以前、勤務した牧場で体験した出来事を描いた漫画「牛と狸」がSNS上で話題となっています。牧場内で子牛に囲まれたタヌキを見た主人公。直感的に危険だと感じ、タヌキを必死で追い払いますが…という内容で、「疥癬(かいせん)はやばい」「狸の恐ろしさが分かる」「番犬を飼ってみては?」「命に向き合うことの難しさを実感した」などの声が上がっています。漫画の作者に聞きました。

散歩中にタヌキを見たことがきっかけ

 この漫画を描いたのは、牛川いぬお(ペンネーム)さんです。酪農業に従事しながら、趣味で絵や漫画を描いています。今年8月からツイッターで作品を発表しています。

Q.漫画を描き始めたきっかけは。

牛川さん「3年前、地元で開催された漫画のコンテストがきっかけです。畜産に関する4コマ漫画を投稿したところ、賞を頂きました。その後、漫画を描く楽しさを実感するようになり、漫画を描いている間は楽しくて仕方がありません」

Q.今回の漫画を描いたきっかけは。

牛川さん「最近、外を散歩している時にタヌキを見かけ、『あの時の出来事を漫画にしてみよう』『同じ体験をした農家さんがいるかも』という軽い気持ちで描きました」

Q.タヌキが侵入したのは、何年前ですか。

牛川さん「5年前です」

Q.4枚目に登場する肥育農家さんが印象的でした。

牛川さん「漫画は3枚目で終える予定でした。4枚目の体験談も描いたのは、確かに、牛を雑に扱う農家もいますが、そんな人に怒りを感じて叱ってくれる農家もいることをもっと知ってほしいという気持ちがあったからです」

Q.野良猫や野ウサギなどの小動物も感染の原因になりますか。

牛川さん「専門家ではないので断言できませんが、タヌキに限らず野生の小動物も感染の原因になると思い、気をつけています。家畜を病気にするダニや菌の運び屋となっている可能性があるからです」

Q.感染を防ぐためにどのような対策を行っていますか。

牛川さん「農家は『家畜伝染病予防法』を守るように家畜保健衛生所から厳しく言われています。職場でも感染症の発生を予防するために、野生動物の侵入を防ぎ、石灰などで消毒も行い、牛に異変があればすぐに獣医に報告しています。防疫ができているかどうか、衛生所による確認が毎年必ず行われています。

また、人間が感染症を運んでくる場合もあるので、飼育場所では関係者以外の立ち入りを禁止しています。漫画を通じ、農家さんたちがいつ、どこで、何を介して菌やウイルスが入ってくるか分からない不安と闘っていることを知ってもらえたらと思っています」

Q.漫画について、どのような意見が寄せられていますか。

牛川さん「さまざまなコメントを頂きました。タヌキを避ける方法を教えてくださる方がたくさんいらっしゃいました。農家さんからの体験談も頂くことができ、大変勉強になりました。

また『牛の管理を怠るのは良くない』『経営のためにコストを削るのは当然なのでは?』などの意見もありました。利益を上げるためにコストを削るのは、経営としては当然だと思いますが、削ってはいけない部分を削り、浮いたお金を娯楽につぎ込む社長は従業員には不満でしかありませんでした」

Q.創作活動で今後、取り組んでいきたいことは。

牛川さん「牛と旅をするようなファンタジー漫画や牧場を舞台にした動物漫画を描きたいです。その他、日本で行われている闘牛を題材にした漫画など、牛の魅力を込めた漫画を描きたいです。すでに構想済みなので、仕事の合間に少しずつ形にしていけたらと考えています」

オトナンサー編集部

漫画「牛と狸」のカット=牛川いぬお(@TDQFRYtruJY7ZxR)さん提供