ボランチとしてベルギーで研鑽を積む遠藤 森保体制で攻守に躍動し、不動の存在に前進

 森保一監督率いる日本代表は、16日に新体制4試合目となる国際親善試合ベネズエラ戦(大分スポーツ公園総合競技場/19時30分)に挑む。来年1月のアジアカップに向けて11月の2連戦は最後のサバイバルとなるが、1トップのFW大迫勇也ブレーメン)や2列目の若手トリオ中島翔哉南野拓実堂安律)ら軸となるメンバーは少しずつ輪郭が見え始めている。そのなかで、模索中のポジションがボランチだろう。前線を生かす意味でも攻守に重要な役割を担うなか、ベストな組み合わせはどのような顔ぶれなのか。

 ロシアワールドカップ(W杯)を最後に、長年中盤を支えてきたMF長谷部誠フランクフルト)が代表を引退。A代表通算45試合に出場しているMF山口蛍セレッソ大阪)も9月シリーズを負傷で辞退した影響もあって、森保新体制では一度もプレーしていない。主軸の定着が待ち望まれるポジションの一つと言っていい。

 初陣からの3試合でボランチとして起用されたのは4人だ。

9月/コスタリカ戦(3-0):青山(三竿)、遠藤
10月/パナマ戦(3-0):青山(柴崎)、三竿
10月/ウルグアイ戦(3-0):柴崎(青山)、遠藤

 ベネズエラ戦前日の会見で指揮官は、「ウルグアイ戦のメンバーがベース」と明言。その言葉から推測すれば、ボランチはMF柴崎岳(ヘタフェ)とMF遠藤航シント=トロイデン)の二人が濃厚だろう。

 遠藤は森保体制で一気に頭角を現した一人だ。所属クラブでは「本来やりたいポジション」であるボランチで出場を重ね、代表でも攻守に躍動。持ち味であるボール奪取に加え、コスタリカ戦ではペナルティーエリア内まで攻め上がってMF南野拓実ザルツブルク)のゴールをアシストし、ウルグアイ戦でも2列目につけるくさびやボール配球が光る。実際、データ分析会社「Instat」のデータでも、パス成功数はコスタリカ戦が47本でチーム2位タイ(成功率80%)、ウルグアイ戦が63本でチームトップ(成功率85%)と中盤で起点になっていることが見て取れる。

 森保監督がチームコンセプトに掲げる「攻守のバランス」を体現できる選手として、若き日の長谷部を彷彿とさせる縦への推進力を生むプレーで、今や不動の存在になりつつある。本人も「ベルギーボランチをやっているので、こっちに来てスムーズに入ることができる。若い世代を引っ張っていきたい」と意気込む。


柴崎は試合勘が不安も「チームのバランスを崩さないように流れを見ながらやりたい」

 一方で、ロシアW杯主力組の一人である柴崎は、現体制では輝きを放てずにいる。所属クラブのヘタフェでレギュラー落ちを味わい、今季はリーグ戦2試合、カップ戦1試合の計139分間しかプレーしていない。10月シリーズの出来を見ても試合勘の不安は付きまとうが、本人は「変な焦りとか、気持ち的にどういうというのはあまりない」と意に介さない。

 今回はMF青山敏弘サンフレッチェ広島)が負傷で不参加の影響もあり、いわゆるゲームメーカーは柴崎しかいない。推進力溢れる2列目のトリオを生かしたうえでのゲームプランについては、次のように語っている。

「彼ら(2列目)が前を向いて仕掛けられるように。かと言って、チーム全体のバランスを崩すわけにはいかないので、ボランチ二人が試合の流れを見ながらやりたい。W杯とやる選手が違えば、それなりにやることも変わってくる。ただ基本的な部分は変わらないので、質と量と精度を上げていきたい」

 森保監督の戦術を熟知する青山のリーダーシップやロングフィードは大きな武器だが、その反面、すでに32歳とベテランの域に差し掛かっている。2022年のカタールW杯までを見据えれば、26歳の柴崎や9月シリーズを負傷で辞退した25歳のMF大島僚太(川崎フロンターレ)が競争を繰り広げて軸にならなければならないだろう。

 ボール奪取力が光るMF三竿健斗(鹿島アントラーズ)は、初スタメン&フル出場を果たしたパナマ戦で、「受けて捌く」役もソツなくこなした。しかし、「ワンタッチのフリックで縦パスを入れたり、出した後にもっとFWの近くまで顔を出してゴール前でプレーする」ことを今後の課題に挙げているように、前への意識や経験は遠藤には及ばない。追加招集の守田英正(川崎)を含めて、現時点では遠藤のバックアッパーという位置づけか。

 11月シリーズでボランチの序列は動くのか、来年1月のアジアカップに向けても大きなポイントになりそうだ。


Football ZONE web編集部・小田智史 / Tomofumi Oda

(左から)三竿健斗、柴崎岳、遠藤航、青山敏弘【写真:Getty Images & 田口有史】