11月13日福岡県プロ野球合同トライアウトが行われ、ベイスターズ須田幸太が参加。毎年トライアウトから獲得される選手はごく僅かの狭き門だが、現役続行へ一縷の望みをかけて、各球団のスカウト陣にアピールした。

 須田はJFE東日本から10年ドラフト1位で入団。先発としては期待されたほどの活躍は出来なかったが、15年途中から中継ぎに転向してからは、スピンの効いたストレートで打者を牛耳るスタイルを確立。クアトロKの川村丈夫中継ぎ時代を彷彿とさせるようなピッチングで、16年には62試合に登板するなど、大車輪の活躍をみせ、チーム初のクライマックスシリーズ進出の立役者となった。また、9月下旬の雨中の登板の際に左太もも肉離れを発症。CSでの登板が危ぶまれたが、驚異的な回復力を見せ、ファイナルステージのカープ戦、大ピンチの場面を全てストレートで新井を打ち取り、“須田幸太ここにあり”を印象付けた。翌年以降は登板過多の影響からか、なかなか調子が上向かず、今シーズンオフに戦力外を告げられた。功労者だけに、引退試合などのセレモニーを打診されるも本人は現役続行を希望し、トライアウト挑戦となった。

 トライアウトでは打者3人をノーヒットに抑え、結果を出すことが出来た。最後のバッターはなんとヤクルト鵜久森淳志。14年前、高校三年生の春、須田が土浦湖北高校、鵜久森が済美高校でのセンバツで対戦し、ホームランを打たれている因縁のライバルなのだ。振り返れば、17年開幕直後の4月2日、代打満塁サヨナラホームランを放った鵜久森に投げた相手も須田だった。ここに来て最後にマッチアップされるとは、本人も「運命のいたずら」と振り返るほどの、ドラマチックな展開であった。

 今年はファームで過ごす時間が大半だったが、練習時にルーキーピッチャーが打撃練習のバウンドしたボールを素手で捕ったところ、「利き腕で捕るな」と注意していた場面を目撃した。チームの為に、そしてチームメイトの為に、大事な事をサラっと指摘できる人間性を垣間見る事が出来た。また、ヒーローインタビューでは、娘に向けたコメントを残す良きパパの一面を持つ優しい男。残念ながら、来期はベイスターズユニフォームを着て戦う可能性は無いが、ファンに愛され、稀少なリーダーシップを持つ男へ、他球団から吉報が届くことを願っている。

取材・文・写真 / 萩原孝弘

須田幸太