『黄昏流星群〜人生折り返し、恋をした〜』フジテレビ系・木曜22:00〜)第5話。

瀧沢完治(佐々木蔵之介)は不倫相手・目黒栞(黒木瞳)と「いよいよヤルぞー!」とばかりにホテルにチェックイン。

ところがホテルのエレベーターで、娘・美咲(石川恋)が中年男(高田純次)とチューチューしているところに鉢合わせてしまう。

娘の不倫を知ってしまった直後で、さすがに愚息もションボリ状態になってしまったのか、完治は栞と結ばれることもできなかった。

中山美穂と藤井流星が遂にキス!
父と娘、お互いの不倫がバレるという死ぬほど気まずい状況で、完治の家族+美咲の婚約者・日野春輝(藤井流星)で泊まりがけの温泉旅行に行くことに。

妻の真璃子(中山美穂)は真璃子で、春輝に心ときめかせちゃてるし……地獄の温泉旅行だ。

完治は、自分のことはひとまず棚に上げて、美咲に不倫のことについて問いただそうとするが、「自分もしているくせに!」と反論され、説得力ゼロ。

美咲は「恋愛と結婚は別!」と考えているようだ。

「恋愛して結婚しても、なし崩しに愛がしぼんじゃうこともあるでしょ。だったら最初から条件のいい、間違いのなさそうな人を選んで何が悪いの?」

なかなか闇が深い娘!

そんなことをしている間に、真璃子と春輝がグッと距離を縮めていた。

恋愛に対して、少々タガの外れた登場人物が多い本作だが、その中でも一番得体が知れないのは、やはり春輝だ。

「美咲ちゃん、他に好きな人がいるんじゃないかな」

などと、「美咲のことが好きだけど不倫の気配を察して落ち込んでいる」的な発言をしておきながら、ちょいちょい真璃子を誘惑するようなことをしてくる。

真璃子とふたりっきりになったタイミングでツーショット写真を撮ろうと提案したり(婚約者の母親と!?)、完治の不倫を確信して落ち込んでいる真璃子に突然にキスしたり。

慰めようとしてやったことだとしても、感情が高ぶって思わずしてしまったのだったとしても、完全におかしいタイミングだ。

この春輝の行動、不倫をしている美咲に対するヤケクソ的な行動なのか、「本当は真璃子の方が好き」ということなのか!?

それにしても、前回、真璃子の妄想内では春輝とキスをしていたけど、ホントにしちゃうとは。

夫への不満を抱え、娘の婚約者にドキドキしたりしつつも、実際には何もできない健気な妻というポジションで行くんじゃないかとも思っていたのだが……。

このタイミングでヤルのか!
旦那&娘は不倫中。妻は娘の婚約者とキスをしてしまうという、昼ドラばりにドロドロした展開になってきた本作だが、それでも純愛ドラマ感を醸し出しているのは、完治と栞の中で「一線は越えていないからオッケー」という意識があるからだろう。

「付き合ってる。でも男と女の関係じゃない。だからいいと思ってたんですよ、まだ不倫じゃないって」

デートを重ね、キスもしてるけど、一線は越えてない! だから不倫じゃない!

このフレーズから、今井絵理子議員の例の事件を思い出さずにはいられなかったが……。

そんなふたりが一線を越えてしまうきっかけとなったのが、栞の母親の死。

「母親の介護があるせいで恋愛も結婚もできなかった」と言っていたように、母親の存在が重荷となっていたことは確かだろうが、それと同時に心の支えにもなっていたはずだ。

完治とデートの約束をしていたのに、温泉旅行のせいでドタキャンされてしまい、

「好きな人がいるの。でもその人には家族がいて、今頃その人は家族と一緒なんだなって思ったら……」

「アナタには私がいるじゃない」

「そうよね、私にはお母さんがいるわよね!」

母親の介護で疲弊した心のスキマを埋めるように完治との不倫にのめり込んでいったものの、不倫は不倫で心のスキマを作ってしまい、さらに母親が死んだことでポッカリと巨大な穴だけが残ってしまった。

一方、完治の方も、栞のことを大切に思っていながらも、家族がいるため、なかなか支えになってあげられない自分にいらだちを感じているようだ。

「不倫……倫理にもとる。妻以外の人を好きになって、その人が大事になったらそれは倫理にもとるっていうことですか」

なかなか自分勝手な理屈をこねる完治だが、不倫している人のリアルな気持ちってこんな感じなのだろうか。

「支えになってあげたい!」ということで栞の家へ押しかけた完治だったが、結局やってることは、抱きしめてからのキス、倒れ込んで……ホワイトアウト。

「このタイミングでヤルのかーい!」という突っ込みと、古典的な演出に笑ってしまった。

誰の恋愛も応援しづらい!
今回の完治と栞の一線越え、吊り橋効果的なヤケクソ感が漂っている。

栞は母親が死んだ直後という混乱状態だし、完治の方も、栞から「電話に真璃子が出てしまった」ということを明かされ「妻バレしてる可能性大」と追い詰められた状況。

これまで「一線も越えてないし、妻にもバレてないだろうし〜」ということで、安全地帯でドキドキ逢瀬を楽しんでいた完治だが、「妻バレ」して追い込まれた結果、ヤケクソになって前に踏み出しちゃったのだろうか?

登場人物みんなからヤケクソ感が漂い、誰の恋愛も応援しづらいし、誰もかわいそうとは思えないという煮詰まった状況。

とりあえず、唐突に登場して異常なインパクトを残したものの、その後出てこなくなっちゃった須藤武史(岡田浩暉)が気になっています。再登場してこの状況を引っかき回してもらいたい。
(イラストと文/北村ヂン

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『黄昏流星群〜人生折り返し、恋をした〜』(フジテレビ)
原作:弘兼憲史『黄昏流星群』(小学館刊)
脚本:浅野妙子
演出:平野眞、林徹、森脇智延
主題歌:平井堅half on me」(アリオラジャパン
音楽:得田真裕
チーフプロデューサー:高田雄貴 (フジテレビ)
製作著作:フジテレビ
イラストと文/北村ヂン