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 そのロシア人男性は狩りに誘われた日、オオカミの子どもに出会った。助けを求めるかのように近づいてきたというオオカミの子どもを家に連れて帰り、育てることにした。

 そのオオカミの子はグレイ(ロシア語でСерый、Seryi)と名付けられた。男性はグレイを深く愛していた。

 これまで住んでいたロシア南東部のアストラハンにある家を出なくてはならなくなったときも、大人になった彼を連れて、大都会ヴォルゴグラードのアパートに一緒に引っ越した。

 イヴァン・Lとその娘は、グレイと名付けたオオカミと同じ屋根の下に住んで数年になる。もちろん何も問題がなかったわけではない。

 オオカミを恐れる住人や近所の人から苦情を言われることもしばしばあったが、イヴァンたちはなんとかうまいこと対処してきた。

 イヴァンにとって、愛するグレイのいない生活など想像もできないからだ。

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Couple Live With Pet Wolf

オオカミの子との偶然の出会い

 現在、ヴォルゴグラードの9階建てアパートの1階にあるワンルームの部屋で暮らすイヴァンと娘、そして大人になったオオカミのグレイ。

 イヴァンが、グレイと出会ったのは、数年前、ハンターグループに、当時住んでいたアストラハンでの狩りに招待されて同行したときのことだった。

 ハンターたちは猟犬の後追って森の奥深くへ中へどんどん入って行ってしまい、イヴァンはひとり取り残されてしまった。

 そのとき、イヴァンの前に2匹のかわいらしいオオカミの子どもが茂みの中から現れた。イヴァンはどうしていいかわからずに、ただその場に立ちすくんでしまったという。

 すると、1匹が彼のほうへ近づいてきた。イヴァンがしゃがんで迎えると、その子は彼の手を舐め始めた。イヴァンは動物とふれあうのに慣れていたので、2匹が助けを求めているのがわかったという。


1匹を友人に譲り、グレイだけを飼うことに


 イヴァンは、2匹を自宅へ連れて帰ったが、自分のアパートで両方とも飼うわけにはいかなかった。

 そこで、地方に住む友人に1匹を譲り、彼の手を舐めた子を自分で引き取った。

 残念なことに、もらわれていったグレイのきょうだいは、人間に飼われる生活に適応することができなかったようだ。

 ニワトリを盗んだり、家畜を脅かしたりして、堪忍袋の緒が切れた飼い主がついに手放したという。グレイのきょうだいがその後どうなったのか?イヴァンは友人から何も教えてもらえなかったという。


人間との生活に適応していったグレイ


 一方、イヴァンに引き取られたグレイは、人間との生活にとくに支障をきたすことはなかったようだ。

 イヴァンとグレイは同じベッドで寝て、町中に散歩に行き、すべては順調だった。

 イヴァンは2匹の犬を飼っているが、グレイは彼らとも仲良くやることができた。

 グレイが犬たちと対面した日のことをイヴァンは鮮明に覚えている。グレイは犬たちを見つけると、イヴァンのほうを見てすべてを理解したという。

 グレイは賢く従順だ。イヴァン忠誠を尽くしている。犬とうまくやっていくことが幸せにつながると思ったようだ。以来ずっと3匹は仲良くやっている。


 人間に関しては、グレイはイヴァン以外の男性がまわりにいるのは嫌いなようだが、女性や子供にはとても穏やかに接するらしい。

狭いアパートへの引っ越し

 だがその後、イヴァンはヴォルゴグラードに仕事を得て、狭いワンルームのアパートに引っ越さなければならなくなった。

 イヴァンと娘だけでも狭い部屋なのに、ましてや大人のオオカミが一緒なのだ。更に犬が2匹だ。だがイヴァンに、グレイを置いていくという選択肢はなかった。

 グレイが暮らしやすくするために、イヴァンは1階のバルコニーに鉄格子で囲いを作った。ここなら、新鮮な空気が吸えるし、外の様子を見ることもできる。

 それでも、理想的な状態ではなかった。本物のオオカミが町を歩いていることに、難色を示す隣人もいたが、少なくともイヴァンたちは一緒にいられた。

 イヴァンはグレイを散歩させるが、ほとんどの犬はそばに近づくと警戒した。だがグレイはおとなしく、犬を威嚇するようなことはしなかった。


何度も警察に通報されるも断固として手放すことを拒否


 オオカミに悪感情をもつ隣人が役所に苦情を持ち込み、警察がグレイのことで何度も何度もイヴァンの元へやってきた。だが、イヴァンはグレイを手放すのは断固として拒否している。

 イヴァンは、動物行動学の専門家やドッグハンドラーにグレイのことを研究してもらうよう頼み、彼が人間社会に驚くほどうまく適応していることを訴えたが、これまでのところ、グレイを研究しようとする者は誰もいない。

 頼みの綱は、最近、教育大学を辞めたイヴァンの娘が、獣医大学で犬の研究に取り組んでいることだ。


野生のオオカミを飼うことは危険


 動物行動学の専門家は、たとえ子どものころから育てているとしても、やはりその行動は予測がつかないため、オオカミをペットとして飼うのはやめるように言っている。

 犬と違って、オオカミは1万年も野生として生きてきたので、幼い頃から人間に飼われていても、その捕食性や縄張り意識の本能のほうが勝る可能性があるというのだ。

 だが動物にも個体差というものがある。イヴァンの言葉を信じるなら、グレイは例外中の例外なのかもしれない。


Волк - друг человека

 グレイとイヴァンさん一家の物語はインスタグラムのアカウント「real_gray_wolf」で随時公開中だ。
written by konohazuku / edited by parumo

全文をカラパイアで読む:
http://karapaia.com/archives/52267616.html
 

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