米倉涼子主演のドラマ/『リーガルV~元弁護士・小鳥遊翔子~』。。弁護士資格を剥奪された自由奔放な主人公が、ワケありの仲間たちとともに法廷劇を繰り広げる。

日本シリーズで放送休止を挟んだ先週放送の第4話は遺産相続をめぐるお話。視聴率はググッと回復して16.5%。相変わらずの高視聴率をマークしている。

資産家俳優・竜雷太
峰島興業の会長・峰島恭介(竜雷太)が病死した。遺産総額200億円! 妻と離婚し、遺言書も残さなかったため、息子の社長・正太郎(袴田吉彦)が全額を相続する流れだったが、そこに突然、若い女性・峰島玲奈(島崎遥香)が現れる。

銀座の高級クラブでホステスをしている玲奈は、自分は峰島の妻であり、遺産相続の権利があると主張。婚姻届を出したのは、峰島が死ぬたった4時間前のことだった。玲奈が相続できるのは遺産の半分の100億円。

「年の差50歳、100億円の一夜妻」としてメディアで騒がれる玲奈。遺族は婚姻の無効と相続権の不存在を主張して法廷で争うことに。巨額の報酬に目がくらんだ翔子(米倉涼子)は玲奈の弁護を引き受ける。

竜雷太は今年の春ドラマ『コンフィデンスマンJP』でも遺産をめぐって子どもたちが揉め事を起こす資産家を演じていた。夏ドラマの『ハゲタカ』では大手電機メーカーの会長役を演じている。恰幅の良さと重厚感がある資産家俳優だ。なお、竜自身は設立した芸能事務所が破産するという憂き目に遭っている。

なぜかやたらと女性に厳しい米倉涼子
「私 おじいちゃん子だったから超枯れ専なのよ」

玲奈の弁護を引き受けた京極法律事務所の面々だが、今回も翔子は依頼人に対して「だって、彼女の全身から嘘の匂いが漂い出てるから!」と失礼なことを言う。翔子は第2話でもパワハラで訴えられた女性役員(斉藤由貴)に「ああいう女に限って、裏じゃ鬼みたいに豹変すんのよ」と失礼なことを言っていた。翔子はなぜか女性に厳しいのだが、おっさん視聴者の胸中を代弁しているのかもしれない。

玲奈によると、看護師をしていた頃に峰島と出会い、峰島の紹介でホステスになった後、一緒に住むようになったのだという。峰島は倒れて入院した後、自ら結婚を切り出し、婚姻届を提出した直後に亡くなった。それを聞いた翔子は「やっぱり嘘っぽいよね!」と吐き捨てる。俺が依頼者だったら帰るな……。

弁護士として初めて出廷する京極(高橋英樹)を応援するため、教え子の女子大生たちが駆けつけるのだが、全員一斉にバッと服をめくると(服をめくるカットが繰り返される)京極の顔がプリントされたTシャツを着ていた。……この演出、いる? 『リーガルV』のおっさん目線がよく現れていたシーンだった。

遺産200億円をめぐる争い
法廷で峰島の友人・横山が突然、遺言書があったことを思い出す。遺言書のありかが焦点となるが、一方、玲奈は子どもの頃に峰島と交友があったことが判明する。また、玲奈は祖父が経営していた牧場の再興を目指していた。

峰島はかつて善人を装って玲奈の祖父が経営していた牧場に接近し、土地を買い上げて工場用地として売却してしまっていた。結局、工場建設も頓挫。玲奈の祖父は失意のうちに自殺していた。「おじいちゃん子」という彼女の言葉に重みが出てくる。玲奈の正体を知った翔子に、玲奈はこう言ってのけた。

「牧場を潰した男から再建費用を取り返しただけよ」

その後、正太郎が全額相続するという遺言書が見つかるが、法廷であっさり偽造だと見抜かれる。うーん、小物。正太郎は有印私文書偽造の罪に問われ、相続権を失うことに。

これで玲奈が満額200億円を相続するのかと思われたが、過去に翔子と因縁のある原告側の弁護士・海崎(向井理)が峰島の担当医を連れてくる。本当の峰島の死亡時刻は午後10時だったが、玲奈の頼みで死亡診断書を書き換えていたのだ。玲奈は峰島が死亡した後に婚姻届を提出、担当医には報酬として3000万円を渡していた(そのお金はどこにあったの?)。婚姻は不成立、玲奈は虚偽診断書作成罪に問われることとなり、当然ながら相続権を失った。

元ネタは紀州のドン・ファン騒動?
その後、峰島の本物の遺言書が見つかる。峰島は玲奈の祖父の牧場を潰したことを後悔しており、200億円は牧場に全額寄付するというものだった。峰島は玲奈の出自に気づいていたのだ。玲奈は事実を知り、留置場の面会室で涙を流す。

峰島と玲奈の間に愛情があったのかどうかはわからない。少なくとも玲奈の側には愛情はなかった。峰島は牧場を潰してしまった後悔から玲奈を世話したのか、玲奈を愛したから牧場を潰したことを後悔したのかは判然としなかった。

祝杯をあげる翔子たちだったが、峰島の遺産は玲奈の牧場に寄付されることになったため、牧場と契約を結んでいない京極法律事務所には成功報酬は1円も入らないことに気づいて愕然とする……って、翔子、元は腕利きの弁護士だったのに、そんなことにも気づかなかったの?

二転三転するストーリーだったが、最後はオーソドックスな人情話でめでたしめでたし……なんだけど、主人公の翔子がまったく活躍しないのが謎。彼女が峰島の遺言書を見つけるくだりもまったく偶然だった。直感で玲奈の嘘を見抜いていたことになるが、それも弁護の役には立っていない。『ドクターX~外科医・大門未知子~』と重ならないようにするためか、チーム感が強調されているが、これで視聴者は満足しているのだろうか? なお、今週はポチ(林遣都)も活躍しなかった。

今回のストーリーの元ネタは、今年巻き起こった“紀州のドン・ファン”こと野崎幸助氏の突然死をめぐる騒動だろう。遺産が50億円に上るとされる野崎氏には今年2月に入籍したばかりの55歳下の若妻がおり、彼女にメディアの好奇の目が向けられた。遺言書がなかったことも騒ぎを大きくした。後に遺言書は見つかり、野崎氏の遺産は全額故郷に寄付されることになった。

本日放送の第5話はおまちかねのポチ回! 今夜9時から。
(大山くまお

リーガルV~元弁護士・小鳥遊翔子~』
木曜21:00~21:54 テレビ朝日系
キャスト:米倉涼子向井理林遣都菜々緒、荒川良々、内藤理沙、宮本茉由、安達祐実、三浦翔平、勝村政信、小日向文世高橋英樹
脚本:橋本裕志
演出:田村直己(テレビ朝日)、松田秀知
音楽:菅野祐悟
プロデューサー:大江達樹(テレビ朝日)、峰島あゆみテレビ朝日)、霜田一寿(ザ・ワークス)、池田禎子(ザ・ワークス)、大垣一穂(ザ・ワークス)
制作著作:テレビ朝日

イラスト/Morimori no moRi