担当者は、弁護士ドットコムニュースの取材に対して、「国有林でのキノコ狩りを考えている場合は、その地域の森林管理署に問い合わせてほしい」と話していた。

(弁護士ドットコムニュース)

【取材協力弁護士】
東山 俊(ひがしやま・しゅん)弁護士
東山法律事務所所長。大阪弁護士会所属。家事事件はもちろん、一般民事事件や刑事事件も幅広く取り扱っている。
事務所名:東山法律事務所
事務所URL:http://www.higashiyama-law.com/

勝手に「キノコ狩り」、実は違法だった・・・過去には「森林窃盗」で摘発された例も